カリフォルニア州議会の歳出委員会で、オンラインゲームのサービス終了(EOL)に関する規制法案「Protect Our Games Act」が11対2の賛成多数で可決され、議会本会議での採決に向けて前進した。Ars Technicaが5月15日に報じた。「Stop Killing Games(SKG)」運動の後押しを受けたもので、ゲーム保全を求めるプレイヤーたちにとって大きな一歩となる。

なぜこの法案が注目されるのか

オンラインゲームはサーバーに依存する構造上、運営会社がサービスを終了すると、お金を払って購入したはずのゲームが突然プレイできなくなる。この問題を象徴するのが2024年のUbisoft「The Crew」の完全シャットダウンだ。購入済みの正規タイトルがサーバー停止とともにプレイ不能になったことを機に、英国発の権利擁護団体「Stop Killing Games(SKG)」が立ち上がり、「正当な対価を払ったゲームをメーカーが一方的に消す行為を禁止すべき」という主張を世界規模で展開してきた。

今回、カリフォルニア州議員クリス・ウォード氏が法案を提出。SKGも草案起草に関与したと明かしており、Ars Technicaによればメンバーのモーリッツ・カッツナー氏は「クリスマス直前に米国に飛んでSKG-USの立ち上げを手伝ったとき、ここまで早く前進するとは思っていなかった」とRedditで述べている。

法案の主な内容

Ars Technicaの報道によれば、Protect Our Games Actが定める主な義務は以下の通りだ:

  • パッチ提供または全額返金の選択義務: サービス終了時、パブリッシャーは「全額返金」か「外部サービスに依存せず独立してプレイ可能なバージョンの提供」のいずれかをプレイヤーに提示しなければならない
  • 60日前通知義務: 通常プレイに必要なサービス終了の60日前に利用者へ告知する
  • 適用対象: 2027年1月1日以降にカリフォルニア州で販売されるゲームが対象。完全無料ゲームおよびサブスクリプション専用ゲームは対象外

業界団体ESAの反論

エンターテインメントソフトウェア協会(ESA)はこの法案に強く反対している。Ars Technicaが伝えるESAの主な主張は以下の通りだ:

  • 「消費者が購入するのはゲームの所有権ではなくライセンス(アクセス権)であり、永続的なプレイを保証するものではない」
  • 「古いソフトウェアのサービス終了はモダンなソフト開発における自然な特性」
  • 楽曲や IP などのライセンスは期間限定交渉が多く、法的・技術的に永続稼働を維持できないケースがある

ESAの主張はゲーム開発の複雑なライセンス構造を踏まえた現実論だが、SKGはこれを「業界の利益を守るための言い訳」と反論している。

日本市場での注目点

日本でも同様の問題は決して珍しくない。スマートフォンゲームや家庭用ゲームのオンラインサービス終了により、購入済みコンテンツが突然遊べなくなる事例は多数ある。しかし現状では日本にこれを明示的に規制する法律はなく、消費者庁や公正取引委員会の管轄で個別対応にとどまる。

カリフォルニア州法は米国の地方法だが、世界最大級のゲーム市場のひとつである同州での施行はグローバルなゲーム業界全体に波及しうる。この法案が成立・定着すれば、他州や他国への波及も視野に入り、日本のゲーム会社にとっても無関係ではないトレンドとなる可能性が高い。なお、現時点では法案はまだ本会議採決を経ておらず、成立まではいくつかのハードルが残る。

筆者の見解

The Crewのケースは象徴的だった。正規に購入したゲームが運営都合で一方的に消えるという体験は、デジタルコンテンツそのものへの信頼を損なうリスクをはらんでいる。ゲームに限らず、デジタルサービス全般の「購入」とは何か、という本質的な問いに業界が向き合う契機になりうる。

ESAが挙げるライセンス問題は確かに現実の課題ではある。しかしだとすれば、業界が自主的にEOL対応のベストプラクティスを整備すべきだったはずで、立法という形で問題が顕在化してきたのはその機を逸してきた結果とも言える。今回の委員会通過は、パブリッシャーに「技術的に何ができるか」を真剣に検討する動機を生み出した。長期的に見れば、プレイヤーとの信頼構築のための制度設計として機能する可能性は十分にある。日本のゲーム企業も、他人事と流さずに動向を注視しておくべきだろう。


出典: この記事は Bill to block publishers from killing online games advances in California の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。