Microsoft 365 Backupのグラニュラーリストア(ファイル・フォルダ単位の個別復元)が、2026年4月29日にGeneral Availability(正式提供)に到達した。SharePoint OnlineおよびOneDrive for Businessのバックアップから、サイト全体を復元することなく特定のファイルやフォルダだけを取り出せるようになった。5月初旬には世界規模での展開が完了する予定だ。

サイト全体復元からの脱却

Microsoft 365 Backupは2024年7月31日にGAとなった製品だが、発売当初からSharePoint・OneDriveの復元には大きな制約があった。サイト全体またはOneDriveアカウント全体を丸ごと戻すしかなかったのだ。Exchange Onlineのメールボックスでは差出人・件名・日付などでフィルタリングできたのに対し、SharePointとOneDriveには同等の粒度がなかった。

今回のグラニュラーリストアでは、SharePoint Backup Administrator権限を持つ管理者がバックアップのスナップショットを開き、内容をブラウズ・検索して特定のファイルやフォルダだけを選択して復元できるようになった。

知っておくべき技術的詳細

  • 復元ポイントの粒度: 直近14日間は日次、それ以降は週次のスナップショットが利用可能。なお、サイト全体復元は直近14日間について10分RPOが適用されるが、グラニュラーリストアにはこの細かいRPOは適用されない点に注意が必要
  • 必要なロール: SharePoint Backup AdministratorロールはSharePoint Administratorとは別ロールだ。サイト全体復元と同じロールが引き続き管理する
  • 料金: 既存通り、Azure Syntex課金プロファイル経由でUS$0.15/復元可能GB/月の従量課金モデル
  • 保存期間: 引き続き12ヶ月固定

重要な注意点:復元先は「新規場所」

現時点では、復元したファイルはもとの場所に上書きされるのではなく、新しい場所(新規サイト等)に配置される。ユーザーが誤って削除したファイルを元のフォルダに戻したい場合は、復元後に手動でコピー・移動する手間が残る。

In-placeリストア(元の場所への直接復元。競合時はFail・Rename・Replaceのポリシーも選択可)はロードマップのItem 464991として予告済みだが、現時点では未提供だ。

実務への影響

サードパーティバックアップとの比較軸が変わる

これまで「M365 BackupはSharePoint/OneDriveがサイト単位でしか戻せない」ことが、Veeam・AvePoint・Draviaなどのサードパーティ製品を継続採用する大きな根拠の一つだった。グラニュラーリストアのGA到達でその差は大きく縮まった。

とはいえ、製品選定の見直しにあたっては以下の観点で引き続き比較することを勧める。

  • RPO/RTO要件: グラニュラーリストアの復元ポイントは日次スタート。より細かい粒度(数時間単位など)が要件なら、サードパーティ製品が依然有利
  • In-placeリストア: ロードマップ予告のみでまだ未提供。運用フローへの影響を事前に文書化しておくこと
  • 保存期間ポリシー: 12ヶ月固定が法規制や社内ポリシーと合致するか確認

管理者が今すぐやること

  • SharePoint Backup Administratorロールの棚卸し: 誰がこのロールを持つか、適切な権限分離がされているか確認する
  • 復元手順の更新: 「個別ファイルを戻す際は新規場所経由で手動移動が必要」という前提をRunbookに明記する
  • コスト比較の再実施: 現行のバックアップツールの月額実績とMicrosoft 365 Backupの従量課金の試算を改めて比較し、移行可否を判断する

筆者の見解

率直に言えば「ようやく」という感想だ。グラニュラーリストアはサードパーティ製品が何年も前から当たり前に備えていた機能であり、GA当初から「当然ある」と思っていた管理者も多かったはずだ。18カ月かかったのは、正直もったいないと思う。

ただし、ここからが重要な視点だ。Microsoftはバックアップデータをテナントのリージョン外に一切出さない設計を徹底している。この「データが国境を越えない」安心感は、グローバルデータセンターを活用するサードパーティ製品では担保しにくい部分であり、日本の特定業種では決定的な差になりうる。

In-placeリストアが実装されれば、中小規模テナントの多くにとって「Microsoft 365 Backupだけで十分」という判断が現実味を持ってくる。Microsoftにはその「最後の一手」を速やかに届けてほしい。この分野で正面から勝負できる力は十分に持っているのだから、あとは実行のスピードだ。


出典: この記事は Granular Restore for Microsoft 365 Backup Reaches General Availability の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。