カナダ・マニトバ州の首相Wab Kinew氏が、子どもに対するSNSおよびAIチャットボットの利用禁止を提案したとEngadgetが2026年4月26日に報じた。詳細はいまだ不明確な部分が多いものの、カナダ全土で拡大する子ども向けデジタル規制の流れを象徴するニュースとして関心を集めている。
提案の概要──具体策は白紙のまま
Engadgetの報道によると、Kinew首相は4月26日のチャリティーイベントで本提案を発表し、「いいねを稼ぐため、エンゲージメントを高めるため、金を稼ぐためだけに子どもたちに最悪なことをしている。私たちの子どもは売り物にはならない」とスピーチした。
ただし、禁止対象の年齢・施行時期・執行方法といった核心的な内容は一切明かされていない。CBCはKinew首相がスピーチ後に記者対応を行わなかったと伝えており、提案はまだ初期段階と見られる。
カナダ全体に広がる規制の議論
マニトバ州の動きは孤立した動きではない。自由党(Liberal Party of Canada)もモントリオールでの全国大会で、16歳未満のSNS・AIチャットボット利用を制限する提案を支持する決議を行った。さらに一部の提案では14歳未満を対象とするものもあり、先行してSNS禁止を実施したオーストラリアよりも踏み込んだ基準が議論されている。トルコをはじめ複数の国が同様の規制を検討・導入しており、子どものデジタル環境をめぐる政策論争は国際的な潮流となっている。
実効性への疑問──先行事例が示す「禁止の限界」
Engadgetが紹介したMolly Rose Foundationの調査では、「禁止されたプラットフォームに依然として大多数の10代がアカウントを持つか、回避策を見つけている」という結果が示されている。オーストラリアが法的禁止を施行したにもかかわらず実態として利用が続いている状況は、立法だけで問題が解決しないことを浮き彫りにしている。
日本市場での注目点
日本でも、子どものSNS利用や生成AI活用をめぐる議論は教育現場を中心に活発化している。文部科学省は学校でのAI活用ガイドラインの策定を進めているが、カナダのような法的禁止措置は現時点では議論の俎上に乗っていない。
日本の親御さんや教育関係者にとって重要なのは、各国の政策論争を「禁止か容認か」の二項対立ではなく、「どのような設計なら子どもに安全なデジタル環境を提供できるか」という視点で捉えることだろう。カナダやオーストラリアの先行事例は、日本が制度設計を考える上での貴重な参考事例となる。
筆者の見解
Kinew首相の言葉には、子どもの安全を守りたいという誠実な思いが感じられる。その姿勢自体は評価できる。一方で、法律で禁止すれば問題が解決するというアプローチには、根本的な疑問が残る。
オーストラリアの事例が示すように、禁止のみのアプローチは「公式のルートを遮断する」だけで、子どもたちは別の手段で同じ場所にたどり着いてしまう。むしろ考えるべきは、子どもが安全にデジタルツールを使える仕組みを制度として整え、その公式の手段が最も便利で安心だと感じられるような設計にすることではないか。
AIチャットボットについては特に、「使うな」という禁止よりも「こう使えば安全・有益」という教育的アプローチの方が長期的な実益がある。世界各国で先行事例が積み上がっていくなかで、日本がどのような政策選択をするかは教育・テクノロジーインフラに大きく影響する。禁止と活用の二択ではなく、安全な活用を前提とした制度設計の議論を期待したい。
出典: この記事は Canadian premier wants to ban social media and AI chatbots for kids in Manitoba の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。