Microsoftは、Word・Excel・PowerPointに展開していた「浮動Copilotボタン(Copilot Dynamic Action Button:DAB)」がユーザーの作業フローを妨げているとの大規模な批判を受け、ボタンをリボンに戻す選択肢の提供を開始した。

なぜ浮動ボタンを追加したのか

背景にあるのは、Copilotの採用率の低さだ。現時点でMicrosoft 365ユーザーのうちCopilot有料プランに加入しているのはわずか**3.3%**にとどまっており、Microsoftの内部期待を大きく下回っている。

この数字を改善すべく、Microsoftは2025年12月からDABのロールアウトを開始。2026年5月の展開完了を目指して段階的に拡大してきた。設計チームは「インテリジェンスが適切なタイミングで提供されなければ、パートナーではなく邪魔者に感じられる」と「探索(exploration)」「集中(focus)」を促す機能として位置づけていた。

ユーザーの反応:想定外の激怒

しかし現実は設計チームの期待とは大きく異なった。特にExcelでは、ワークシート右下に常駐するボタンがセルを覆い隠してしまう問題が続出。Microsoftのフィードバックハブには次のような声が相次いだ。

「その存在自体が腹立たしい。Excelまで全員に嫌われたいなら最高のボタンだ」 「ひどいアップグレードだ。オフにできる方法を提供してくれ」 Microsoftはロールアウト前から浮動ボタンが作業を妨げる可能性を認識していたにもかかわらず、クリックスルー率向上という内部目標を優先して展開を強行していたことが今回の件で明らかになっている。

Microsoftの対応:右クリックでリボンへ移動

批判を受けMicrosoftは、ボタンを右クリックすることでリボンへ戻せる新オプションを追加した。

「Microsoft 365をCopilotとより緊密に統合し、必要なときにいつでも役立つ思考パートナーとして利用できるようにする取り組みを進めてきました。フィードバックに耳を傾け、学び、改善し続けています」——Microsoft公式コメント ボタンの配置は現在「浮動」「ドッキング(横へ固定)」「リボン」の3択から選べる形となっている。完全な非表示は現時点では提供されていない。

実務への影響

現在このボタンが表示されているOfficeユーザーは以下の手順で即座に対処できる。

  • Copilotの浮動ボタンを右クリック
  • 「リボンに移動」オプションを選択
  • 以降は従来通りリボンからのアクセスに切り替わる

IT管理者の観点では、Microsoft 365管理センターやグループポリシーを通じたテナント全体での制御オプションについても、今後の展開を注視する必要がある。Copilot関連のUI変更は今後も続く可能性が高く、エンドユーザーへの事前周知と操作説明を準備しておくことが望ましい。

筆者の見解

MicrosoftがDABのロールアウト前から「ユーザーの作業を妨げる可能性がある」と認識しながら、クリックスルー率向上という内部指標を優先して展開を強行したことは、率直に言ってもったいない判断だった。

Copilotの採用率3.3%という数字は確かに課題だが、その改善策として「UIを変えて無理やり目に触れさせる」というアプローチは、Copilotが本来訴求すべき価値——生産性の向上——と逆行する。Excelのセルを隠すボタンを「思考パートナー」と呼ぶことには無理がある。

MicrosoftにはUIの押しつけではなく、Copilotが実際に価値を生む場面を増やすことで採用率を高める力が十分にある。今回のフィードバックを真摯に受け止め、次のUI変更では「なぜこれがユーザーにとって価値あるのか」を起点に設計を組み立て直してほしい。正面から勝負できる製品を持っているのだから、焦る必要はないはずだ。


出典: この記事は Microsoft admits the floating Copilot button in Word, Excel and PowerPoint was a mistake, lets you hide it after backlash の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。