Tom’s GuideのAmanda Caswell記者が2026年5月に公開したレビューで、開発者Peter Steinberger氏が作成したオープンソースAIエージェント「OpenClaw」の実機テスト結果を詳報した。Steinberger氏はOpenClaw公開後にOpenAIへ採用されており、業界関係者の間では「次世代AIの方向性を示す実装」として注目を集めている。

OpenClawとは何か

OpenClawが従来のAIチャットボットと一線を画す点は、「Computer Use」と呼ばれる技術にある。ChatGPTやGoogle Geminiが「どうすればいいか教える」ツールであるのに対し、OpenClawは「代わりに実際にやってくれる」エージェントだ。アプリを開く、ボタンをクリックする、Webサイトを閲覧する、フォームへの入力、複数タブ間での情報比較、ファイル移動、メールの下書き——こうした作業を複数ステップにわたって自律的にこなす。

さらにOpenClawが特徴的なのは、すべてのサービスに専用のAPI連携を必要としない点だ。人間と同じように「画面を読む・メニューを操作する・アプリを制御する」という視覚的アプローチでコンピューターを操作するため、サービス対応数が少ない初期段階でも汎用的に動作できる。

Tom’s Guideレビューのハイライト

Caswell記者のレビューによると、テストでは「フェンウェイパーク近くで家族向け・1泊400ドル以下のホテルを探し、クチコミを比較し、徒歩圏内かを確認し、最良の選択肢をまとめたメールを下書きして」という複合的な指示を一言で与えた。OpenClawは手動で一切アプリを開くことなく、複数のWebサイト間を自律的に行き来し、情報をリアルタイムで比較・整理して完成した回答を返したという。

レビュアーは「約20分間、自分では一つもアプリを開かなかった」と述べ、「速さよりも、問いかけて受け取るという感覚の方が衝撃的だった。何度も思わず声を上げてしまった」と正直な驚きを記している。

一方で、記事タイトルには「私には向いていない」とも付け加えており、現時点での一般ユーザーへの普及には距離があることを率直に示している。「画期的とは認めるが、私には合わなかった」というCaswell記者の評価は、実用性に関してバランスのとれた視点として参考になる。

なぜ今、シリコンバレーが熱狂するのか

Caswell記者が指摘するように、AI競争のフェーズが変わってきた。過去2年間は「よりスマートなチャットボット」の開発競争だったが、次の局面は「AIにPCの操作権限を与える」フェーズだ。AnthropicのClaude Cowork、OpenAIのChatGPT Agentなど主要各社が類似コンセプトの製品を展開しており、OpenClawはそのオープンソース版として先行した存在と位置づけられる。

日本市場での注目点

OpenClawはオープンソースプロジェクトのため、GitHubから取得して自前のPC上で動作させることが可能だ。ただし現時点では英語圏サービスとの統合が主体であり、日本語UIのアプリや国内サービスとの相性は別途検証が必要な段階だ。

国内企業での利用を検討する場合、データをローカルPC内で処理できるオープンソース系エージェントは、セキュリティポリシーの観点から優位性を持つ可能性がある。Microsoft Copilot、Google AI Studio等の商用AIエージェントの日本語対応強化の動向とあわせて比較検討するとよいだろう。

筆者の見解

「AIが代わりにやってくれる」——この体験の根本にあるのは、AIエージェントのパラダイム転換だ。「副操縦士として提案する」モデルから、「目的を伝えれば自律的にタスクを遂行する」モデルへの移行こそが本質的な価値を生む。OpenClawはその方向性を具体的に示した実装として、業界関係者が注目するのは当然といえる。

Caswell記者が「私には向いていない」と感じた点も興味深い。道具を使って自分でやることと、指示を出して任せることは、コンピューティングとの関係性そのものを変える体験だ。その戸惑いは多くのユーザーが共感するはずで、普及には体験設計の工夫がまだ必要だろう。

日本のIT現場でこの変化をまだ「遠い話」と捉えている組織は少なくない。しかし、AIエージェントが複数ステップのワークフローを自律的に実行できるなら、多くの「人手作業」がリアルタイムで変容する。今のうちに自分の手でこうしたツールを触れておくことが、次の数年間で大きな差になるはずだ。


出典: この記事は I tested the viral AI agent that could replace apps — and it made me appreciate my computer without it の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。