SurfsharkがVPN業界に新プロトコル「Dausos」を投入した。米テックメディアTom’s GuideのライターJoe Chivers氏が実際にベータ版を日常使いで検証し、詳細なレポートを公開している。名称はリトアニア語の「天国」に由来しており、Baltic神話にちなんだ命名だという。現在はMac App Store経由でダウンロードできるSurfshark Macアプリのベータ機能として提供中だ。
Dausosとは——セッション専用トンネルと量子セキュア設計
SurfsharkはDausosについて、現行VPNプロトコル比で最大30%の速度向上を謳っている。最大の技術的特徴は「セッションごとに専用トンネルを確立する」設計だ。多くのVPNプロトコルは複数ユーザーがトンネルリソースを共有する構造を持つが、Dausosは各セッションを完全に独立させることで他ユーザーの影響を排除し、安定したパフォーマンスを狙っている。
セキュリティ面でも重要な特徴がある。量子コンピュータによる将来的な暗号解読リスクに備えた「ポスト量子暗号(Post-quantum encryption)」を採用しており、独立系セキュリティ監査機関Cure53による第三者監査も完了済みだ。VPN選択において第三者監査の有無は信頼性を測る重要な基準であり、この点は高く評価できる要素といえる。
Tom’s Guideレビュー:波乱のスタートから実用域へ
Tom’s GuideのJoe Chivers氏のレビューによると、4月16日の初回リリース時の体験は深刻な問題を抱えていた。Google検索は動作するものの、検索結果のリンクをクリックしてもページが一切読み込まれない状態が続いたという。「URL欄の青いプログレスバーが数分間まったく動かなかった」と同氏は記している。
原因はMTU(Maximum Transmission Unit:パケットの最大転送単位)の設定ミスだった。TechRadarも同様の問題を報告しており、Dausosが送出するパケットサイズが経路上で許容されるサイズを超え、パケットがドロップされていたとみられる。この状態では既存の確立済み接続(iMessageなど)は動作するものの、新規接続が必要なブラウジングは実質的に不可能だったとレビュアーは述べている。
翌17日にバージョン4.27.1がリリースされ問題は修正された。Chivers氏は「修正後の体験は前日と雲泥の差」と評しており、速度テストではWireGuardとほぼ同等の結果が出たとのことだ。「WireGuard比30%高速」という公式の謳い文句ほどの差は確認できなかったとしているが、量子セキュア設計を実現しながらWireGuard水準のパフォーマンスを維持している点は、レビュアーにとって予想以上の結果だったと記されている。
日本市場での注目点
2026年4月時点では、DausosはMac App Store経由のSurfshark Macアプリのみで利用できるベータ機能だ。Windows・iOS・Androidへの対応は今後のロードマップに委ねられており、Mac以外のプラットフォームユーザーはしばらく待つ必要がある。
価格面ではSurfsharkは2年間プランで月額約1.78ドル(税前)から提供されており、業界内でもコストパフォーマンスの高いサービスとして知られる。日本からも公衆Wi-Fi利用時のセキュリティ確保やリモートワーク環境での通信保護といった用途で活用可能だ。
競合のNordVPNやExpressVPNと比較した際、量子セキュアプロトコルを独自開発しCure53監査付きで提供している点はSurfsharkの明確な差別化要素だ。量子コンピュータによる実用的な脅威はまだ先の話とはいえ、長期的な通信保護を意識するセキュリティ意識の高いユーザーにはアピールポイントになりうる。
筆者の見解
Dausosは「注目の発表→初期バグ→迅速な修正」という、ベータリリースが辿りがちな道をそのまま歩んだ。リリース品質として及第点とは言いがたいが、問題報告から翌日修正というレスポンスは評価に値する。
技術的な観点から注目したいのは、速度面でWireGuardと同等を保ちながらポスト量子暗号を実現した設計だ。「速度か安全か」のトレードオフを回避しようという意欲は見える。現時点では量子コンピュータの脅威はまだ理論的なレベルだが、インフラとして今から対応しておくことは将来的な視点で正しい方向性だと思う。
ただし、現状はMacのベータ版のみ。「真に実用的な選択肢」と呼べるかどうかは、Windows・モバイル対応が揃った段階で改めて評価すべきだろう。セキュリティ重視でMacを使っているユーザーであれば、試してみる価値のある段階には来ている。
出典: この記事は I put Surfshark’s new Dausos protocol through its paces – after a false start, it’s now a serious new option の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。