Microsoftは5月12日、Agent 365に関するAMA(Ask Me Anything)セッションを開催し、AWS BedrockおよびGoogle CloudとのAIエージェントレジストリ同期がパブリックプレビューへ移行したことを正式に発表した。異なるクラウド上で稼働するAIエージェントをMicrosoft 365の管理基盤から横断的に制御できる体制が、いよいよ試せる段階に入った。

Agent 365とは何か?

Agent 365は、Microsoft 365エコシステム内でAIエージェントを作成・展開・管理するためのプラットフォームだ。Copilot Studioで構築したエージェントはもちろん、外部クラウドで動くエージェントとの連携も射程に入れている。

今回のAMAでは製品チームが参加者からの質問に幅広く回答し、ロードマップや現在の制限事項なども共有された。

最大のニュース:AWS Bedrock・Google Cloudとのレジストリ同期

今回のアップデートで最も注目すべきは、AWS BedrockおよびGoogle CloudのAIエージェントとのレジストリ同期がパブリックプレビューに移行した点だ。

これが意味するのは、クラウドをまたいで稼働するAIエージェントを、Microsoft 365の管理コンソールから一元的に把握・管理できるようになるということだ。

従来、企業がAIエージェントを活用しようとすると:

  • Microsoft Copilot / Copilot Studioで構築したエージェント
  • AWS Bedrockで動くエージェント
  • Google Cloud上のエージェント

これらはそれぞれ別々の管理コンソールで扱うしかなかった。セキュリティポリシーの統一適用やアクセス権管理もバラバラで、IT管理者にとっては頭痛の種だった。Agent 365のレジストリ同期は、この分断を緩和する。どのクラウドで動くエージェントなのかを問わず、Microsoft 365側からディスカバリー・管理できる統一レイヤーを提供しようとしている。

ライセンスと価格

Agent 365のスタンドアロンライセンスは月額15ドル/ユーザー。Microsoft 365のサブスクリプションとは独立して購入できる形態も用意されている。

なお、マルチクラウドのエージェントレジストリ同期を活用する場合、各クラウド側のエージェントサービスコストは別途かかる点には留意が必要だ。

実務への影響 — 日本のエンジニア・IT管理者に何が変わるか

マルチクラウド環境の管理コストが下がる可能性

日本の大企業でも「Microsoft 365を中核に置きつつ、AWSやGoogle Cloudも使う」というマルチクラウド構成はもはや標準的だ。AIエージェントをこうした環境に展開するとき、Agent 365のレジストリ同期は管理の統一化という観点で有用になりうる。

ガバナンスの観点

AIエージェントが乱立する組織では、「どのエージェントが何にアクセスできるか」の把握が急務だ。エージェントのレジストリを一元管理できれば、セキュリティ審査や監査の作業が大幅に楽になる。特に金融・医療・官公庁系など厳しいガバナンスが求められる業種では、この可視化レイヤーの価値は大きい。

今すぐ確認すべきこと

  • テナントのAgent 365設定を確認する: Microsoft 365管理センターのAgent設定ページから機能が有効化できるか確認する
  • Copilot Studioとの連携ポイントを把握する: 既存のCopilot Studioフローと統合できる部分を洗い出す
  • AWS / Google Cloud側の準備: BedrockやVertex AIで動かしているエージェントがある場合、レジストリ同期の要件を満たしているか事前確認する
  • パブリックプレビューの早期評価: 本番適用前の検証フェーズとして、今のうちに試験環境で動作確認を進めておくことを勧めたい

筆者の見解

マルチクラウドのエージェントレジストリ同期という方向性は、率直に言って理にかなっていると思う。AIエージェントの時代に「自社クラウドのエージェントしか管理できない」では、企業の現実に即していない。MicrosoftがここでAWSやGoogle Cloudとのオープンな連携を選んだことは、プラットフォームとしての競争力を維持する上で必要な判断だ。

一方で課題もある。レジストリ同期がパブリックプレビューに入ったとはいえ、エージェントの「可視化」と「制御」は別の話だ。他クラウドのエージェントをリストに表示できたとしても、ポリシーの強制適用や細かな権限管理がどこまで機能するかは今後の実装次第だ。「見えているだけで管理できていない」という状況にならないよう、導入時は機能の成熟度を慎重に見極めてほしい。

Microsoft 365は統合プラットフォームとして使ってこそ価値が出る。Agent 365が真に機能するのも、M365エコシステムとの深い統合があってのことだ。マルチクラウド対応はその価値をさらに広げる可能性を秘めているし、Microsoftならそれを実現できる実力があると信じている。この取り組みが本物のマルチクラウドガバナンスへと発展することを期待したい。


出典: この記事は You Asked — We Answered: Inside the Agent 365 AMA の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。