Engadgetのシニアリポーター Karissa Bell氏が2026年4月20日に報じたところによると、LinkedInがプレミアム会員向けの新機能「Crosscheck」を米国でローンチした。OpenAI・Anthropic・Google・Microsoftなど複数のAIモデルをトークン制限なしで比較できる「ブラインドテスト」型の仕組みで、ビジネスSNSという文脈でのAI評価に新たな視点を持ち込む試みとして注目されている。
Crosscheckとは何か——「ブラインド味覚テスト」方式のAI比較機能
Crosscheckは、LinkedInのCPO(最高プロダクト責任者)Hari Srinivasan氏が「AIモデルのブラインド味覚テスト」と表現する機能だ。ユーザーがテキストでプロンプトを入力すると、2つの異なるモデルがそれぞれ回答を生成する。どちらの回答が優れているかを選択した後にはじめて、裏側でどのモデルが使われていたかが開示される仕組みだ。
現時点でサポートされているモデルは、Anthropic・Google・MoonshotAI・Mistral・Amazonのモデル群が確認されており、今後もさらに拡充される予定とされている。また、業種・職種ごとにモデルの評価傾向を集計したリーダーボード機能も備えており、「エンジニアリング職ではどのモデルが評価されているか」「マーケター層ではどうか」といった職業軸での比較も可能になる予定だ。
海外レビューのポイント:利便性とデータ共有のトレードオフ
Engadgetの報道によると、Crosscheckには現時点でいくつかの制約がある。
できること:
- テキストベースのチャットを回数・トークン制限なしで利用可能
- 複数モデルの回答を並べて比較
- 追加サブスクリプションなしで複数のAIサービスを試せる
できないこと:
- 画像生成・ファイルアップロード・各プラットフォーム固有の高度な機能は非対応
- テキストプロンプトのみのサポート
Engadgetの記事ではデータ共有の点についても言及されており、LinkedInはユーザーの利用データ(匿名化済み)をモデル開発各社にフィードバックすると説明している。「個人を特定できる情報は共有しない」としているものの、ビジネスSNSという性質上、職業・業種に紐づいた利用傾向データが各AI企業に渡ることになる。この点は利用前に意識しておく必要があるだろう。
またSrinivasan氏は本機能を「LinkedIn Labsのアーリープロダクト」と位置づけており、速度改善・モデル追加・質問タイプの拡充が今後の課題であることを認めている。
日本市場での注目点
現時点ではCrosscheckは米国のLinkedIn Premiumサブスクライバー限定での提供となっており、日本での展開時期は未定だ。ただしLinkedInは「近日中に他の国や無料ユーザーにも展開する予定」と明言しており、グローバルへの拡大は既定路線と見てよいだろう。
日本におけるLinkedIn Premiumの月額料金は概ね4,000〜8,000円台で、すでに利用しているユーザーであれば、追加コストなしで複数AIを試せる点は大きなメリットとなる。
特に注目したいのは「職業・業種ごとのリーダーボード」という軸だ。これまでのAIベンチマークはコーディング・推論・知識問題など技術的な指標が中心だったが、LinkedInのデータは「実際のビジネスパーソンが実務シーンでどのモデルを選んだか」という現場感覚に基づく評価に近い。日本企業のAI導入判断においても、こうした実務ベースの評価軸は参考になるはずだ。
筆者の見解
Crosscheckのコンセプト自体は面白い。AIモデルを「銘柄を隠した状態で評価させる」という設計は、事前に持っているブランドイメージや話題性によるバイアスを排除する狙いがある。技術者や研究者がAIベンチマークを作る場合とは異なり、実際のビジネスユーザーが日常的な問いを投げかけた結果が蓄積されるため、実務での汎用性という観点では意義のあるデータになりうる。
ただし、現状はテキスト限定・早期プロダクト段階という制約が大きく、実際に業務で使えるレベルの機能比較には物足りないと言わざるを得ない。各AIプラットフォームが持つコンテキスト管理・ツール連携・エージェント機能といった本質的な差分は、この仕組みでは評価しきれない。
MicrosoftはLinkedInの親会社であり、Copilotがこの比較の俎上に上がる可能性もある。今後のリーダーボードデータが積み上がったとき、Copilotがどう評価されるかは注目ポイントだ。総合力に長けたMicrosoftのプラットフォームだからこそ、AIの実力においても正面勝負できるはずだと期待している。Crosscheckがその評価を可視化する場になるなら、Microsoftにとっても好機になりうる。
なお、リーダーボードの結果が各AIベンダーのマーケティングに使われる可能性は十分あるため、「LinkedIn上での評価が高い=業務で使える」と短絡的に読み替えないよう注意が必要だ。あくまで一つの参考指標として活用するスタンスが現実的だろう。
出典: この記事は LinkedIn’s new Crosscheck feature lets premium subscribers test competing AI models for free の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。