Microsoftが Visual Studio Code 1.117 をリリースした。今回のアップデートで最も注目すべき点はカスタムAIモデルのネイティブサポートだ。GitHub Copilot の枠を超え、ローカルで動かすLLMや社内プライベートモデルをVS Codeのチャット機能に直接つなげられるようになった。AI開発ツールとしての汎用性が、大きく引き上げられたリリースと言っていい。

カスタムAIモデル接続——何が変わったのか

これまでVS CodeのCopilot Chat機能はMicrosoft/GitHubが提供するモデルを前提としていた。1.117からはOpenAI互換APIエンドポイントを設定に追加するだけで、任意のモデルをチャットUIに組み込める。

具体的には以下のケースで即座に恩恵を受けられる。

  • オンプレミスLLM活用: LM Studio や Ollama で動かすローカルモデル(Llama、Mistral、Phi等)をそのままコードアシスタントとして利用
  • プライベートAzure OpenAI利用: 自社テナントにデプロイしたモデルをVS Codeから直接使い、コードがMicrosoft側クラウドに一切流れない構成を実現
  • コスト管理: 重いタスクは有償モデル、軽い補完はローカルモデルと使い分けて費用を最適化

チャットUIのアニメーション改善

地味に見えて実は重要なのがCopilot Chatのレスポンス描画改善だ。1.116までの「ぶつ切り」で文字が出てくる挙動から、よりなめらかなストリーミング表示に変わった。長いコード説明を読んでいるときのストレスが減り、実際の体感速度が上がる。

ツールの「使い心地」は生産性に直結する。スペック表に出ない部分だが、1日に何百回も使うUIとして見れば決して軽視できない改善だ。

ターミナルの大規模修正

今回のリリースノートで「massive terminal fix」と表現されているだけあり、ターミナル統合に関する不具合が集中的に解消されている。具体的には以下が改善された。

  • シェル統合スクリプトとの競合問題
  • 複数ペインでのレンダリング乱れ
  • WSL(Windows Subsystem for Linux)環境での動作安定性

WindowsでWSLを業務利用しているチームにとって、これは特に嬉しいアップデートだ。

実務への影響——日本のエンジニアが押さえるべき3点

1. セキュリティ重視の組織でのCopilot代替構成

コードを外部サービスに送信したくない企業は少なくない。ローカルLLMへの接続が公式にサポートされたことで、「AIコーディング支援は使いたいが情報漏洩リスクが怖い」という二律背反を正面から解消できるようになった。まずはAzure OpenAI Serviceのプライベートエンドポイント構成から試してみることを勧める。

2. Azure OpenAI + VS Code の組み合わせ設計

自社のAzure OpenAIリソースをVS Codeのカスタムモデルとして登録するには、エンドポイントURL・APIキー・デプロイメント名の3点を設定するだけでよい。既存のAzure OpenAI環境があれば追加コストゼロで試せる。

3. ローカルモデルの実用性を今こそ評価する

OllamaとPhi-4-miniの組み合わせなど、オフライン環境でも動作する軽量モデルの品質は2025年に入って急速に向上している。この機会に社内PoC環境で比較評価しておくと、将来の選択肢が広がる。

筆者の見解

VS Codeチームは着実にいい仕事をしている。「エディタはVS Code」という前提がここまで世界中に定着したのは、機能追加の速さと拡張性のバランスが優れているからだ。

カスタムモデル対応は、単なる機能追加ではなく開発者がAIを選べる権利を取り戻す動きとして評価したい。特定のプロバイダーに縛られないオープンな姿勢は、エコシステム全体の健全な競争につながる。Microsoftがこの方向に舵を切っている点は、正しい判断だと思う。

ただ、正直に言えば「なぜそれをCopilot自体でやらないのか」という問いは残る。VS Codeレベルでの柔軟性が増す一方で、Copilot製品としての体験の一貫性が追いつくのかどうか——その全体最適こそが長期的な勝負を決める。VSCodeチームの仕事の質を見ると「できる力はある」と感じるだけに、製品全体としての体験設計にも期待を込めて注目し続けたい。

まずはローカルLLMを接続して試してみる価値は十分にある。百聞は一体験に如かず、だ。


出典: この記事は Microsoft unleashes VS Code 1.117 with custom AI model support and fluid chat animations の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。