米テクノロジーメディア The Verge のシニアレポーター、アンドリュー・リスゼフスキー(Andrew Liszewski)氏が2026年5月27日に報じたところによると、Lux Opticsがスマートフォン向け高機能カメラアプリ「Halide Mark III」をiPhoneおよびiPad向けに正式リリースした。2024年12月に予告されていたメジャーアップデートで、フィルムシミュレーション機能と本格的な写真編集ツールが大幅に強化されている。

なぜHalide Mark IIIが注目されるのか

Halideは、iPhoneのネイティブカメラアプリでは制御しきれないシャッタースピード・ISO・RAW撮影といったマニュアル操作を提供してきたプロ志向のiOSカメラアプリだ。Mark IIIで最も注目されるのは、ハリウッドでカラーグレーディングを手がける著名カラリストカレン・ケリー(Cullen Kelly)氏と共同開発した新しいフィルムシミュレーションエンジン「Looks」だ。

スマートフォン写真が高画質・高解像度化する中で、「クリアすぎる」デジタル的な質感を嫌い、フィルム写真のような温かみや粒状感を求めるユーザーは増え続けている。FujifilmのフィルムシミュレーションやVSCOが長年支持されてきたのはその証左であり、Halide Mark IIIはiPhoneカメラの世界に同様のアプローチを本格導入した形だ。

海外レビューのポイント

5種類のLooks——それぞれの用途

The Vergeの報道によると、新たに搭載されたLooksは以下の5種類:

名称 用途

Valencia ランドスケープ(風景)向け

Rembrandt ポートレート向け

Nova 都市・街撮り向け

Zephyr 汎用

Chroma Noir フィルムグレイン強調のモノクロ

リスゼフスキー氏の報告によれば、これらのLooksは撮影時にリアルタイムで適用できる点が特徴で、後処理ではなくファインダー越しに色調を確認しながら撮影できる。

Photo Lab——RAW現像にも初対応

The Vergeによると、新搭載の「Photo Lab」は直感的な操作性を重視したフォトエディターで、クイック編集(Looks適用・HDR切替・露出調整)から始まり、クロップ・ホワイトバランス・「Tone Fusion」(シャドウ/ハイライトの階調回復)といった本格的なコントロールまで段階的にアクセスできる構成になっている。

注目すべきは、Sony・Nikon・Canon・Fujifilm・Hasselblad・LeicaのRAWファイルをiPhone上で現像できる機能の搭載だ。ただしDPReviewの報道によると現時点ではベータ機能という位置づけで、完成度については今後のアップデートを待つ必要があるとされている。

インターフェースの刷新と旧UIへの切り替えオプション

Mark IIIではUIも全面的に再設計され、よく使う操作をすぐに呼び出せるレイアウトに変わった。一方で旧来のHalide Mark IIインターフェースへの切り替えオプションも残されており、変化への抵抗感があるユーザーへの配慮もされている。

日本市場での注目点

価格・入手方法

  • 買い切り:59.99ドル(約9,000〜9,500円相当)
  • サブスクリプション:19.99ドル/年(約3,000円/年)
  • Halide Mark IIの購入者は無料アップグレード対象
  • App Storeで1週間の無料トライアル期間あり
  • 対応環境:iOS 18以降 / iPadOS 18以降

iPhoneカメラアプリとしては高価格帯に入るが、1週間の無料試用が可能なため購入前に実際の使用感を確認できる点は評価できる。Halide Mark IIは日本でも熱心なユーザーコミュニティを持っており、既存ユーザーにとって無料アップグレードは朗報だ。他社RAWファイル現像のベータ機能は、ミラーレスカメラとiPhoneを組み合わせたワークフローを模索しているユーザーにとって今後の動向が気になるポイントだろう。

筆者の見解

Halide Mark IIIが示すのは、「iPhoneカメラの高性能化」と「人間の表現欲求」の間に生まれた市場の成熟だ。Appleが標準カメラアプリのComputational Photography(計算写真)を極限まで磨いてきた結果、逆説的に「アルゴリズムが処理しすぎない」「フィルム的な余韻を残す」撮影体験に価値を見出すユーザーが増えている。

ハリウッドのカラリストと共同開発したLooksというアプローチは、単なる「フィルター追加」ではなく、業界標準の色彩設計をモバイルに持ち込む試みとして技術的に面白い。59.99ドルという価格は「カメラアプリとしては高い」と感じるかもしれないが、専用RAW現像ソフトと比べると割安感もある。まずは1週間の無料体験で自分の撮影スタイルに合うか確認するのが賢明だろう。


出典: この記事は The new Halide camera app launches with film looks and an upgraded photo editor の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。