Microsoftが、Azure上で提供する旧世代VMインスタンス17シリーズについて、2026年7月1日以降の新規予約受付を停止すると発表した。そのうち13シリーズは2028年に完全廃止となる予定だ。2010年代に登場した古いIntel CPUで動作するこれらのVMは、現行世代への移行が求められる。予約期限が迫っている組織も、オンデマンドで使い続けている組織も、今すぐ移行計画を立てるべき時期に来ている。
廃止対象:2つのフェーズを押さえておく
今回の発表では、対象VMシリーズは2つのフェーズに分かれている。
フェーズ1:2026年7月1日から予約停止+2028年完全廃止(13シリーズ)
Av2、Amv2、Bv1、D、Ds、Dv2、Dsv2、F、Fs、Fsv2、G、Gs、Ls、Lsv2の各シリーズが対象。2026年7月1日以降、1年予約(Reserved VM Instances)の新規購入・更新ができなくなる。さらに2028年5月および11月に完全廃止が予定されている。
フェーズ2:2026年7月1日から予約停止、廃止時期は2028年以降(4シリーズ)
Dv3、Dsv3、Ev3、Esv3の4シリーズは、1年・3年の予約が新規購入・更新できなくなるが、VMそのものは2028年を超えても稼働し続ける予定だ。
なぜ今このタイミングか:世代間の開きが大きくなりすぎた
廃止の背景にあるのは、対象VMが動作するIntel CPUの世代の古さだ。
- Haswell(第4世代Xeon):2013年リリース
- Skylake(第6世代Xeon):2015年リリース
- Cascade Lake(第3世代Xeon Scalable):2019年リリース
Microsoftは現在、第7世代のVMを提供しており、廃止対象の第3世代VMとの間には4世代もの差がある。新しい世代のCPUはコア密度が高く、消費電力が低い。同じ物理サーバーにより多くのVMを収容できるため、Microsoftにとってのコスト効率が明確に改善する。空いたデータセンタースペースをAI向けハードウェアに転用できるという側面も透けて見える。
公式には廃止理由が明示されていないが、このような世代交代はクラウドプロバイダーが定期的に行う「ハードウェアライフサイクル管理」の一環だ。クラウドは物理インフラである以上、古いハードウェアを永久に維持することはできない。
移行の選択肢
Microsoftは移行先として主に以下を推奨している。
- 現行世代VM(Dv5、Ev5など):同等の用途で性能・コスト効率が大幅に改善
- Azure Savings Plan:特定のVMシリーズに縛られない柔軟な割引オプション。Reserved VM Instancesよりも移行の自由度が高い
「Retired VM Sizes Migration Guide」に詳細なマッピングが公開されているため、現在使用中のVMシリーズを確認したうえで移行先を検討すると良い。
実務への影響:「2028年はまだ先」と思わないこと
今すぐ確認すること
- Azure Portalで現在使用中のVM SKUを棚卸しし、廃止対象が含まれていないか確認する
- Reserved VM Instancesの有効期限を把握する(期限後の更新が不可になる)
- 既存の予約がある場合、2026年7月1日以前に必要であれば更新手続きを済ませておく
移行計画の立て方
ワークロードの移行は、サイズ変更だけで済む単純なケースから、アプリケーションの動作確認や負荷テストが必要な複雑なケースまで様々だ。2028年まで約2年あるように見えるが、数十・数百台規模の環境では計画・テスト・本番移行に相応の時間がかかる。特に稼働時間に制約がある業種(金融・医療・製造など)は、早めにプロジェクト化しておくことを強く勧める。
Azure Savings Planへの切り替えも検討価値あり
Reserved VM Instancesは特定のVMシリーズにコミットするため、今後の世代交代でも同様の問題が繰り返される。Azure Savings Planはコンピューティング利用量に対するコミットメントであり、VMシリーズを問わず適用できる。長期的な柔軟性という観点では、今回の移行タイミングに合わせてSavings Planへの切り替えを検討する価値がある。
筆者の見解
クラウドを使い始めた当初、「オンプレのようなハードウェア更新サイクルから解放される」という触れ込みを信じていた方も多いだろう。しかし現実には、クラウドにも確実にライフサイクルがある。ただし、これはAzureの弱点ではない——むしろ健全な進化のサインだと筆者は捉えている。
10年以上前のCPUで動くVMを使い続けることは、ユーザー側にとってもリスクだ。パフォーマンス、セキュリティパッチの適用範囲、エネルギー効率。いずれも新世代のハードウェアに見劣りする。Microsoftが2年間のリードタイムを設けているのは、顧客が計画的に動けるだけの時間を確保しているということでもある。
「道のド真ん中を歩く」という観点で言えば、今回の移行はむしろ環境を標準化する好機だ。古いシリーズが混在した状態のまま運用し続けるより、現行世代に統一したほうが管理の複雑性が下がる。Reserved VM Instancesに縛られているなら、今後の変化に追従しやすいAzure Savings Planへの乗り換えも合わせて検討してみてほしい。
2028年の廃止を「まだ先の話」と棚上げにするのが一番危険な対応だ。今がちょうど計画を始める適切なタイミングである。
出典: この記事は Microsoft to stop taking reservations for 17 Azure VM flavours, kill 13 in 2028 の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。