2026年5月15日、MicrosoftはMicrosoft TeamsウェブアプリへのアクセスにECMAScript 2022(ES2022)準拠ブラウザを必須要件として適用開始した。対象外ブラウザからのTeams Webアクセスはこの日からブロックされる。デスクトップクライアントおよびモバイルアプリへの影響はない。

ECMAScript 2022とは何か

ECMAScript(ES)は、JavaScriptの動作仕様を定める国際標準規格(ECMA-262)だ。2022年版ではクラスのプライベートフィールド宣言、Array.prototype.at()Object.hasOwn()、Top-level await など、現代的なWebアプリ開発に不可欠な機能が正式に仕様化された。

Microsoft TeamsのWebアプリはReact/TypeScriptベースの大規模SPAであり、こうした最新JS仕様を活用することでコードの簡潔化・パフォーマンス向上が見込める。今回の要件変更は、Webアプリの内部実装を近代化するうえで避けられないステップといえる。

影響を受けるブラウザバージョン

ES2022への非準拠が確認されている主なブラウザバージョンは以下のとおりだ。

ブラウザ 影響を受けるバージョン

Google Chrome 94以前

Microsoft Edge 94以前

Mozilla Firefox 93以前

Safari 15.4以前

自動更新が有効な一般的なWindows 10/11環境やmacOS環境であれば、現時点ですでに対応済みのバージョンが動作しているはずだ。問題が起きやすいのは、以下のような管理下環境だ。

  • グループポリシーやMDMでブラウザの自動更新を意図的に無効化している環境
  • 共有PC・キオスク端末など、管理者が手動でバージョン管理している端末
  • Internet Explorerの互換モードを常用しているレガシーイントラネット環境(EdgeのIEモードはChromium版Edgeのバージョンに依存するため、Edgeが古ければ同様に影響を受ける)

なぜ今、この変更が重要か

Teams Webアプリは、デスクトップクライアントのインストールが制限されているシンクライアント環境・Chromebook・Linuxマシンでの主要アクセス手段だ。このような端末はOSやブラウザの更新管理が手薄になりがちであり、今回の変更で突然Teams Webに繋がらなくなるケースが国内企業でも発生する可能性がある。

特に日本では「動いているから大丈夫」という運用が続いているレガシー端末が現場に残っていることも多い。今回の変更はそういった環境に対して、ブラウザ管理ポリシーを見直す契機となる。

実務での対応ポイント

1. Intuneを使ったブラウザバージョン棚卸し

Microsoft Intune(Endpoint Manager)を運用している環境であれば、デバイスレポートからブラウザバージョンを一覧抽出できる。「Chrome 94以前」「Edge 94以前」に該当する端末を洗い出し、優先的に更新計画を立てよう。

2. Teamsデスクトップクライアントへの移行検討

Teams Webを使っている主な理由がインストールポリシーの制約であれば、この機にTeamsデスクトップクライアント(新クライアント)への移行を検討する価値がある。デスクトップ版はブラウザのES仕様に依存せず、パフォーマンスも優れている。

3. 先手を打った社内周知

「Teams Webが突然使えなくなった」というヘルプデスクへの問い合わせ急増を防ぐため、社内ポータルや一斉メールで事前周知を行っておくことを強く勧める。IT部門が把握していても現場に伝わっていないケースが多い。

筆者の見解

今回のES2022要件化は技術的に筋の通った判断だ。ES2022は策定から4年が経過しており、モダンブラウザへの準拠はとっくに完了している。Microsoftがこのタイミングでレガシーブラウザのサポートを切ること自体は、むしろ遅すぎたくらいだと思う。

ただ、気になるのはエンタープライズ向けの変更告知の質だ。大企業ほど、ブラウザのバージョン管理は複数部署をまたぐ調整が必要になる。Message CenterやAdminポータルでの通知が十分早期かつ明確だったかどうか——この点は今後も改善を期待したい。Microsoftにはエンタープライズ対応力という強みがあるのだから、告知の丁寧さでもその強みを発揮してほしい。

日本のIT現場に目を向けると、こうした「要件変更に気づかず突然使えなくなる」という事態は、エンドポイント管理が属人化している組織で起きやすい。Intuneによる一元管理へ移行できていない場合、このような変更のたびに現場が混乱することになる。今回の件を棚卸しのきっかけにしてほしい。


出典: この記事は Microsoft Teams on the web requires ECMAScript 2022 compliant browsers from May 15, 2026 の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。