米テクノロジーメディアのTom’s Guideが2026年5月27日に報じたところによると、Samsung WalletがアイデンティティプラットフォームCLEARとの提携を通じてデジタルパスポートのサポートを追加した。これにより、Apple WalletおよびGoogle Walletが先行して持っていたこの機能がSamsungユーザーにも開放され、三大スマートフォンプラットフォームがデジタルパスポートで出揃った。

なぜこの機能が注目されるのか

デジタルIDは「スマートフォンが財布になる」という潮流の次のフェーズ——「スマートフォンがパスポートになる」——を象徴する機能だ。世界最大のAndroidスマートフォンメーカーであるSamsungの標準ウォレットアプリがこの機能を持たないことは、Galaxyユーザーにとって長らく不満の種だった。Apple Walletは数ヶ月前に、Google Walletもすでに対応済みで、Samsung Walletだけが「デジタルID後進国」の状態だった。

Samsung Walletのデジタルパスポート機能の概要

Tom’s Guideの報道によれば、「Samsung ID with CLEAR」の主な仕様は以下のとおりだ:

  • 対応場所: 米国内250以上のTSA(交通安全庁)検問所 + 一部スポーツアリーナ(LA・BMOスタジアムが名指し)
  • 認証方式: 空港のID読み取り機でデジタルIDのQRコードをスキャン
  • セキュリティ: Samsung Knoxによる保護とデバイス内暗号化。外部サーバーへのデータ送信なし、パスコードまたは指紋でのみアクセス可能
  • 対象者: 米国パスポート所持者のみ(外国パスポート非対応)
  • 用途制限: 国内線のみ。国際線は引き続き紙のパスポートが必須

デジタル運転免許証はSamsung Walletですでに対応済みだったため、今回の追加でIDカバレッジがさらに広がった形だ。

海外レビューのポイント

Tom’s GuideのTom Pritchard氏は今回の対応を「Apple・Googleから数ヶ月遅れだが、ようやく追いついた歓迎すべき変化」と評価している。同氏は「完全に紙のパスポートを置き換えられるまでにはまだ長い道のりがあるが、空港のセキュリティが少しでも楽になるなら大歓迎」と述べており、現時点では補完的なツールという位置づけを明確にしている。

良い点(Pritchard氏の評価より):

  • 既存のTSA読み取り機をそのまま使えるQRコード方式で、インフラ改修不要
  • Samsung Knoxによるデバイス内完結型ストレージは、プライバシー保護の観点で評価できる
  • 250以上のTSA検問と一部スポーツ施設という実用的な対応範囲

気になる点:

  • 米国パスポート限定という対象者の狭さ
  • 国内線のみという利用シーン制約
  • 紙のパスポートは依然として携帯必須(TSAガイドラインで追加確認時に備えて要求)

日本市場での注目点

率直に言えば、この機能の直接的な恩恵を受けられるのは現時点では米国在住者か、米国国内線を頻繁に使うビジネス渡航者に限られる。日本国内での展開については発表がなく、日本のパスポートも対象外だ。

ただし、日本での文脈でも見ておくべき点がある:

  • マイナンバーカードとの連動が近い: スマートフォン用電子証明書搭載はすでに運用が始まっており、デジタルID基盤の整備という方向性は日本でも現実のものになりつつある
  • プライバシー設計の参考モデル: 外部サーバー不送信・デバイス内完結というSamsung Knoxのアーキテクチャは、個人情報保護が厳しい日本市場での将来展開でも重要な設計思想になる
  • 先行入手の選択肢: Samsung Galaxy S25シリーズは日本のAmazonでも入手可能で、将来的な日本対応時に備えてSamsung Walletの利用習慣をつけておくことは無駄にならない

筆者の見解

デジタルパスポートがApple・Google・Samsungの三大プラットフォームで出揃ったことは、スマートフォンをアイデンティティの媒体にするという動きの一つの節目だ。

特に評価したいのはセキュリティの設計思想だ。Samsung Knoxによるデバイス内完結型のストレージ方式は「便利さとプライバシーはトレードオフ」という固定観念を覆す実装であり、QRコードスキャンという認証インターフェースも既存インフラとの互換性を保ちながら新機能を乗せる現実的なアプローチだ。

もっとも、「デジタルIDが紙を完全に代替する」という未来はまだ遠い。TSAガイドラインが紙の携帯を依然として求めている点が象徴するように、インフラ側の対応が追いついていない場所がほとんどだ。現時点では「便利な補助ツール」として活用しつつ、デジタルID基盤が成熟するのを待つのが現実的な判断だろう。

日本国内での展開については不明な部分が多いが、マイナンバーカードのデジタル化が進む日本においても、この「物理ID不要化」の波は遠からず来る。海外の先行事例として、今のうちから注視しておきたい動向だ。

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出典: この記事は Samsung Wallet just matched Apple Wallet and Google Wallet on digital passports の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。