Microsoftは、AMD EPYC第5世代プロセッサ「Turin(Zen 5アーキテクチャ)」を搭載したAzure仮想マシンの新3シリーズ「Dav7」「Eav7」「Fasv7」の一般提供(GA)を発表した。汎用・メモリ最適化・コンピュート最適化の主要カテゴリを一括でカバーする今回のリリースは、価格性能比とI/O帯域幅の両面で前世代から大幅な引き上げを実現している。
AMD EPYC「Turin」とは何か
AMD EPYC Turinは、Zen 5マイクロアーキテクチャに基づく第5世代のEPYCサーバープロセッサだ。前世代の「Genoa(Zen 4)」から引き続き多数のコアと広帯域メモリを特徴とするが、IPC(クロックあたりの命令実行数)が向上しており、同一コア数でのスループットが改善されている。エネルギー効率も改善されているため、コストあたりの計算能力という観点で競争力が増している。
3シリーズの概要
Dav7シリーズ(汎用) Webサーバー、小〜中規模データベース、開発・テスト環境など幅広いワークロード向け。vCPUとメモリのバランスが取れた構成で、多くの一般的な業務システムの移行先として適している。
Eav7シリーズ(メモリ最適化) SAP HANAやインメモリデータベース、大規模な分析ワークロードなど、高メモリを必要とするシステム向け。メモリ対vCPU比が高く設定されており、データをオンメモリで保持し続けるシステムに向いている。
Fasv7シリーズ(コンピュート最適化) 高クロック周波数を活かしたバッチ処理、ゲームサーバー、高スループットなWebアプリケーション向け。シングルスレッド性能が重要なワークロードに適している。
Azure Boost統合によるI/O性能の向上
今回の3シリーズはすべてAzure Boostに対応している。Azure Boostとは、ネットワークおよびストレージの処理をホストCPUからMicrosoftの専用オフロードハードウェアへ移すMicrosoftの独自技術だ。これにより、購入したvCPUリソースの大部分を実際のワークロードに使えるようになる。従来はハイパーバイザーの管理処理に消費されていた分のCPUサイクルが節約され、特にI/O集中型ワークロードでの実効性能が前世代から引き上げられている。
実務への影響 — 日本のエンジニア・IT管理者が知るべきこと
既存VMの移行候補として評価する価値がある 特にDsv5やEasv5シリーズを使用中の環境では、同一スペックで月額コストが下がるか、同一コストでスペックアップできる可能性がある。移行前にAzure Price Calculatorで比較検証をしておきたい。
SAP・Oracle等のライセンス課題に注意 メモリ最適化のEav7はSAP HANAのユースケースに適しているが、SAP製品のAzure認定VMリスト(SAP Certified IaaS Platforms)に掲載されているかどうかを必ず事前確認すること。新シリーズのSAP認定は正式リリースから数ヶ月遅れで取得されるケースがある。
リージョン展開状況の確認を忘れずに 新VMシリーズは全リージョンで同時提供開始になるわけではない。東日本・西日本リージョンでの提供有無とクォータ申請の要否は、Azureポータルの「Virtual Machines」→「サイズ」フィルターで確認できる。
コンピュート集約型のAI推論ワークロードへの転用 GPU VMほどではないが、CPU推論(ONNX Runtime等)を使う軽量なAIワークロードでは、Fasv7のような高クロック構成が費用対効果の高い選択肢になることがある。
筆者の見解
Azureのコンピュートプラットフォームとしての地力は、こういったアップデートを見るたびに改めて確認できる。AMD EPYCとの連携深化は着実で、ハードウェア側の進化をクラウドユーザーがタイムリーに享受できる仕組みは整っている。
ただ正直なところ、「どのVMシリーズを選ぶか」という判断の重要性は、AIワークロードの台頭とともに相対的に変わりつつある。Azureを活用する上で今本当に重要なのは、GPU/NPUリソースの調達とAzure AI Foundry上でのモデル選択の戦略であり、CPU VMの細かいチューニングはその次の話になってきている。
とはいえ、既存の業務システムやデータ基盤はCPU VMで動き続ける。コスト最適化の観点でDav7・Eav7・Fasv7への移行を定期的に見直すのは地味だが確実なアプローチだ。Azureのインフラ基盤への信頼は揺るがない。その上でどのサービスとどのAIを組み合わせるかを考えるのが、今の正しいAzure活用の姿だと思っている。
出典: この記事は Announcing General Availability of Azure Da/Ea/Fasv7-series VMs based on AMD ‘Turin’ processors の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。