Microsoft が2026年にMicrosoft 365の主要セキュリティ機能を標準化すると発表した。Defender for Office 365 Plan 1・URLタイムオブクリック保護・Intuneの機能強化が新たに標準装備となり、8月1日までに展開完了予定。同年7月1日には全世界で価格改定も実施される。
何が変わるのか
Microsoftは今回の変更を「プラットフォームの進化」と位置づけており、主に以下の3軸で機能が拡充される。
1. セキュリティ機能の標準化
これまでアドオン扱いだったプレミアムセキュリティ機能が、より多くのライセンスに組み込まれる。
- Microsoft Defender for Office 365 Plan 1 がE3を含む多くのライセンスに標準搭載
- Safe Links(URLタイムオブクリック保護)・Safe Attachments による自動適用ポリシーが全ユーザーへ
- フィッシング対策、マルウェアスキャン、脅威検出が標準機能に
- Security Copilot エージェントがDefender・Intune・コンプライアンスツールに統合され、検出・調査・対応を自動化
Safe Linksは、メールやTeams内のURLをクリックした瞬間に最終遷移先を検査する機能だ。従来は別途ライセンスが必要だったが、2026年8月以降は追加費用なしで有効になる。
2. デバイス管理の強化
Intuneの機能もライセンス階層を超えて拡充される。
- Intune Remote Help・Advanced Analytics・Intune Plan 2の一部がより多くのライセンスに含まれる
- E5限定だった特権管理・アプリガバナンス・Cloud PKIが下位プランにも展開
ハイブリッドワーク・リモートワーク環境でエンドポイント管理に苦労しているIT部門にとっては、追加投資なしで管理能力が向上する点が大きい。
3. AI機能のコア化とCopilot Chat
Microsoft 365 Copilot ChatがWord・Excel・PowerPoint・Outlook・Teamsなど主要アプリに組み込まれる。メール下書き支援・文書生成・データ分析・会議準備支援が標準的に利用できる形に近づく。
4. 価格改定(2026年7月1日〜)
Business・Enterprise(E3/E5)・Government・Nonprofitの各プランで価格が改定される。Microsoftは「拡充した機能の価値を反映したもの」としているが、具体的な改定幅は地域・契約形態によって異なる。
実務への影響――日本のIT管理者が今すぐ動くべきこと
ライセンスの棚卸しを急げ
7月の価格改定より前に契約更新が控えている組織は、今が最大の判断ポイントだ。E3からE5へのアップグレードが割安になるケースがある一方、すでにE5相当のアドオンを積み上げている組織は、今後の標準機能との重複を整理する好機でもある。
Safe Links・Safe Attachmentsは自動適用に備えよ
組み込み保護ポリシーが自動的に有効化されると、一部の既存ポリシーや業務フローと干渉する可能性がある。URLリライト動作の変更が社内の業務システムやSSOフローに影響しないか、事前の確認が必要だ。展開完了は8月1日予定なので、6〜7月中にテスト環境での検証を進めておきたい。
Intuneの未使用機能を掘り起こせ
「Intuneはとりあえず入っているが使っていない」という組織は多い。今回の拡充で、追加費用なしでAdvanced Analyticsや一部のリモートヘルプ機能が使えるようになる。エンドポイント管理のモダン化を後回しにしてきた組織には、動くきっかけになる。
ポイントソリューションの見直し
サードパーティのメールセキュリティ・URLフィルタリング・デバイス管理ツールを個別に契約している場合、M365標準機能と重複する部分を精査することでコスト削減の余地がある。「標準機能で十分か」を評価する際は、機能の深さと自社のリスク要件を照らし合わせること。
筆者の見解
セキュリティ機能の標準化という方向性は、正しい。ライセンスを買っただけで使われていないセキュリティ機能が山積みになっている組織を何十社も見てきた。Safe LinksやDefender Plan 1が自動的に有効になれば、「設定しなかったから保護されていなかった」という事故が減る。インフラとして当然備わっているべきものが、ようやく「デフォルトオン」に近づいている。
ゼロトラスト推進という観点からも、デバイス管理とIDベースのアクセス制御がより低い価格帯のライセンスに降りてくることは歓迎したい。ネットワーク境界頼みのセキュリティモデルは限界を迎えており、Intuneによるエンドポイント可視化と条件付きアクセスの組み合わせが「普通の姿」になっていくことは正しい進化だ。
ただ、価格改定とAI機能の抱き合わせについては冷静に見ておく必要がある。Copilot Chatがコアに組み込まれること自体は否定しないが、「組み込まれた=使いこなせる」ではない。AI機能の恩恵を本当に受けるには、データガバナンス・ライセンス管理・利用ポリシーの整備が前提になる。機能が増えた分だけ管理コストも増える、という現実から目を逸らさないでほしい。
Microsoftが統合プラットフォームとしての価値を強化しようとしていることは伝わる。セキュリティ・デバイス管理・生産性ツールを一つのプラットフォームで完結させる構想は、部分最適の積み重ねで疲弊している日本のIT現場に対する、一つの現実解になりうる。7月の価格改定前に、自社のライセンス構成を本気で見直す価値は十分にある。
出典: この記事は Microsoft 365 Is Changing in 2026: Enhanced Security Features Rolling Out の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。