Google I/O 2026にて、GoogleはAIショッピング機能「Universal Cart(ユニバーサルカート)」を発表した。Tom’s GuideのOlivia Halevy氏が詳細を報じており、AIが単なる検索結果の表示を超え、価格監視・在庫通知・さらには購入代行まで実行する「エージェント型コマース(agentic commerce)」への転換を宣言するものとなっている。
なぜ「Universal Cart」が注目されるのか
従来のオンラインショッピングでは、ユーザーは複数のECサイトを巡回し、カートを別々に管理する必要があった。Universal Cartはこの課題に正面から挑む。GoogleのSearch・Gemini・YouTube・Gmailといった主要アプリを横断して単一のカートを共有し、ブラウジング中・動画視聴中・メール返信中でも商品を追加できる設計だ。
Googleが掲げる「エージェント型コマース」というビジョンは、AIが単なる情報提供にとどまらず、ユーザーの代理として能動的に行動するというパラダイムシフトを意味する。「まるで個人専属のショッピングアシスタントがついているように」とGoogleは表現している。
海外レビューのポイント
Tom’s GuideのOlivia Halevy氏のレポートによると、Universal Cartの主要機能は以下の通りだ。
カートに入れた瞬間から自動的に動き出す
- 価格監視: 登録商品の価格変動を常時トラッキング
- 割引・セール通知: ディスカウント適用時にアラート
- 在庫復活通知: 品切れ商品が再入荷したタイミングで通知
- より安い代替案の提示: Gemini AIが類似・競合商品を提案
自作PCパーツの互換性チェック——実用シナリオが示す本気度
Googleが具体例として挙げたのが、自作PCユーザーのシナリオだ。複数ショップでパーツをカートに入れると、AIが部品間の互換性を確認し、問題があれば購入前に警告・代替提案を行う。これは価格比較にとどまらない、専門的なアドバイザーとしてのAI活用を示している。
チェックアウトの統一:Universal Commerce Protocol(UCP)
GoogleはUCPも拡張する。Google Payでの一括決済、または各ショップサイトへの転送による購入の両方に対応。Nike・Sephora・Target・Walmart・Wayfair・Shopify加盟店(Fenty、Steve Maddenなど)での利用が今夏より順次開始予定だ。
AIに購入を委任する「Agent Payments Protocol(AP2)」
最も踏み込んだ機能がAP2だ。AIエージェントがユーザーの代わりに購入まで実行する仕組みで、支出上限額・購入可能商品の事前設定といった安全装置を備える。「完全放任」ではなく、ユーザーが定めたルールの範囲内で自律的に動く設計となっている。
日本市場での注目点
現時点ではUniversal CartのローンチはSearch・Geminiアプリを通じて米国にて2026年夏を予定しており、日本での提供時期は未発表だ。
日本のEコマース市場はAmazon.co.jpや楽天市場が圧倒的なシェアを持ち、Googleショッピングの存在感は相対的に低い。Universal Cartが日本に展開される際には、国内主要ECとのUCP連携がどこまで進むかが普及の鍵になる。
一方、価格比較・在庫監視ニーズは日本でも高く、kakaku.comやAmazonウィッシュリストの代替として使われる可能性は十分ある。競合としてはAmazonのAIショッピング機能が挙げられるが、Google検索・YouTube・GmailというWeb行動の主要動線を一気通貫で繋ぐ点はAmazon単体では実現できない強みだ。
筆者の見解
今回のUniversal Cart発表は、AIエージェントが「確認・承認を人間に求め続ける」副操縦士モデルから脱却し、自律的に行動する本来のエージェントとしてEコマースに参入した出来事として捉えている。
複数サイトを巡回して価格を手動チェックし、在庫状況を記憶し、互換性を調べる——こうした作業は本来人間が時間をかけるべきではない。AP2による「AIへの購入委任」はスペンディングキャップという制約付きながら、エージェントが目的に向かって自律的に動く設計として筋がいい。
日本の法人・EC事業者にとっては、UCPへの早期対応が重要な戦略課題になり得る。Googleのエコシステムに乗ったとき「AIに推薦される側」に回れるかどうかは、今後の競争優位に直結するはずだ。この流れは日本でも無視できない。
出典: この記事は Google’s new ‘Universal Cart’ can monitor prices, suggest products and even buy items for you — here’s how it works の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。