リモートワークが定着して数年が経つが、「テレワーク中の生産性をどう担保するか」という問いはいまも管理職を悩ませ続けている。今回取り上げるのは少し特殊なケースだ。「自分だけが参加している会議を意図的にスケジュールし、在席しているように見せかけているのではないか」——そんな疑念を持つ経営層からの依頼に応えるべく、PowerShellを使ってTeamsのオンライン会議レポートを生成し、一人参加の会議を特定する方法が紹介された。

なぜTeamsの会議データが取れるのか

Microsoft 365の管理者は、Teams会議のメタデータ——開催者、参加者数、開始・終了時刻、会議の種別——をMicrosoft Graph APIやExchange Online PowerShellモジュールを通じて取得できる。会議カレンダーアイテムに紐づく情報と、実際に参加したユーザーのテレメトリを組み合わせることで、「スケジュールされていたが誰も参加しなかった会議」「主催者のみが参加した会議」を分類することが可能になる。

PowerShellによる実装の流れ

おおまかな実装ステップは以下の通りだ。

  • Exchange Online PowerShellへの接続: Connect-ExchangeOnline でテナントに接続する
  • 会議レポートの取得: Unified Audit Log または Graph API の /communications/callRecords エンドポイントを利用して、指定期間内のTeams会議ログを抽出する
  • 参加者数でフィルタリング: 参加者が1名(主催者のみ)の会議を抽出するフィルタを適用する
  • 結果のエクスポート: Export-Csv でスプレッドシートに出力し、管理者や人事部門が確認できる形にする

注意点として、Graph APIの callRecords は一定の保持期間(通常60日)があり、組織のデータポリシーによってアクセス可否が異なる。テナントの監査ログが有効になっているかを事前に確認しておく必要がある。

実務での活用ポイント

日本のIT管理者がこのスクリプトを導入する際にポイントとなる点をまとめる。

  • 監査ログの有効化を最初に確認: 多くの中小テナントでは監査ログがデフォルトで無効になっているケースがある。Microsoft 365コンプライアンスセンターで Set-AdminAuditLogConfig を確認しよう
  • 一人会議が必ずしも「サボり」ではない: 1対1の練習、録画目的、テスト配信など、正当な理由の一人会議も存在する。単純な件数で判断せず、開催時間帯・頻度・当該ユーザーの業務内容と照らし合わせた文脈判断が必要
  • Human Resourcesと連携した運用プロセスを先に決める: ツールだけ作って「さあ使おう」では意味がない。どの閾値を超えたら誰に報告し、どう対処するかを事前に人事・法務と合意しておくこと
  • 従業員へのクリアな開示: 日本の労働法的観点からも、業務用デバイス・サービスの利用状況を監視している旨を就業規則や利用ポリシーに明記することが前提となる

「在席偽装」問題の本質

テクニカルな話を少し離れると、「一人会議スキャナー」が必要になる状況そのものが、マネジメントの設計ミスを示唆している。アウトプットで評価できていれば、会議の在籍状況を見張る必要はない。ツールの整備と並行して、成果ベースの評価体系を見直す契機にしてほしい。

筆者の見解

技術的には非常にシンプルに実装できる内容だが、「この問いが立てられること自体」に注目したい。

TeamsをはじめとするMicrosoft 365の管理ツールは、管理者が組織の利用状況を可視化するための優れたAPIエコシステムを持っている。その点はしっかり評価したい。PowerShell一本で会議ログを引き出してCSVに落とせる——これはM365の統合プラットフォームとしての強みが生きている場面だ。

一方、「在席確認のための一人会議」という問題が経営課題として上がってくること自体、リモートワーク運用の設計にほころびがあるサインだ。テクノロジーで監視を強化するよりも先に、何をアウトプットとして評価するかを明確にする方が根本的な解決になる。ツールは問題を「見える化」するが、「解決」はしない。

Microsoft 365はこういった分析・可視化の基盤として使い倒せる余地がまだまだある。組織の生産性可視化という文脈でPowerShellとGraphを組み合わせた管理施策を整備しているIT管理者は、引き続きこの方向性を深掘りする価値がある。


出典: この記事は How to Report Specific Teams Online Meetings の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。