2026年初頭、中国AI各社が相次いで大型オープンウェイトモデルを公開した。AlibabaのQwen3.5シリーズ(最大397Bパラメータ)、ZhipuのGLM-5(744B)、MiniMaxのM2.5、StepFunのStep-3.5-Flashと、一ヶ月足らずの間に複数の最前線モデルが登場した。「オープンウェイト界隈はもう中国勢が主役」という声が現実味を帯びてきた。

Qwen3.5──幅広い用途に使えるラインナップ

Alibabaが公開したQwen3.5は、0.8Bから27B(密結合)と35B-A3Bから397B-A17B(MoE)まで揃う大型ラインナップだ。全モデルがマルチモーダル対応で、デフォルトで推論(リーズニング)機能を有効化している。

前バージョンから顕著に改善された点は以下の通り:

  • 指示追従性の向上:より自然で意図に沿った応答が得られる
  • 多言語性能の向上:日本語を含む多言語タスクでの精度改善
  • Qwen-Nextアーキテクチャ:GDN(Gated Dynamic Normalization)レイヤーを採用

一方で注意点もある。特に小規模モデルは「考えすぎ(overthinking)」傾向が残る。チャットテンプレートでリーズニングをオフにすることで抑制できるため、用途に応じた設定調整が必要だ。

GLM-5──需要急増で価格改定という異例の事態

ZhipuのGLM-5は744B-A40BのMoEモデルで、公開直後にコーディングプランの料金が値上がりする事態になった。需要が供給を上回った結果であり、実際に使われているモデルだという証明でもある。技術レポートも同時公開されており、アーキテクチャの詳細を確認できる。

MiniMax M2.5──小さくても侮れない

MiniMax M2.5は相対的に小さなモデルながら、GLM-5やKimi K2.5と競合できる性能を示している。コミュニティでの評価も高く、コスト効率を重視するユースケースで有力な選択肢となっている。

RAM指標が示す「話題性と採用率の乖離」

今号から導入された「Relative Adoption Metrics(RAM)」は、同クラスのモデル間でダウンロード数を正規化する指標だ。興味深いことにDeepSeek V3.2が過去のリリースと比べて大幅に低いスコアを記録している。話題性と実際の採用率は必ずしも一致しない、という現実を数字が示している。

実務への影響

オープンウェイトモデルの実務活用において、判断軸は主に3点だ。

①コスト構造の変化 大規模MoEモデルはAPIコストではなくインフラコストで勝負する。自社で運用できるエンジニアリング力があるか、クラウドのマネージドサービスで回すか。この選択が実コストを左右する。

②用途に合ったモデルを自分で確かめる RAMスコアが示す通り、話題のモデルが自分のユースケースに合うとは限らない。手元で動かして確かめるプロセスを省略しないことが重要だ。

③日本語性能の個別検証 Qwen3.5は多言語対応の強化を明示しているが、日本語での品質は用途ごとに検証が必要だ。専門用語や敬語・丁寧語の扱いは特に要確認ポイントとなる。

筆者の見解

中国AI勢のオープンウェイト攻勢は、もはや「キャッチアップ」ではなく「フロンティアそのもの」になりつつある。多様なモデルが使えるほどエンジニアの選択肢は広がり、競争が健全に機能しているという意味で歓迎すべき状況だ。

ただ、情報を追いかけることと実際に成果を出すことは全くの別物だ。毎月のように大型リリースが続く今、「最新モデルに乗り換え続ける」よりも「手元のワークフローで実際に動かして成果を出す」ことに集中するほうが、長期的には大きなリターンをもたらすと筆者は考えている。

今号で特筆したいのがOpenThinker-Agent-v1の登場だ。SFTとRLデータを公開し、ターミナルベースのエージェントタスクに本格的に取り組んでいる。単発の質問・回答ではなく、エージェントが自律的にループで判断・実行・検証を繰り返す設計。これこそが次のフロンティアの核心であり、モデルサイズ競争よりも一段注目に値すると思っている。

日本のIT現場では、オープンウェイトモデルの自社運用に本格着手できている組織はまだ少ない。しかし規制業種でのデータ主権要件やクラウドコスト削減の観点から、この選択肢は着実に現実味を増している。最前線の動向を横目で追いながら、「自社に適用できる形」を今から模索し始めるタイミングが来ている。


出典: この記事は Latest open artifacts (#19): Qwen 3.5, GLM 5, MiniMax 2.5 — Chinese labs’ latest push of the frontier の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。