米テックメディア Built In が2026年5月6日に報じたところによると、OpenAIは元Appleチーフデザインオフィサーのジョニー・アイヴ(Jony Ive)が率いる「io」スタジオと共同で、まったく新しいカテゴリのAIデバイスを開発中だ。画面を持たず、ポケットに収まるサイズで、音声とカメラ・マイクによるコンテキスト認識を特徴とするこのデバイスは、2026年後半の登場が見込まれている。
OpenAIが目指す「次世代AIコンピュータ」とは
Built Inの報道によれば、OpenAI CEOのサム・アルトマンはこのデバイスを「新世代のAI搭載コンピュータ」と表現した。スマートフォンでもスマートウォッチでもなく、まったく新しいカテゴリを作ろうとしているのが大きなポイントだ。
現時点で確認されているスペック・特徴は次のとおり:
- フォームファクター: ポケットサイズ・画面なし
- 主要インターフェース: 音声
- センサー: 内蔵カメラ・マイクによる周囲のコンテキスト認識
- 連携: スマートフォン・PCなど既存デバイスとの統合
- 搭載AI: OpenAIの最新AIモデル
形状についてはまだ明確ではなく、Built Inによれば「ひもに付けたiPod Shuffle風」「イヤバッド」「ペン」といった憶測もあるが、いずれも未確認だ。同メディアはOpenAIが音声モデルの大幅刷新に向けてエンジニアリング・プロダクト・研究チームを一本化したとも伝えており、音声インターフェースへの本格注力姿勢が伺える。
「デバイスファミリー」の全体像
Built Inがさらに詳しく報じているのが、デバイス単体ではなく「ファミリー」としての開発計画だ。The Informationの情報源によると、OpenAIは200名超のエンジニアを擁するハードウェアチームで複数の製品を並行開発している。
製品 特徴 予想時期
主力AIデバイス(画面なし) 音声・コンテキスト認識 2026年後半
スマートスピーカー カメラ内蔵・物体認識・顔認証決済 2027年以降
スマートグラス 詳細未発表 2028年以降
スマートランプ プロトタイプ開発中 未定
スマートスピーカーには内蔵カメラによる物体識別機能に加え、Apple Face IDに類似した顔認証による安全な決済機能も検討されているという。
なぜこのデバイスが注目を集めるか
注目すべきは、ハードウェアよりもインタラクションパラダイムの転換にある。「画面を見ない」という設計思想は、スマートフォン中心の現在のデジタル生活を根本から問い直すものだ。ジョニー・アイヴがAppleでiPod・iPhone・MacBookを生み出したデザイン哲学を、AI時代の新デバイスにどう落とし込むかも大きな見どころとなっている。
日本市場での注目点
現時点では日本での発売スケジュールや価格帯は一切発表されていない。2026年後半という時期は、まず米国を中心とした展開になると見ておくのが妥当だろう。
競合として意識すべき前例として、「画面なし・音声AI」カテゴリに挑戦したHumane AI Pin(米国で約700ドル、すでにサービス終了)やRabbit r1(約200ドル)がある。いずれも機能面で期待を下回ったと評価されており、OpenAI+Jony Iveコンビがこの教訓をどう活かすかが鍵になる。
日本市場では、シニア層や「スマートフォンの操作が苦手な層」への訴求が考えられる一方、プライバシー意識の高い日本のユーザーに対してカメラ・マイク常時起動型デバイスがどう受け入れられるかは未知数だ。
筆者の見解
AI時代のデバイスをどう設計するかという問いに対して、OpenAIが「画面を捨てる」という大胆な答えを出してきたことは注目に値する。
ただ、AIデバイスの成否を分けるのは、デザインよりAIエージェントとしての自律性だと筆者は見ている。ユーザーが毎回指示を出すたびに確認を求めるような設計では、どんなに洗練されたハードウェアでも日常的に使い続けることは難しい。「目的を伝えればあとは任せられる」という体験が設計の核心に据えられているかどうかが、このデバイスの実力を決めるはずだ。
200名を超えるエンジニア体制で複数製品を並行開発するOpenAIのリソース投入は本気度の現れだ。Humane AI PinやRabbit r1が切り拓こうとして果たせなかった「ポスト・スマートフォン時代のAIデバイス」という市場を、今度こそ具現化できるか。2026年後半の登場を注視したい。
出典: この記事は OpenAI’s New Device: What We Know So Far の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。