トランプ政権が最高裁の判断を受けて「代替措置」として発動した10%グローバル関税について、米国際貿易裁判所が2026年5月8日(現地時間)、これも違法との判断を下した。Ars Technicaが詳報している。
なぜこの判決が注目されるのか
最高裁が別の緊急関税を違法と認定した翌日、トランプ大統領は1974年通商法第122条という「数十年間一度も発動されたことのない」条文を根拠として、ほぼすべての輸入品に10%の追加関税を課した。ところが今回、国際貿易裁判所も2対1の多数意見でこれを違法と認定した。トランプ大統領は即座に「また別の方法でやる」と発言しており、テック業界は次の一手に神経をとがらせている。
裁判所の判断のポイント
Ars Technicaの報道によれば、首席判事マーク・A・バーネット氏と判事クレア・R・ケリー氏は、トランプ政権が「国際収支赤字(balance-of-payments deficit)」の定義を恣意的に書き換えたと判断した。
- 第122条の本来の趣旨: 同法が制定された当時、ドルは金本位制に連動していた。その文脈から見て、現代的な意味での貿易赤字を「国際収支赤字」と読み替えるのは無理がある、という解釈が通った
- 「都合のよい柔軟なフレーズ」論の否定: トランプ政権の顧問たちも「解釈の余地がある表現」と認識していたことが裁判で明らかになり、これが逆に仇となった
- 限定的な救済: 今回の判決は全国一律の差し止めではなく、提訴した輸入業者への還付のみ。関税の影響で価格上昇を被った消費者など第三者が追加提訴に動く可能性も指摘されている
日本市場での注目点
今回の判決は米国内の話だが、日本のテック業界にとっても他人事ではない。
輸出コストの不透明感が継続: トランプ政権は「別の法的根拠を使う」方針を公言している。スマートフォン・PC・半導体部品など電子機器の米国向け輸出コストを巡る不確実性は、今回の判決では払拭されない。
日本メーカーへの影響: ソニー、任天堂、村田製作所のように米国向け輸出の比率が高い日本企業は、次の関税措置がどの法的根拠に基づくかを注視し続けなければならない状況だ。
米テック株への波及: AppleやNVIDIAなどアジアのサプライチェーンに依存する米テック大手の収益見通しにも、長期的な影響が残る。日本から米国株に投資するエンジニア・ITプロも動向を把握しておきたい。
筆者の見解
今回の展開で改めて浮き彫りになったのは、関税措置の「法的な脆弱性」そのものよりも、テック業界が直面している「計画不可能なコスト環境」の深刻さだ。
半導体や電子機器の調達コストは、製品ロードマップや価格設定に数年単位で影響する。ところが現在の米国では「裁判所に止められたら別の条文で出し直す」という運用が繰り返されており、メーカーや調達担当者は製品コストを確定しにくい状態に置かれ続けている。
日本のエンジニアや購買担当が今できる現実的な対応は、コスト変動を吸収できるサプライチェーンの多元化シナリオを事前に持つことと、米中首脳会談(5月中旬予定)の行方を定点観測することだろう。「止められたら別の道」という姿勢が続く限り、この不確実性はすぐには終わらない。
出典: この記事は Court rules Trump’s 10% tariff is just as illegal as the tariff it replaced の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。