フランスの音楽ストリーミングサービス Deezer が、衝撃的なデータを公開した。Engadgetが2026年4月20日に報じたところによると、同社のプラットフォームに毎日アップロードされる楽曲のうち 44%がAI生成楽曲であり、1日あたり約7万5,000曲に相当するという。

急激に膨らむAI楽曲の洪水

Deezerが公開したレポートによれば、2025年を通じて 1,340万曲以上 のAI生成楽曲が検出・フラグ付けされた。月間に換算すると約200万曲がフラグを立てられている計算だ。

特筆すべきは増加ペースの速さだ。Deezerが2025年1月に特許申請中のAI音楽検出ツールを立ち上げた直後の時点では、AI生成楽曲の比率は 18%(1日あたり約2万曲) だった。それが同年内に44%まで跳ね上がったことは、AI音楽生成ツールの普及がいかに急速かを物語っている。

Engadgetのレポートが伝えるポイント

良い点(プラットフォーム防衛の観点)

  • DeezerのAI検出ツールは、現在最も広く使われているAI音楽生成サービスである SunoとUdio の出力を識別できる
  • AI生成楽曲はプラットフォーム上の全ストリーム数の わずか1〜3% にとどまり、しかもその大部分は不正行為と判定され収益化が停止されている
  • 検出・対策の仕組みが機能しており、実際のリスナー体験への影響は現時点では限定的

気になる点(産業全体への影響)

  • Engadgetの報道によれば、SunoとUdioは当初、レコード会社から著作権侵害で訴えられていた。しかしその後 Warnerなど主要レーベルが一転して両社とライセンス契約を締結しており、業界の立ち位置は揺れ動いている
  • アップロード全体の半数近くがAI生成という状況は、アーティストやレーベルが正規にアップロードする楽曲のプロモーション枠を圧迫する構造的問題につながりうる
  • 類似の取り組みとして Coda Music も「AI Artistラベル」やユーザーによるフラグ機能を導入しており、業界全体でのデータ整合性確保が急務になっている

日本市場での注目点

Deezerは日本でも利用可能なサービスだが、国内シェアではSpotify・Apple Music・Amazon Musicが圧倒的に強い。ただしこの問題は特定プラットフォームに閉じた話ではない。

日本でも JASRAC・NexTone が AI生成音楽の著作権処理に関するルール整備を進めており、2026年以降はプラットフォーム側のAI検出・表示義務化が議論のテーブルに乗ってくる可能性がある。SunoやUdioは日本語の歌詞・J-POPスタイルの生成にも対応しており、国内ユーザーによる利用も増えている。

楽曲制作を生業とするミュージシャンやサウンドクリエイターにとっては、「どのプラットフォームで自分の楽曲を正当に評価されるか」という戦略的選択が、今後ますます重要になってくるだろう。

筆者の見解

Deezerのデータが示しているのは、AI生成コンテンツの「量的爆発」はもはや止められないという現実だ。毎日7万5,000曲というのは、人間のクリエイターが1年かけて作る楽曲数を軽く超える。

興味深いのは、これだけの量のAI楽曲が流れ込んでいながら、実際のストリーム数に占める割合は1〜3%に過ぎないという点だ。つまり 大量アップロードのほとんどはリスナーに選ばれていない。スパム的な不正収益化狙いが主目的であることを如実に示している。

プラットフォームが「禁止」ではなく「検出して透明化・収益停止」という方向で対応していることは、現実的なアプローチとして評価できる。禁止は必ず抜け穴を生み、イタチごっこで終わる。「ルールに則った利用が最も便利」という環境設計こそが持続可能な解だ。

一方で、AI音楽生成ツールとレーベルの間でライセンス契約が進みつつある動きは注目に値する。最終的には「AI生成かどうか」よりも「誰が権利を持ち、誰に収益が還元されるか」というエコシステムの再設計が、この問題の本質的な着地点になるだろう。プラットフォームの検出技術は、そのための土台づくりと見るべきかもしれない。


出典: この記事は Deezer says AI-made songs make up 44 percent of daily uploads の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。