米音楽機材コングロマリットのinMusicが、ドイツの音楽ソフトウェア大手Native Instrumentsを買収することが明らかになった。テクノロジーメディアのEngadgetが2026年5月8日に報じた。
なぜこの買収が注目されるのか
今回の動きが業界に衝撃を与えている最大の理由は、単なる企業統合ではなく「音楽制作の垂直統合」が完成に近づくからだ。
inMusicはすでに以下の著名ブランドを傘下に収めている。
- Akai Professional — MPC・MPKシリーズで知られる老舗DAWコントローラーメーカー
- Moog — アナログシンセの代名詞的存在
- M-Audio — コスパに優れたMIDIコントローラー・オーディオインターフェース
- Denon / Numark — DJシーンの定番ブランド
ここにNative Instrumentsが加わることで、MIDIコントローラーからソフトウェアシンセ、グルーブボックスまでを一手に握る企業体制が生まれる。さらにNI傘下のブランドも一括でinMusic配下に入る。
- iZotope — Ozoneをはじめとするマスタリング・ミキシングプラグイン
- Plugin Alliance — SSL・Neve等の名機エミュレーション
- Brainworx — 高品位なモデリングプラグイン
破産危機からの再出発
Engadgetの報道によれば、今回の買収はNative Instrumentsが続けていた「破産手続き」に終止符を打つものでもある。NI CEO・Nick Williams氏はブログ投稿の中で「取引完了まで数週間、事業は通常通り継続する」と明言しており、既存ユーザーのエコシステムへの影響は最小限に抑えられると見られる。
海外レビューのポイント——統合の期待と懸念
Engadgetのレポートは、今回の統合におけるハードウェアの重複問題を明確に指摘している。
期待できる点: inMusicはすでにNIとのパートナーシップを通じて一部のNIプラグインをAkai製品に対応させた実績を持つ。Engadgetは「Akai MPC XLなどのハードウェア上でNIのソフトウェアが動作する可能性が高い」と指摘しており、ハードとソフトの緊密な統合が加速するとの見方が強い。
気になる点: AkaiはMPCシリーズというスタンドアロン型グルーブボックスを展開しており、Native InstrumentsのMaschine+と製品カテゴリが完全に重複する。また、MIDIコントローラー分野でもAkai・NI・M-Audioが三つ巴の状態となるため、製品ラインの整理・統廃合が避けられない可能性があるとEngadgetは示唆している。
なお、Native InstrumentsはKomplete 26を直前にリリースしたばかり。190以上のデジタル楽器と18万種のプリセットを収録した大型バンドルで、新バージョンのシンセ「Abysynth」や更新されたピアノ音源・ボーカルサウンドスケープを含む。買収直前のリリースであり、製品開発は止まっていない。
日本市場での注目点
日本の音楽制作シーンにおいてもReaktor・Massive・Kontaktは広く使われており、プロ・アマ問わず多くのユーザーが存在する。
- 価格への影響: 現時点では価格変更の予告はないが、統合後のライセンス体系変更には注意が必要
- Komplete 26の入手: すでに国内でも販売されており、Amazon.co.jpや音楽機材専門店で入手可能
- Maschine+の行方: Akai MPCシリーズと競合するスタンドアロン機であり、製品の継続・統廃合については今後の動向を注視したい
- 将来の統合バンドル: iZotopeやPlugin Allianceを含めた包括的なバンドルが登場する可能性があり、DTMユーザーには長期的な朗報となりうる
筆者の見解
この買収は「部分最適の積み重ねが全体最適を妨げていた」という音楽業界の構造的課題への一つの答えと言える。AkaiもNative InstrumentsもiZotopeも、それぞれのジャンルで最高レベルの製品を持ちながら、別々の会社に分散していたことでユーザーは複数のエコシステムを使い分けてきた。一傘下に集まることで、ハードとソフトの緊密な連携がようやく実現への道を歩み始める。
一方で懸念されるのは「内部競争の消滅」だ。Akai MPC XLとMaschine+が同じ親会社の製品になったとき、互いを高め合う緊張感が保たれるかどうか。統合後の製品戦略がユーザーにとって真に良いものになるかは、引き続き見届けていく必要がある。
関連製品リンク
Akai Professional MPC XL Stand Alone Music Production Center
Native Instruments Maschine Plus スタンドアロンプロダクション・パフォーマンス楽器
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出典: この記事は InMusic will acquire Native Instruments, putting it under the same umbrella as Akai の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。

