テック情報メディアTom’s Guideにて、ライターのAmanda Caswellが「Passプロンプト」と呼ぶ手法を2026年5月15日に公開した。ChatGPTに対してAIツール間の比較判断を行わせ、タスクに最適なモデルを自己申告させるというアプローチだ。

なぜこの手法が注目されているのか

多くのユーザーは一つのAIを何にでも使い続けている。Caswellはこれを「料理人に水道修理をさせるようなもの」と表現し、この非効率が生産性の最大40%を損なっていると指摘する。

Passプロンプトのコアとなるアイデアは、ChatGPTを「AIワークフロー戦略家」として機能させることだ。各モデルの強みを把握した上で、目の前のタスクをどこに振るべきか判断させる。

Passプロンプトの全文

Tom’s Guideが紹介したプロンプトの全文はこちら(英語):

“Analyze this task like an AI workflow strategist. Determine which AI system — whether yourself, Claude or Gemini — is best suited for this request based on reasoning depth, creativity, research ability and reliability. If you are not the best fit, explain why, provide the specific prompt I should use elsewhere and then give me your best ‘v1’ attempt anyway.” 日本語ユーザーでも、このプロンプトを英語のままプロンプト冒頭に添えるだけで、ChatGPTが自ら最適なモデルを推薦・説明してくれる。短時間で判断したい場合はこちらの簡易版も紹介されている:

“Before answering, tell me: Is there a different AI model that would handle this specific task better than you? Why?”

Tom’s Guideが整理した3大AIの適性

Caswellが数ヶ月の実運用を経てまとめた、各モデルのポジション分けは以下の通りだ。

ChatGPT(GPT-5.5 Instant)— 実行・草稿・系統化

雑多なメモの整理、大型プロジェクトのアウトライン作成、システム設計の初稿(v1)など「まず動かす」用途に最適。スピードと実用性が強みで、ChatGPTを「参謀長(Chief of Staff)」と表現している。

Claude — 文章品質・深い論理・編集

長文ライティング、戦略ロードマップの設計、「測ってから切る」型の推論タスクで真価を発揮するとされる。Caswellは「マスターエディター」と評している。

Gemini — 実世界データ・大容量コンテキスト

500ページのPDF解析、GmailやGoogleドキュメントからのデータ抽出、大きなコンテキストウィンドウが必要なタスク向き。NotebookLMとの組み合わせも有効とされる。

AIスタッキングの具体的なパイプライン例

Caswellによると、「パワーユーザー」と呼ばれる生産性10倍層が実践しているのはAIのスタッキング(重ね使い)だという。具体的なパイプライン例として「リサーチはGemini → 合成・編集はClaude → 最終実行・配信はChatGPT」という流れが示されている。Passプロンプトはこのスタッキングの入口判断を自動化する仕組みとして機能する。

日本市場での注目点

Passプロンプトで言及される3モデルはいずれも日本語に対応しており、APIを通じた国内利用も可能だ。

  • ChatGPT: OpenAI日本法人あり。エンタープライズプランでデータ保護オプション提供
  • Claude: Anthropic APIおよびClaude.aiウェブサービスとして国内利用可能
  • Gemini: Google One AI Premiumに統合。Workspace環境との親和性が高い

Passプロンプト自体は英語で記述されているが、ChatGPTは日本語タスクの文脈でも適切に解釈するため、実質的にそのまま日本語ユーザーでも活用できる。企業での導入時は各社の利用規約とデータ保護ポリシーの確認が必要だ。

筆者の見解

Passプロンプトが面白いのは、AIを「使うもの」から「選ばせるもの」に変えている発想の転換にある。ただし正直に言えば、この手法が最も刺さるのは「どのAIが何に向いているかまだ把握できていない」段階のユーザーだ。本格的にAIを仕事に組み込んでいる人は、タスクごとの使い分けをすでに体で覚えているはずで、ChatGPTに聞くまでもなく判断できる。

それよりも、この記事が示している大きな流れ——「一つのAIを万能ツールとして使う時代の終わり」——に着目すべきだろう。企業のAI導入においても「どれか一つを全社展開する」という発想自体が、そろそろ見直しの時期に来ている。AIは互いに競合するツールではなく、役割の異なるチームメンバーとして設計する視点が、実務レベルで必要になってきた。

Passプロンプトはその視点への入口として、シンプルながら示唆に富んだ提案だと思う。


出典: この記事は I use the ‘pass’ prompt to make ChatGPT admit when another AI is better の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。