HPが発表した「EliteBoard G1a」は、見た目は普通のキーボードでありながら、内部にCPU・メモリ・ストレージを搭載した完全なWindows PCだ。米国テクノロジーメディア「Tom’s Guide」のTony Polanco氏が実機を検証し、「これまでテストした中で最もユニークなコンピューター」と評価した。

なぜこの製品が注目か

キーボード一体型PCというコンセプト自体は1980年代のコモドール64などに前例があるが、現代のビジネス用途向けに復活させた点が興味深い。HPの説明によれば、EliteBoard G1aは「プロフェッショナル向けキーボードに統合されたデスクトップグレードのPC」と位置づけられている。モニターに接続するだけで即座に使えるという割り切った設計は、複数のワークスペース間を頻繁に移動する法人ユーザーを強く意識したものだ。

薄型・軽量のノートPCが当たり前になった時代に、あえてこの形状を選ぶ意義はどこにあるのか。HPの回答は「ラップトップはモニターに繋いでも閉じている時間が長い」というユーザー行動の観察にある。それなら最初からキーボードにPC機能を内蔵してしまえばいい、という逆転の発想だ。

スペック概要

エントリー構成($1,499)は、AMD Ryzen 5 Pro 340、AMD Radeon 840M、16GBメモリ、256GBストレージ。Tom’s Guideがテストした上位構成($1,999)は、AMD Ryzen 7 Pro 350、AMD Radeon 860M、32GBメモリ、512GBストレージを搭載する。接続性はWi-Fi 7・Bluetooth 6に対応し、USB4対応USB-Cポートを2基、USB-C 3.1/3.2 Gen 2ポートを1基備える。ワイヤレスマウスと接続用ドングルが付属する。

本体サイズは14.1×4.7×0.7インチ(約35.8×11.9×1.8cm)、重量は約676g。通常のキーボードよりは厚みがあるものの、持ち運びを想定した設計になっている。

海外レビューのポイント

Tom’s GuideのPolanco氏は、EliteBoard G1aのデザインについて「知らなければ普通の(やや厚い)業務用キーボードに見える」と評価。キーキャップはオーソドックスで、オールブラックのデザインは他の機器との統一感を出しやすいと述べている。また、Microsoftの AIアシスタントを即座に起動できる専用のCopilotキーが搭載されており、Windows向けビジネス製品としての性格が明確に打ち出されていると指摘した。

一方、「一般消費者よりもニッチなユースケース向け」という点については率直に認めており、「多くの人にとってはベストラップトップを選んだ方が良い」とも述べている。ただし、特定のオフィス環境では有用性があるとも評価した。

価格面では、B&H Photoでの現在の販売価格($1,499〜)について「ニッチな製品としては高価な要求」と指摘しつつ、HPは自社サイトへの正式掲載時にはより低い価格になると説明していると報告している。

日本市場での注目点

現時点ではHPの公式サイトで「coming soon」ステータスであり、日本での発売時期・価格は未発表だ。米国での想定価格が$1,499〜という点を考慮すると、日本円では20〜25万円前後のレンジに入ることが想定される。

競合として考えられるのは、ミニPCをモニター裏に設置するVESA構成や、Surface Pro系のデタッチャブルPCだ。法人向けシンクライアント端末との比較でも、Windowsを完全にローカル動作させる点で差別化できる場面はある。ただし、同価格帯であればThinkPad系のハイスペック構成も十分に選択肢に入ってくる。

日本市場では法人IT部門の標準化戦略との相性が鍵になる。「キーボードだけ持ち歩けば、どのモニターの前でも自分の環境が使える」というコンセプトは、フリーアドレス化が進む大手企業のIT担当者には響く可能性がある。

筆者の見解

EliteBoard G1aは、「ユニークさ」が目的化した製品ではなく、特定の業務シナリオに対する真剣な回答として見るべきだろう。複数拠点を持つ企業でフリーアドレスを運用しているケースや、シンクライアント環境からローカル処理への切り替えを検討しているIT部門には、実際に検討する価値がある選択肢だと思う。

とはいえ、1,499ドルという価格設定は「まず試してみる」には重い。HPが正式価格を下げると示唆している点は注目したい。より手頃な価格帯で提供できれば、ニッチながらも安定した需要を獲得できる製品になりうる。

現代版コモドール64と呼ぶのは少々ロマンチックな表現だが、「PCをキーボードに詰め込む」という40年前のアイデアが、ビジネスの文脈で新たな説得力を持ち始めているのは面白い動きだ。

関連製品リンク

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出典: この記事は I just tested this keyboard that’s also a Windows computer — and it’s like a modern Commodore 64 の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。