米CNNは2026年5月29日(現地時間)、AI検索エンジン「Perplexity」の運営会社に対し、「大規模な著作権侵害」を理由とした訴訟を提起した。Engadgetがこの訴訟の詳細を報じている。

CNNが主張する侵害の内容

Engadgetの報道によると、CNNの訴状はPerplexityがCNNのウェブサイトおよび第三者プラットフォームから17,000件以上のコンテンツを無断でクロール・スクレイピングし、ユーザーへの検索回答に「逐語的なコピー」として再現していると主張している。問題はそれだけではなく、有料購読者向けのペイウォール記事まで無断で複製・配信していると指摘している。

さらに、PerplexityのAIが「ハルシネーション(幻覚)」で生成した誤情報をCNNの記事として誤帰属させているケースがあり、CNNの商標権を侵害しているとも訴えている。

CNNのスポークスパーソンはEngadgetの取材に対し、「数十億ドル規模の評価を受けるPerplexityが、オリジナルコンテンツを創出する組織から盗んでよいはずがない。人々が世界を理解するために依拠する高品質なジャーナリズムは、取材するのに費用と危険が伴う。商業的な事業者は利用するために対価を支払うべきだ」と述べている。

訴訟ラッシュの背景と交渉決裂の経緯

Perplexityに対する訴訟はCNNが初めてではない。Engadgetの報道によれば、ニューヨーク・タイムズ、シカゴ・トリビューン、Reddit、Merriam-Webster、ブリタニカ百科事典、そして日経新聞(Nikkei)もすでに提訴済みだ。

Perplexityの最高コミュニケーション責任者Jesse Dwyer氏は「事実に著作権は存在しない」と反論しているが、訴訟で問われているのは事実そのものではなく、取材・編集という付加価値が乗った表現物の無断複製だ。その点において、「事実か否か」の議論は争点のすり替えとも言える。

特筆すべきは、CNNとPerplexityが昨年、有料購読コンテンツをPerplexityの有料会員に提供するライセンス契約を実際に交渉していた点だ。この交渉は最終的に決裂したが、その後もPerplexityはCNNのコンテンツと名称を製品に使い続け、CNNの法務チームからの警告にも無応答だったと訴状は述べている。

日本市場での注目点

Perplexityは日本語対応しており、国内でも一定のユーザー層を獲得している。日経新聞がすでに提訴済みであることを踏まえると、日本の報道機関にとっても他人事ではない。

日本の著作権法でも、AIによる商業目的のコンテンツ無断利用については2024年の文化庁ガイドラインで「著作権が及ぶ」との解釈が示されており、本訴訟の行方は国内の出版・メディア企業にとっても重要な先例となる可能性がある。現時点でPerplexityの日本語版サービスは継続しているが、訴訟の結果次第では利用規約やコンテンツポリシーに影響が出ることも考えられる。

筆者の見解

AI検索が「答えをすぐ出してくれる」便利なツールとして普及するほど、その答えを生み出すオリジナルコンテンツへの対価が支払われない構造的矛盾が顕在化する。CNNやニューヨーク・タイムズが高品質なジャーナリズムを維持できるのは、そこに持続的な収益モデルがあるからだ。

AI企業がコンテンツを無断利用し続ければ、ジャーナリズムの質の低下を招き、最終的にはAI自身が参照する情報の質も劣化する。双方にとってのサステナブルな道は、適切なライセンス契約を通じた共存モデルしかない。CNNとの交渉が一度テーブルに乗りかけながら決裂し、その後も無断利用を続けたという経緯を見るに、Perplexityは訴訟リスクを織り込んだ上での戦略として進めてきたと考えるのが自然だ。

今回の訴訟ラッシュは、AI検索とメディアの関係を「法整備が追いつくまでのグレーゾーン」から「明確なルール形成」の段階へと押し上げる転換点になるかもしれない。業界全体が注目すべき案件だ。


出典: この記事は CNN is the latest media company to sue Perplexity の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。