Microsoftは2026年5月28日、Microsoft Marketplaceの最新アップデートとして、AI推論サービス「Fireworks AI」のMicrosoft Foundryパブリックプレビュー開始と、DeepSeek V4 Flash・DeepSeek V4 ProのFoundry提供を発表した。エンタープライズ向けAIモデルの選択肢が一気に拡充され、Azure基盤上で多様なオープンモデルを高速に運用できる環境が整いつつある。
Fireworks AI、Microsoft Foundryでパブリックプレビュー開始
Fireworks AIは、オープンソースAIモデルの高速推論に特化したプラットフォームを提供するスタートアップ企業だ。同社独自の最適化技術により、Llama系やMistral系のオープンモデルを標準的な推論エンジンと比較して大幅な低レイテンシで運用できる点が強みとなっている。
このサービスがMicrosoft Foundryのパブリックプレビューとして利用可能になったことで、Azure利用企業はFireworks AIの最適化された推論エンジンをエンタープライズグレードのセキュリティ・コンプライアンス環境のまま活用できるようになる。チャットボット等のリアルタイムインタラクションが求められるユースケースでは、推論速度の差がそのままユーザー体験の差になるため、このオプションの追加は実務的な意味が大きい。
DeepSeek V4 Flash・ProがFoundryに追加
今回のアップデートで合わせて注目すべきは、DeepSeek V4 FlashとDeepSeek V4 ProのMicrosoft Foundryへの追加だ。DeepSeekはオープンウェイトモデルを公開している企業で、V4世代では特に数学・論理推論・コーディング支援タスクでの精度向上が報告されている。
Microsoft Foundry経由での提供により、自社データをDeepSeekの外部クラウドに直接送信することに抵抗感がある組織でも、Azure基盤上での管理・運用という形であれば導入を検討しやすくなる。組織のリスクポリシーに応じて「使う・使わない」を判断できる選択肢が揃うことが、プラットフォームとしての役割だ。
実務への影響
今回の追加により、Azure AI Foundry上で選択可能なモデルのラインナップが大きく広がった。GPT-4o・Claude・Geminiといったクローズドモデルに加え、各種オープンモデルを同一プラットフォーム上で比較・評価・本番運用できる環境が整いつつある。
実務での活用として、以下のシナリオが考えられる:
- コスト最適化: 高精度が必要なタスクにはプレミアムモデル、バッチ処理や社内ドキュメント分類には高速・低コストなオープンモデルを使い分ける
- ベンダーロックイン分散: 特定プロバイダーへの依存を分散させることで、価格交渉力を維持しつつリスクを低減する
- レイテンシ重視のユースケース: インタラクティブなチャットアプリやリアルタイム補助機能ではFireworks AIの高速推論が有効な選択肢になる
IT管理者の観点では、Microsoft Foundry経由のモデル利用はMicrosoft Entra IDによるアクセス制御・Azure Policyによるガバナンス・既存コンプライアンスフレームワークとの統合がそのまま使える。「AIを導入したいが、外部クラウドへのデータ送信のリスク管理をどうするか」という日本企業特有の懸念も、Foundryプラットフォームであれば対処しやすい。
筆者の見解
Microsoft Foundryにオープンモデルの選択肢が増えることは、正しい方向性だと評価している。
筆者はかねてから「Microsoft基盤の強みを最大限に生かしながら、推論に使うモデルは最善のものを選ぶ自由を使えばいい」というスタンスをとっている。Microsoft Entra IDによる統合認証・コンプライアンス管理・既存インフラとの接続性——これらはMicrosoft基盤が本当に優れている領域だ。そのプラットフォームの上で動かすAIモデルについては、ユースケースに応じた最善の選択ができる状態を作ることが、エンタープライズにとって合理的な戦略になる。
Fireworks AIの高速推論がFoundryに統合されることも歓迎したい。AIの実用化において「レイテンシ」は見落とされがちだが、ユーザーが実際に触れる体験に直結する要素だ。コスト・精度・速度の三軸で選択肢を持てることが、現場でのAI展開を加速させる。
Foundryが「最良のAIを安全に動かすプラットフォーム」として機能し続けることで、Microsoftの競争力は一層高まる。そのロードマップを着実に実行し続けてほしい。
出典: この記事は New in Microsoft Marketplace: May 28, 2026 の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。