米WIREDのMolly Taft記者が2026年4月23日に報じた調査によると、OpenAI、Meta、Microsoft、xAIなど米国を代表するAI企業のデータセンターキャンパスに関連する天然ガスプロジェクトが、年間1億2,900万トン以上の温室効果ガスを排出する可能性があることが明らかになった。この数字はモロッコが2024年に排出した温室効果ガスの総量を上回る。
なぜこの問題が今注目されるのか
WIREDが各州の大気汚染許可申請書類を分析した結果、米国各地11カ所のデータセンターキャンパスに関連する大規模天然ガスプロジェクトが特定された。
注目すべきは「ビハインド・ザ・メーター電力(behind-the-meter power)」と呼ばれる手法の急増だ。データセンター事業者は公共電力網への接続待ちが長期化する中、電力会社を介さず自前の発電設備を整備する方向に動いている。クリーンエネルギー調査会社Cleanviewの創設者Michael Thomas氏はWIREDの取材に対し、これを「排出量の狂気的な加速」と表現し、「石炭や天然ガスを退役させる方向に向かっていると思っていたのに、また新たな山を登っている感覚だ。非常に怖い」と語っている。
WIREDが報じた主な事例
xAI「Colossus」キャンパス
テネシー州メンフィスに建設されたxAIの最初のデータセンターキャンパス「Colossus 1」は、今回の問題の最も象徴的な事例だ。WIREDによれば、Colossus 1(メンフィス)とColossus 2(ミシシッピ州サウスヘブン)の両キャンパスに設置された天然ガスタービンはそれぞれ年間640万トン以上のCO₂換算排出量を持つ可能性がある。合計すると、平均規模の天然ガス発電所約30基分に相当し、150万世帯分の電力を賄えるエネルギーに匹敵するという。
低所得の黒人コミュニティが周囲に広がるメンフィスのキャンパスでは住民による抗議活動が起き、WIREDの報道時点ではNAACPがxAIに対して訴訟を提起している。
Microsoftの西テキサスプロジェクト
WIREDによれば、Microsoftはシェブロンが支援する西テキサスの天然ガスプロジェクトからの電力購入を検討しているとされる。この単一プロジェクトだけで年間1,150万トン以上の温室効果ガスを排出する可能性があり、ジャマイカ全土の年間排出量を超える数字だとWIREDは指摘している。
日本市場での注目点
日本でもAIデータセンターへの投資が急加速している。政府のデジタル化推進策やクラウド需要の拡大を受け、国内外の大手テクノロジー企業が日本各地にデータセンターを新設・拡張中だ。Microsoftも大規模な日本投資計画を発表しており、この問題は対岸の火事ではない。
日本のテクノロジー業界が注視すべき点は以下のとおりだ。
- 電力調達の課題: 電力不足や再生可能エネルギー移行が遅れる中、天然ガス依存が深まるリスク
- 規制動向の波及: 欧米での環境規制強化が日本市場にも影響を及ぼす可能性
- カーボンニュートラル目標との矛盾: 各社が掲げる脱炭素目標とデータセンター拡張計画の整合性が問われる局面
筆者の見解
WIREDの今回の調査は、AIブームの裏側にある環境コストを具体的な数字で可視化した点で大きな意味を持つ。
Microsoftは2030年までにカーボンネガティブを達成するという野心的な目標を掲げてきた。その姿勢自体は評価に値する。しかし今回報じられた西テキサスの天然ガスプロジェクトへの関与は、その目標と逆行しかねない。「エネルギーのポートフォリオアプローチで信頼性を確保する」という説明は理解できるが、年間1,150万トンという数字の重さと向き合う必要がある。
Microsoftにはその規模とリソースで、グリーンエネルギーの調達・開発を業界標準に引き上げる力があるはずだ。「インフラの信頼性確保のためやむを得ない」という論理に流れるのはもったいない。正面から再生可能エネルギーの確保に全力を注げる体力と実績をMicrosoftは持っている。そういう姿勢で業界を引っ張ってほしいというのが本音だ。
AIインフラの急速な拡張は避けられない現実だが、「速く、安く、手軽に」という選択肢が長期的な環境コストを次世代に先送りしているならば、それは持続可能な成長とは言えない。日本のテクノロジー業界も、データセンター投資と環境コストの透明化を同時に進める姿勢が問われるフェーズに入っている。
出典: この記事は Greenhouse gases from data center boom could outpace entire nations の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。