Spotifyが、コンサートチケット購入の常識を覆す新機能「Reserved」を発表した。米テックメディアTom’s GuideのKaycee Hill氏が2026年5月23日に報じたもので、SpotifyのPremiumユーザーを対象に、一般販売開始前にチケットを自動確保する仕組みだ。
なぜこの機能が注目されているのか
コンサートチケットの購入は長年、ファンにとってストレスの多い体験だった。発売と同時にサイトへ殺到するボット、転売業者との競争、数万人規模の仮想行列——人気アーティストのチケットは、熱心なファンよりも「すばやく動けた人」の手に渡ることが多かった。
Reservedはこの構造に直接メスを入れる。Spotifyがすでに持っているリスナーの試聴データを使い、「本当のファン」を識別してチケットを先に確保しておくというアプローチだ。
仕組みの詳細
対象はSpotify Premiumユーザー(現時点では米国のみ、順次拡大予定)。ツアーのチケット発売に合わせ、Spotifyが以下の指標をもとにスーパーファンを判定する。
- そのアーティストの再生回数
- 楽曲のシェア・プラットフォーム上でのエンゲージメント
選ばれたユーザーには、メールとアプリ内通知で「2枚のチケットを確保しました」と連絡が届く。そこから約24時間の猶予があり、好みの日程・会場・席を自分のペースで選択できる。
海外レビューのポイント
Tom’s GuideのKaycee Hill氏は、この機能を「コンサートチケット購入のゲームチェンジャー」と評している。
好評価の点
- 数万人規模の仮想行列から解放される
- ボットや転売業者と競う必要がない
- 長年の試聴履歴が「自分に有利な形」で活用される
気になる点
- 確保できる席の種類・場所が限られる可能性がある
- 需要が供給を大幅に上回る場合、スーパーファンでも招待が届かないことがある
- 位置情報をオフにしているユーザーは対象外になる可能性があり、設定の確認が必要
Tom’s Guideは「チケット販売システム全体を修正するものではないが、ずっと聴き続けていたファンを正当に報いる仕組み」と総括している。
日本市場での注目点
現時点では米国のみ先行提供で、日本展開の時期は未発表。Spotifyは「他の国にも順次展開する」としており、国内ユーザーにとっては続報を待ちたいところだ。
日本は2016年にSpotifyがサービスを開始しており、現在は無料・Premiumの両プランが提供されている。国内のライブ・コンサート市場でもチケット争奪は深刻な課題で、人気アーティストの公演では「ファンクラブ先行すら外れる」という状況が珍しくない。日本でReservedが導入されれば、試聴履歴を積み重ねてきたSpotifyユーザーにとって大きな意味を持つ。
なお、本機能では位置情報の許可が必要になるため、Spotifyアプリの設定を確認しておくことを推奨する。
筆者の見解
この機能で評価したいのは、データの「使い道」の設計だ。プラットフォームがユーザー行動のデータを持つのは今や当然だが、大半のケースでそのデータは広告ターゲティングや分析に使われる。Reservedは珍しく「データを持つユーザー本人の利益に直結させる」方向に振り切った。
サービス設計の観点から言えば、「長く使い続けたユーザーが報われる仕組み」は、離脱防止施策のなかでも最も正直な部類に入る。ポイントやバッジを積み重ねさせるのではなく、「実際に欲しいもの(チケット)が取れる」という具体的な価値に変換している点が秀逸だ。
チケット販売の問題は技術だけでは解決できない部分もある。それでも「仕組みを作れば人間がやらなくて済む」という方向性は正しい。日本への展開を楽しみに待ちたい。
出典: この記事は Spotify just eliminated the worst part of buying concert tickets — and it’s an absolute game-changer の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。