Microsoft は 2026年5月26日、Windows 11 バージョン 24H2 および 25H2 向けのオプションプレビュー累積更新プログラム KB5089573(OS ビルド 26200.8524 / 26100.8524)をリリースした。毎月末恒例の「Cプレビュー」にあたり、来月の月例パッチに先行して品質向上と新機能を試験提供するものだ。
今回の主な新機能
Bluetooth LE Audio を使った「Shared Audio」
もっとも目を引く新機能が Shared Audio だ。1台の Windows 11 PC から、Bluetooth LE Audio のブロードキャスト技術を使って2人が同時に音声を受け取れる。対応するイヤホン・ヘッドフォンを2台ペアリングしておけば、タスクバーの「クイック設定」→「Shared Audio」から開始できる。
移動中の映画鑑賞や、隣に座って一緒に音楽を聴くといったシナリオを想定している。Bluetooth LE Audio(Auracast™)はここ数年で普及が進んでおり、対応デバイスも徐々に増えている。
Task Manager に NPU 使用率列が追加
AI 処理の主役として注目される NPU(Neural Processing Unit)の使用状況が、Task Manager から直接確認できるようになった。具体的に追加されたのは以下の列だ。
- プロセス・ユーザー・詳細ページ: NPU・NPU エンジン列
- 詳細ページ: NPU 専用メモリ・NPU 共有メモリ列
- パフォーマンスページ: GPU の一部として動作するニューラルエンジンの表示
- プロセス・詳細ページ: AppContainer で実行中のアプリを示す「分離(Isolation)」列
いずれも列ヘッダーを右クリックして追加する形式だ。Copilot+ PC の普及にともない、「今どのアプリが NPU をどれだけ使っているか」が運用上の関心事になりつつある。このような可視化は現場の管理者にとって地味に助かる。
マルチアプリ カメラ共有
複数のアプリが同時にカメラストリームにアクセスできる Multi-App Camera 機能が追加された。Web 会議ツールとビデオキャプチャソフトを同時に使うといった場面での利便性向上を目的としている。また、カメラが正常動作しない際のトラブルシューティング向けに機能を簡略化した「Basic Camera モード」も用意された。エンタープライズ管理者はグループポリシー(コンピュータの構成 → 管理用テンプレート → Windows コンポーネント → Camera)でモードを制御可能だ。
拡大鏡(Magnifier)のアクセシビリティ強化
スクリーンリーダーとの連携が改善され、拡大・縮小操作や色反転の切り替えなどを行った際に音声アナウンスが明確に通知されるようになった。また、保護コンテンツの拡大表示にも対応した。
既知の問題:EFI パーティションが小さいデバイスでインストール失敗
EFI システムパーティションの空き容量が少ないデバイスでは、インストールがエラーコード 0x800f0922 で失敗するケースが報告されている。古いハードウェアや、当初の構成からパーティションを変更していないデバイスで発生しやすい。プレビュー段階の更新であるため、本番環境への適用は慎重に行いたい。
【緊急度高】Secure Boot 証明書が 2026年6月から失効開始
KB5089573 の告知ページには、更新本体とは別に重要な警告が掲載されている。Windows デバイスの多くが利用している Secure Boot 証明書が 2026年6月より失効し始めるというものだ。
対応しないままでいると、一部の個人・業務デバイスでセキュアブートが正常に機能しなくなる可能性がある。Microsoft は証明書の更新手順を公開しており、事前の対応を強く推奨している。6月は目前であり、特に多数のデバイスを管理する企業 IT 管理者は今すぐ影響範囲を確認すべきだ。
日本の IT 現場への影響
システム管理者が今週確認すべきこと:
- Secure Boot 証明書の失効確認を最優先で行う。 2026年6月まで時間がない。Microsoft のガイダンスページ(「Windows Secure Boot certificate expiration and CA updates」)を参照し、管理下のデバイスへの影響をチェックする
- KB5089573 のプレビュー適用は慎重に。 EFI パーティション問題が解消されない場合は 6月の月例パッチまで待つのも合理的な判断だ
- Copilot+ PC を導入済みの環境では、Task Manager の NPU 列追加が運用監視の武器になる。 アプリが意図せず NPU を占有していないかの確認に使える
- Multi-App Camera のグループポリシー設定は、セキュリティ要件の厳しい環境では事前に動作を確認しておく
筆者の見解
Shared Audio は使えるシーンが限られるが、Bluetooth LE Audio の普及を後押しする意味で方向性は正しい。Task Manager への NPU 可視化は「AI PC の中身が見えるようになった」という意味でエンジニアにとってシンプルに嬉しい改善だ。AI 処理がブラックボックスのまま動いている状況から、少しずつ透明性が高まっていく。
ただ、今回の更新で本当に大事なのは新機能よりも Secure Boot 証明書の失効アラート だ。地味に見えるが、対応を怠ると起動できなくなるデバイスが出かねない。セキュリティの基盤となる部分をきちんとメンテナンスし続けるのは正しい姿勢であり、この点は素直に評価したい。
毎月末のプレビュー更新は「本番に当てるかどうかを翌月判断する素材」として捉えるのがちょうどいい。新機能を試したい開発機や検証機では積極的に入れてみるとよいが、安定稼働が最優先の業務端末は月例パッチで GA になってから適用するというリズムが、今のところ一番無難だと感じている。
出典: この記事は May 26, 2026—KB5089573 (OS Builds 26200.8524 and 26100.8524) Preview の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。