米テクノロジーメディア「The Verge」は2026年5月24日、ロボタクシースタートアップのNuroについて、共同創業者兼共同CEOのDave Ferguson氏へのインタビューを掲載した。配達ロボット専業からロボタクシー事業へのピボットを経て、業界リーダーのWaymoに「後発の利点」で挑む戦略を語っている。
Nuroとは何者か
NuroはGoogleの自動運転プロジェクト(現Waymo)の出身者であるDave Ferguson氏とJiajun Zhu氏が2016年に創業した企業だ。もともとは自律配達ロボットを開発・運用していたが、2024年にロボタクシー事業へのピボットを発表。その後、UberおよびEVメーカーのLucidと提携し、全米に数万台規模のロボタクシーを展開する計画を進めている。Uberからは数億ドル規模の投資も獲得しており、財務基盤の強化にも成功している。
「セカンドムーバー」戦略の中身
自動運転タクシー市場でWaymoは約3,000台以上の無人車両を米国10都市以上で運用する圧倒的なリーダーだ。Tesla、Zoox、Avride、Motionalといった企業もWaymoを追走しているが、The VergeのAndrew J. Hawkins記者によるインタビューでは、Ferguson氏がこの状況を「後発の有利さ」として前向きに捉えていることが明らかになった。
「セカンドムーバーという視点には大きな価値がある。Waymoへのリスペクトは非常に大きい。稀に彼らが課題に直面しているケースでは、私たちはそれを自社システムの検証の機会として活用している」とFerguson氏はThe Vergeに語っている。
Waymoがゼロから試行錯誤しながら積み上げてきた運用上の知見——難しい交差点の処理、悪天候下での挙動、ライダーとのUX——は、後発企業にとって参照できる「実地事例集」でもある。Nuroはこれを活用して、Waymoが経験した失敗を繰り返さない設計を目指しているという。
Uberとの連携・年内のサンフランシスコ展開
NuroはUberプラットフォームを通じた配車サービスとして展開する計画で、2026年内にサンフランシスコでの商業サービス開始を目標に掲げている。すでに当地でのサービスに必要な許認可の第一号を取得しており、実現に向けた具体的な準備が進んでいる。
The Vergeのインタビューでは、Ferguson氏が初日から「幅広いシナリオに対応できる実用的なサービス」として立ち上げる方針を示した。「保護された交差点のみから始めて段階的に追加していく」という超インクリメンタルな戦略は取らないとしており、高速道路走行などの一部機能は後日追加になる可能性はあるものの、サービス開始時点で十分な実用性を持たせる考えだという。
また、自動運転技術のライセンス提供も事業の柱として位置付けており、先進運転支援システム(ADAS)や個人所有の自律走行車向けに技術を外部販売していく方針も示されている。
日本市場での注目点
現時点でNuroは米国市場に注力しており、日本での展開は発表されていない。ただし、日本においても自動運転タクシーへの関心は高まっており、トヨタやホンダが参入を検討しているほか、ティアフォーなどが国内での実証実験を進めている。
NuroのUber連携モデルは、既存の配車プラットフォームを活用して素早く利用者基盤を拡大するアプローチとして注目に値する。日本でも同様のモデルが展開される可能性は否定できず、配車プラットフォームがどのようにロボタクシーサービスを組み込むかは今後の重要な動向となるだろう。
自動運転技術のライセンスビジネスという観点では、国内自動車メーカーとの提携可能性もある。Waymoとは異なりNuroはまだ新興プレイヤーだが、Googleの自動運転プロジェクト出身者が率いる技術企業として、業界内での技術力への評価は高い。
筆者の見解
Nuroの「セカンドムーバー戦略」は、自動化・AI領域における現実的なキャッチアップ手法として興味深い。フロントランナーが膨大なコストとリスクを負いながら切り開いた道を、後発が参照できるという構造は、技術の成熟局面ではしばしば有効に機能する。
ただし、「後発の優位性」が実際に機能するかどうかは、Nuroが観察した知見をシステムにどれだけ深く組み込めるかにかかっている。Waymoが積み重ねた実走データの絶対量は圧倒的であり、「観察して学ぶ」だけでその差を埋めることは容易ではない。
むしろ筆者が注目するのは、Uberという既存プラットフォームを活用して需要側のハードルを下げた点だ。自前でライダーを獲得するコストをUberに委ねることで、事業の立ち上げ速度と初期の利用者基盤を同時に確保できる。この「統合プラットフォーム活用」の発想は、部分最適を積み重ねるよりも全体として合理的な戦略と言える。
年内のサンフランシスコ展開が予定通り進むかどうか、そして「後発の利点」がWaymoとの差を本当に縮められるかが、2026年後半の自動運転業界を占う上での重要な観察ポイントになるだろう。
出典: この記事は Why Nuro thinks being a robotaxi ‘second mover’ gives it an advantage の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。