米テクノロジーメディア「The Verge」のシニアレポーター、Jay Peters氏が2026年4月22日に報じたところによると、テスラのElon Musk CEOはQ1 2026決算説明会において、「Hardware 3(HW3)」搭載車両が非監視モードのFull Self-Driving(FSD)を受け取れないことを正式に認めた。HW3を搭載するテスラ車は約400万台に上り、FSDを有料で購入した顧客を含む多くのオーナーが影響を受ける。

なぜこの問題が注目されるのか

FSDは「いずれ全車に提供される」という前提のもとで多くのオーナーが購入した有料オプションだ。米国では数千ドル規模の投資であり、「買ったはずの機能が使えない」という状況は単なる仕様変更を超えた消費者信頼の問題となっている。テスラがEVメーカーとして急成長できた背景の一つに、「ソフトウェアアップデートで機能追加・改善される車」という価値提案があった。今回の発表は、その根幹に疑問を投げかけるものだ。

マスクCEOの説明:技術的な限界

Musk氏は決算説明会で次のように述べた。

「そうでないことを願っていたが、HW3には非監視FSDを実現する能力がない。HW4と比較してメモリ帯域幅が8分の1しかなく、これが非監視FSDに必要な主要要素だ」 The Vergeの報道によると、対応策としてテスラは以下を提示している。

  • 割引下取り: HW4搭載の新車への乗り換えを割引価格でサポート
  • ハードウェアアップグレード: 車両のコンピュータおよびカメラをHW4に換装(両方の交換が必要)
  • マイクロファクトリー計画: 効率的な換装のため主要都市圏に小型工場を設置する方針

Musk氏はサービスセンターでの個別対応は「非常に時間がかかり非効率」と認め、「ミニ生産ライン」が必要だと述べた。また、「長期的にはすべてのHW3車をHW4に転換することが合理的」とも発言しており、ロボタクシーフリートへの参加に向けたアップグレードを念頭に置いている模様だ。

なお、Musk氏は2025年1月の決算説明会でもHW3車のアップグレード必要性に言及していた経緯があり、今回の発表は既定路線の追認という側面もある。Electrekの報道では、オランダのHW3オーナーがテスラから「もう少し待って」と言われ続けていたケースも紹介されており、現場での情報共有が十分でなかった可能性も指摘されている。

日本市場での注目点

日本でも複数のテスラモデルにHW3が搭載されており、FSDオプションを購入したオーナーは今回の発表の影響を受ける可能性がある。ただし、日本でのFSD提供状況はHW3・HW4を問わず限定的であり、日本道路交通法との関係から非監視FSDの国内展開には法規制面のハードルが別途存在する。ハードウェアアップグレードの具体的な費用や日本での展開スケジュールはまだ発表されていない。また、マイクロファクトリー構想が日本に展開されるかどうかも不明だ。テスラ日本法人からの公式アナウンスを待ちつつ、下取り条件やアップグレード費用の詳細に注目したい。

筆者の見解

「将来のアップデートで機能が追加される」という購入判断のもとで投資したオーナーへの影響は無視できない。技術的な限界があったとしても、「1/8のメモリ帯域幅では無理だった」という事実が今頃になって公式に認められたことは、事前の技術評価と顧客への情報開示のあり方に問題があったと言わざるを得ない。

一方で、ハードウェアアップグレードや割引下取りという代替策を用意している点は、問題を放置しない姿勢として評価できる。マイクロファクトリー構想が実現すれば、大規模なハードウェア換装を短期間で進めるユニークな解決策になりうる。

自動運転技術の実用化は、ソフトウェア進化だけでは完結しない段階にきている。センサー・コンピューター・ソフトウェアが三位一体で進化しなければならないというこの現実は、自動運転に参入するあらゆるプレイヤーが直面する共通の課題だ。テスラが今回の対応を誠実に、かつ迅速に実行できるかどうかが、次の信頼回復につながるかを左右するだろう。


出典: この記事は Elon Musk admits that millions of Tesla vehicles won’t get unsupervised FSD の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。