Microsoftは、Windows 11向け次世代UIフレームワーク「WinUI 3」で開発されたアプリが、公式に廃止宣言済みの旧世代フレームワーク「UWP(Universal Windows Platform)」よりもウィンドウリサイズ時の品質が劣ることを認め、2026年夏にWindows App SDKを通じて修正を配布すると発表した。
WinUI 3の「黒いちらつき」問題とは
Windows 11には現在、複数世代のUIフレームワークが混在している。数十年前のWin32アプリ、Microsoftが公式廃止を宣言しているUWPアプリ、そして「Windows開発の未来」として投入されたWinUI 3アプリだ。
開発者たちは長年、WinUI 3アプリでウィンドウをドラッグリサイズした際に、ウィンドウ端に黒い領域がちらつく「black tearing」現象を経験してきた。一方、廃止済みのはずのUWPアプリ——たとえば標準の「時計」アプリや「Microsoft Store」——ではこの問題が発生せず、なめらかにリサイズできる。
この矛盾した状況についてX(旧Twitter)上で開発者が直接質問したところ、MicrosoftのデザインパートナーディレクターであるMarch Rogers氏が以下のように公式回答した。
「ちらつき問題を解消するためのプラットフォーム改善に取り組んでいます。まずはインボックスアプリ(Windows標準搭載アプリ)で動作を確認してから、Windows App SDKへ展開します。夏からロールアウト開始予定です。」
なぜ「廃止済み」フレームワークの方が滑らかなのか
UWPはMicrosoftが2021年ごろに「これ以上の投資はしない」と事実上の廃止を宣言したフレームワークだ。その後継として開発されたWinUI 3は、Win32との互換性を持ちつつモダンなUIを実現するという野心的な設計で登場した。
しかしリサイズの滑らかさという点では、UWPがWinUI 3を上回っていた。これはウィンドウコンポジション(画面描画の合成処理)の実装方法の違いによるものと見られており、WinUI 3側に根本的なプラットフォーム改修が必要な問題だった。
Microsoftはまず「フォト」や「メモ帳」などのWindows標準搭載WinUI 3アプリで修正を検証し、安定性を確認した上でWindows App SDK経由でサードパーティ開発者にも提供する段取りを踏む。
ネイティブアプリ回帰の大きな流れの中で
この修正は、単なるバグフィックスにとどまらない。Microsoftは現在、長年にわたってエンドユーザーを悩ませてきたElectronベースの「Web Wrapper」アプリ群をネイティブアプリに置き換える動きを本格化させている。
Microsoftのアーキテクト、Rudy Huyn氏は「100% WinUI 3アプリ」を構築するチームを立ち上げており、著名エンジニアのDavid Fowler氏は「ネイティブアプリが帰ってきた!」とX上で興奮を表明している。WinUI 3のリサイズ問題修正は、このネイティブ回帰戦略を技術的に支える基盤整備の一環と位置づけられる。
実務への影響——Windows開発者・IT管理者への示唆
社内Windowsアプリ開発者へ: WinUI 3を使ったデスクトップアプリを開発・評価中の場合、リサイズの視覚品質が今夏のWindows App SDK更新で改善される見通しだ。NuGetパッケージ経由でWindows App SDKを更新するだけで恩恵を受けられる可能性が高い。UWPの見た目が気になっていてWinUI 3移行をためらっていたチームには、背中を押すアップデートになりうる。
IT管理者へ: この改修はWindows Updateではなく、主にWindows App SDK経由でアプリ側に届く点に注意。Windowsのバージョンを問わず、対応アプリがアプリストアやMSIX経由でアップデートされることで反映される。特別なOS更新への対応は現時点では不要だ。
評価・検証担当者へ: 現行のWinUI 3アプリのリサイズ品質に問題があったとしても、それが「WinUI 3の限界」ではなくプラットフォーム側の既知バグであることが確認された。夏以降の再評価を計画に織り込んでおくとよい。
筆者の見解
正直に言えば、次世代フレームワークが旧世代より見た目の品質で劣るというのは、開発者にとって頭を抱える状況だ。「なぜ廃止したはずのUWPの方がリサイズが滑らかなのか」という疑問は、もっと早く公式の場で整理されるべきだったと思う。もったいない時間が費やされた。
ただ、今回の対応そのものは真っ当だ。まず自社の標準アプリで検証し、品質を確認してからSDKに展開するというアプローチは「道のド真ん中を歩く」手順であり、急いで壊すよりずっと良い。
Microsoftがネイティブアプリへの回帰を本格的に推進しているのは事実であり、その方向性は正しい。ElectronやWebViewベースのアプリがWindows体験を重くしてきた数年間の反省に基づいた動きだ。WinUI 3がUWPの滑らかさを追い越す日が夏以降に近づいてきた——そう前向きに受け取っている。
Windowsを細かく追い続けることの意義は以前より薄れているが、こういう地に足のついた品質改善の積み重ねが「使い続ける理由」を作るのは確かだ。
出典: この記事は Microsoft admits modern Windows 11 apps actually resize worse than the old ones, fix coming this summer の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。