Blue Originの大型ロケット「New Glenn」が2026年4月20日(日本時間)に3回目の打ち上げを実施した。Ars Technicaが詳細を報じており、ブースター(第1段)の再利用という歴史的マイルストーンを達成した一方で、上段ステージの異常により衛星が誤った軌道に投入されるという痛手も伴った複雑な結果となった。
New Glenn とはどんなロケットか
New Glennは全高98メートル(約321フィート)の大型液体燃料ロケットで、第1段にメタン燃料のBE-4エンジンを7基搭載する。第2段は液体水素・液体酸素を燃料とするBE-3Uエンジン2基を使用。Jeff Bezos氏が創業したBlue Originの主力機として、NASAのアルテミス月探査計画にも深く関わっている。
今回のフライト概要
Ars Technicaの報道によると、打ち上げは現地時間4月20日午前7時25分にフロリダ州ケープカナベラル空軍宇宙軍基地から実施。約3分後に第1段が分離し、大西洋上の洋上着陸船に向けて自律帰還。2回のエンジン逆噴射を経て、約10分後に着陸成功した。
今回再利用されたブースターは「Never Tell Me The Odds(オッズなんて関係ない)」と命名された機体で、昨年11月のフライトで初飛行・初着陸を達成していた。エンジンは今回のために新品に換装されているが、Dave Limp CEOによれば、前回使用したエンジンも将来のミッションに再利用予定とのことだ。
海外レビューのポイント:成果と失敗
Ars Technicaのレポートでは、ブースター再利用の成功を「大きな技術的前進」と評価しつつ、上段ステージの問題を重大な課題として指摘している。
成功した点:
- 軌道級ブースターの初回再利用飛行を達成(これはSpaceX Falcon 9が2016年に初めて実現した技術の追随)
- 着陸精度は高く、「煙は出たが正確な着地」とArs Technicaは描写
- 再利用ペースの向上によって打ち上げコスト削減と発射頻度増加が期待される
気になる点:
- 上段ステージが目標軌道を外れ、ペイロードであるAST SpaceMobileの通信衛星を「非正常軌道」に投入
- 衛星自体の電源は投入後に入ったことが確認されているが、現時点で軌道修正の可否は不明
- SpaceXはFalcon 9のブースターを最短9日で再飛行させ、1週間に5回以上の打ち上げをこなす。Blue Originはまだその水準には遠い
日本市場での注目点
New Glennは現時点で日本向けの商業打ち上げサービスを直接提供している段階ではないが、AST SpaceMobileへの衛星投入という今回のミッションは、スマートフォンへの直接衛星通信インフラ整備の一環だ。AST SpaceMobileのサービスは将来的にdocomoやソフトバンクなど日本キャリアへの影響も視野に入る可能性がある。
また、Blue Originの打ち上げ価格や信頼性の向上は、宇宙開発コストの低下に貢献し、日本の衛星ビジネス(QPS研究所やAXELSPACEなど)に間接的な恩恵をもたらす可能性もある。
筆者の見解
ブースター再利用の成功そのものは素直に評価したい。SpaceXが独走するロケット再利用市場に本格的な競合が現れることは、打ち上げ市場全体の健全化に寄与する。
ただ、上段ステージの失敗は「もったいない」の一言に尽きる。第1段の華々しい成功映像が世界に拡散した数時間後、上段の問題が明らかになるという流れは、プロジェクト管理の優先度設定に何らかの課題があることを示唆している。成功要因だけでなく、失敗要因の透明な開示と改善プロセスの公表がBlue Originには求められる。
宇宙開発はロマンだけでは成り立たない。信頼性の積み上げこそが市場を動かす。「第1段は完璧」な状態でペイロードを損なうのは、エンジニアリングの全体最適という観点では失格に近い。次のフライトで何が変わるのか、Blue Originの説明責任に注目したい。
出典: この記事は Blue Origin’s rocket reuse achievement marred by upper stage failure の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。