Engadgetが2026年5月9日に報じたところによると、XboxファーストパーティスタジオのDouble Fineが労働組合の結成に向け動き出した。Psychonautsシリーズで知られる同スタジオの正規パートタイム・フルタイム従業員42名全員が、通信労働者組合(CWA:Communications Workers of America)への加盟を目的に、全米労働関係局(NLRB)へ申請書を提出したとのことだ。
なぜいまDouble Fineで組合なのか
Aftermath経由でEngadgetがまとめた情報によれば、組合結成の目的は「創造的卓越性、多様性と包摂、そして労働者の生活の質への取り組みを維持・強化するため」とされている。Double Fineは2019年にMicrosoftに買収されてから7年が経過しており、Psychonauts 2(2021年)、Keeper、Kilnといった作品をXbox Game Studiosの傘下でリリースしてきた。小規模・個性派スタジオとして長年知られてきた同スタジオが組合化に踏み切った背景には、大企業傘下に入ったことで生じる組織的変化への対応という側面もあると考えられる。
Microsoft傘下で広がる組合化の波
Engadgetの報道が指摘するように、Double Fineの動きはMicrosoft傘下スタジオにおける組合化の流れの一部だ。
- 2024年: World of WarcraftチームがBlizzard社内でCWAと組合を結成(500名以上)
- 2024〜2025年: OverwatchチームがBlizzardで全員参加型組合を結成(約200名)
- 2025年: ZeniMax Studios(The Elder Scrolls Onlineで知られる)のQAスタッフがMicrosoftと組合協定を締結
- 2025年8月: BlizzardのDiablo開発チーム450名以上がCWAへの加盟を選択
- 2026年5月: Double Fineの42名がNLRBに申請
CWAは「Microsoftが中立的立場をとり、労働者の組合結成権に一切干渉しないことに同意した」と評価している。
日本市場での注目点
日本国内では任天堂・ソニー・カプコン・スクウェア・エニックスなど大手ゲームスタジオが多数存在するが、こうした欧米型の組合活動はほぼ前例がない。日本の労働組合制度は欧米と構造が大きく異なり、企業別組合が主流であることが背景にある。一方で、ゲーム業界特有の「クランチ」(リリース前の過酷な残業)問題は国内外を問わず議論が続いており、開発者の労働環境を可視化・改善するムーブメントとして日本のゲーム業界も無視できない動きと言えるだろう。
Xbox Game Pass加入者の観点では、Double Fineのタイトルは引き続きGame Pass経由でプレイ可能であり、組合化が短期的にコンテンツ供給に影響するとは考えにくい。
筆者の見解
Microsoftが傘下スタジオの組合化に対して中立姿勢を貫いていることは、率直に評価したい。交渉の失敗や人材流出は長期的にプラットフォームの魅力を損なう。真正面から向き合う姿勢は正しい判断だ。
気になるのは、これだけの規模でユニオン化が連鎖していること自体が、Microsoft傘下に入ったことで生じた組織的・文化的な緊張感を映している点だ。Double Fineのような個性派スタジオの強みは、小さなチームが高い自律性を持って作品を作り上げる文化にある。それが揺らいでいるとすれば、「もったいない」と感じる。Microsoftにはその文化を守ったまま規模の恩恵を与えられる力があるはずで、正面から勝負できるポテンシャルは間違いなくある。
組合化が必ずしも対立を意味するわけではなく、透明性のある労使関係が創造性の土台になるという視点は、日本のゲーム・IT企業も参考にしてよい考え方だろう。
出典: この記事は Workers for Xbox studio Double Fine are forming a union の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。