Broadcomは2026年5月、macOS向け仮想化ソフトウェア「VMware Fusion Pro 26H1」をリリースした。Apple Silicon(ARM)環境でのESXiゲストOSサポートの追加、Linux系ゲストOSの互換性拡張、そして深刻なセキュリティ脆弱性の修正が今回の主な変更点だ。

ARM ESXiゲストサポートが意味すること

今回の目玉機能は、Apple Silicon Mac上でVMware ESXiをゲストOSとして動作させる「ARM ESXサポート」だ。これはvSphereやESXiを扱うインフラエンジニアにとって重大なアップデートとなる。

これまでApple SiliconのMacユーザーがESXiの検証をしようとすると、x86ベースのマシンを別途用意するか、クラウド上に環境を構築するしかなかった。ARM ESXIゲスト対応により、M1/M2/M3/M4チップを搭載したMacBook ProやMac miniの上で、直接ESXiの動作検証やラボ環境構築が可能になる。

ただし注意点がある。ARM版ESXiはIntel版と完全に同じではなく、ゲスト側のARMネイティブ対応状況やNIC・ストレージドライバーの差異が存在する。あくまで「ラボ・検証用途」として捉えるのが現実的な使い方だ。

拡充されたLinuxゲスト互換性

26H1では、Linuxゲストの互換性リストが更新された。具体的に対応が強化されたのは以下のディストリビューションだ(Fusionのリリースノートに基づく):

  • Ubuntu 24.04 LTS(Noble Numbat)の正式サポート強化
  • Debian 13(Trixie)系列の追加対応
  • RHEL/AlmaLinux/Rocky Linux 9.x 系の最新マイナーバージョン追従

Kubernetesやコンテナ開発用途でmacOSをメインに使いながらLinux VMを日常的に動かしているエンジニアには、アップデートの恩恵を感じやすい変更だ。

重大なセキュリティ修正

今回のリリースで特に注目すべきは「major security fix」の存在だ。BroadcomのセキュリティアドバイザリによりCVEが割り当てられている場合、VMインスタンスの隔離境界に関わるホスト側への影響(VM Escape系)の可能性もある。

Fusion Proを業務環境で使っているユーザーは、セキュリティ修正の詳細をBroadcomのリリースノートで確認し、できるだけ早期にアップデートを適用することを強く推奨する。「VMはゲストだから安全」という発想はVM Escapeの脅威を考えれば成立しない。ホストOS同様の感度でパッチ適用を習慣にしたい。

実務への影響と活用ポイント

インフラ・VMwareエンジニア向け: Apple Siliconが普及した現在、開発マシンがARMアーキテクチャに移行している組織では、「Mac上でESXiをテストしたい」というニーズは確実に増えている。ARM ESXiゲスト対応はそのギャップを埋める現実的な手段になる。vSphere環境の設計検証や新機能の事前確認に活用できる。

開発者向け: Docker Desktopと比較してもVMware Fusionはネットワーク構成の自由度が高く、複数VMでのネットワークトポロジー再現が得意だ。マルチノード構成の検証や、本番に近い環境でのテストが必要な場面ではFusionが有利なシーンも多い。

IT管理者向け: Fusion Proはライセンス形態がBroadcomの再編以降に変化しており、無料化された個人利用枠と有償の商用枠が整理されている。社内への展開を検討している場合は、最新のライセンス条件を確認した上で計画を立てることを勧める。

筆者の見解

VMware FusionはmacOS上の仮想化ソリューションとして、長年の実績を持つ信頼性の高いツールだ。BroadcomによるVMware買収後、価格体系や製品ラインアップが大きく変わったことで一時は混乱もあったが、Fusion Proの継続的な機能強化は歓迎できる。

ARM ESXIゲスト対応は、Apple Siliconへの移行が進む国内のIT現場でも実用的な価値がある。ただし、VMの検証環境はあくまで「道具」であって、本番相当の構成テストは相応のハードウェアで行うという基本は変わらない。

セキュリティ修正については、多くのエンジニアが「仮想マシン環境だから」と過信しがちな点でもある。ホストとゲストの境界は完全無敵ではない。パッチ適用の優先度はホストマシンと同等に扱うべきだというのが個人的な一貫したスタンスだ。アップデートを後回しにしないこと、これに尽きる。


出典: この記事は VMware Fusion Pro 26H1 released with support for more guest OSes の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。