USDTで知られる暗号資産企業Tetherが、ジョージア(グルジア)の公式通貨「ジョージア・ラリ」に1対1で連動するステーブルコイン「GELT」の発行を発表した。Engadgetが2026年5月25日に報じた。
GELTとは——国家通貨のデジタル化に挑む新アプローチ
GELTは「ジョージア・ラリのデジタル表現」として機能するステーブルコインだ。Tetherによると、以下の特性を持つとされている。
- 取引コストの低減
- ほぼ即時の決済処理
- プログラム可能な支払い機能
特筆すべきは、ジョージア政府からの正式な支持を得ている点だ。Tetherは同国の立法府・規制当局・ジョージア国立銀行と数年にわたって協議を重ね、今回の発行にこぎ着けたと説明している。「一企業が勝手に作った」ではなく、公的機関との協調を経た仕組みである点が、他の多くの暗号資産と一線を画す。
Engadgetのレポートから見えるポイント
Engadgetの報道では、GELTを「国家通貨と専用ステーブルコインを組み合わせた初期の試みの一つ」として位置づけている。
注目される点:
- ジョージア政府・国立銀行という公的機関の正式サポートによる信頼性
- 変動幅の大きい一般的な暗号資産と異なり、法定通貨に裏付けされた価格安定性
- Tetherが規制当局と長期にわたり協調してきた実績
慎重に見るべき点:
- Tetherを含むステーブルコインは米国規制当局から過去に監視を受けた経緯がある
- GELTの具体的な構造・展開計画・実装方法は「後日発表」とされており、詳細が不明
なお類似の先行事例として、2025年11月にキルギスタンが米ドル連動・金裏付けの国家ステーブルコイン「USDKG」を発行している。
日本市場での注目点
GELTは現時点でジョージア国内向けプロジェクトであり、日本での直接的な購入・流通機会は存在しない。ただし日本の観点からは以下が注目される。
デジタル円(CBDC)との違い GELTは民間企業であるTetherが政府の承認を得て発行する「官民連携型ステーブルコイン」だ。日本銀行が進めるCBDC(中央銀行デジタル通貨)が完全な国家発行モデルであるのに対し、民間の技術力と国家の信用を組み合わせる別のアプローチを示している。
国内の規制整備との関連性 日本では改正資金決済法によりステーブルコインの発行・流通ルールが整備されており、国内金融機関や決済サービス事業者にとってもGELTの設計思想は参照価値がある。
ブロックチェーン開発者への示唆 「プログラム可能な支払い機能」はスマートコントラクトとの連携可能性を示す。DeFi開発に関わるエンジニアにとって、国家公認の法定通貨デジタル版が普及した場合のユースケース拡大は見逃せない動向だ。
筆者の見解
今回のGELTが興味深いのは、「禁止ではなく安全に使える仕組みを作る」という姿勢をまさに体現している点だ。暗号資産に対する各国の対応は規制・禁止に傾くことが多い中、ジョージアの試みは「既存の法定通貨をデジタル化する実用的な枠組み」という現実的な解を提示している。規制当局と数年かけて協議して合意を形成したプロセスは、他の国・地域にとっても一つのモデルになりうる。
ただし詳細が「後日発表」にとどまっている点には注意が必要だ。ステーブルコインの信頼性は裏付け資産の透明性と準備金管理にかかっており、Tetherはこれまでもその透明性について問われてきた経緯がある。GELTにおいては特に詳細な開示が不可欠だろう。
決済インフラの刷新が長年の課題となっている日本においても、こうした官民協調型のデジタル通貨モデルは参考になりうる。国内送金・越境決済のコスト構造が変わる可能性を考えると、金融・決済領域のエンジニアや事業者は動向を追っておく価値がある。
出典: この記事は Tether will launch an ‘official’ stablecoin in Georgia tied to local currency の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。