サプライチェーンアナリストとして世界的に知られるMing-Chi Kuo氏が2026年5月、AppleとIntelが共同でiPhone・iPad・一部Mac向けチップの初期生産をすでに開始していると報告した。これを米テックメディア「Tom’s Guide」のScott Younker記者がKuo氏のリポートをもとに伝えている。Appleが2020年に独自のApple Silicon(Mシリーズ)へ移行してからおよそ6年——まさかの再接近に業界が揺れている。

なぜこの提携が注目されるのか

Appleは2006年からIntelのチップを採用し、約14年にわたって深い関係を続けてきた。2020年の決別は完全なものに見えた。実際、macOS 26でIntel Mac向けのサポートが終了し、今年後半リリース予定のmacOS 27はIntel Macをまったくサポートしない。そのIntelが今度は「チップ製造(ファウンドリ)」という形でAppleと再びつながろうとしている。

Appleにとっては製造をTSMC一社に集中させるリスクを分散できる。地政学的な観点からも、台湾集中への懸念が高まる中でアメリカ国内製造能力を確保できるIntelとの連携は、単なるコスト計算を超えた戦略的意義を持つ。Intelにとっては自社製品事業が低迷する中、世界最高峰のチップ設計力を持つAppleから製造受注を得られる起死回生の機会となる。

Kuo氏の報告が示す「役割分担」

Kuo氏のリポートによると、製造されるチップのうち約80%がiPhone向けとされる。採用されるのはIntelの18Aノード——同社の最新プロセス技術で「Panther Lake」シリコンにも使われているものだ。

ただし搭載先はAppleの「低価格帯・レガシー向け」デバイスとされる。Tom’s GuideのYounker記者の分析では、廉価帯のiPhone(e系列)や新型MacBook Neoへの採用が有力視されており、TSMCはAppleの高性能プロセッサ供給シェアの90%を引き続き維持するという。現時点で見えてくる構図は以下の通りだ。

  • Pro・上位モデル → TSMC製(従来通り)
  • 廉価・ミッドレンジモデル → Intel 18A製(新規採用)

ウォール・ストリート・ジャーナルも先週、「1年間の交渉の末、予備的な合意に至った」と報じており、Kuo氏のリポートはそれを裏付けつつ、対象デバイスの詳細を補足する形になっている。

日本市場での注目点

現時点では、Intel製チップを搭載した製品がいつ日本で発売されるかは明らかになっていない。ただし日本でも人気の高いiPhone廉価モデル(e系列)やエントリーMacBookへの採用が示唆されているため、次世代のミッドレンジApple製品のシリコン選定が注目ポイントになる。

Intel Macを現役で使用している日本のユーザーには別の問題もある。今年リリース予定のmacOS 27ではIntel Macのサポートが完全に打ち切られる見通しのため、移行計画を今のうちに立てておく必要がある。

価格への影響については、Intel 18AのコストがTSMCと比べてどうなるかが今後の焦点だ。廉価モデルのコスト削減につながるのか、それともサプライチェーン分散コストとして吸収されるのか、現段階では断言できない。

筆者の見解

AppleがTSMC一極集中から脱却しようとしていることは、地政学的リスク管理として理にかなった判断に見える。台湾への製造集中が長期的な懸念として語られる中、米国内の製造能力を確保できるIntelとの連携には、純粋な経済合理性を超えた意味がある。

ただし留意すべき点がある。Intel 18Aノードが量産レベルで安定して歩留まりを維持できるかどうかは、まだ検証段階だ。Kuo氏は世界屈指の信頼性を持つアナリストだが、今回の報告はあくまで「初期生産開始」の段階であり、市場投入まで順調に進むかはIntel側の実力にかかっている。ここ数年のIntelの歩みを見ると、楽観視しすぎず、続報を慎重に追うのが賢明だろう。

廉価モデルから始めて段階的に展開するというアプローチは堅実だ。Appleが独自シリコンへ移行した際に見せた「まず確実な領域で実績を積んでから拡大する」という手順と重なる。もしIntelがこのチャンスをものにできれば、ファウンドリ事業の再建に向けた大きな転換点となりうる。次の半年間の動向から目が離せない。

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出典: この記事は Ming-Chi Kuo: Apple giving Intel a ‘once-in-a-generation window’ to manufacture iPhone, iPad and Mac chips の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。