欧州委員会(EC)は2026年4月16日、デジタル市場法(DMA)へのGoogleの準拠を促すための新たな措置案を公表した。Engadgetが報じたこの提案は、検索エンジン市場での競争環境の是正を目的としており、Googleが保有する膨大な検索データを競合他社にも開放することを求める内容だ。
提案の核心:検索データの強制共有
欧州委員会の提案によれば、Googleは「ランキング・クエリ・クリック・閲覧データ」といった検索関連データを、「公正・合理的・非差別的な条件」で第三者の検索エンジン事業者に提供しなければならないとされている。
委員会でクリーン・公正・競争力ある移行担当の上級副委員長を務めるテレサ・リベラ氏はこう述べている。「データはオンライン検索やAIを含む新サービス開発における重要な入力要素です。このデータへのアクセスが競争を損なう形で制限されるべきではありません。動きの速い市場では、小さな変化が急速に大きな影響をもたらします。市場を閉鎖したり選択肢を狭めたりするリスクのある慣行は許容しません」
DMA違反追及の経緯
Engadgetの報道によれば、欧州規制当局はDMAを用いてGoogleの支配的な市場地位に対し数年にわたって圧力をかけ続けている。Googleは2024年3月からDMA準拠が義務付けられ、一定の対応策を講じたものの、1年後には欧州委員会が「Google検索とPlay Storeが市場競争に関する義務を果たしていない」として予備的な告発を行った。Googleは検索結果の表示方法を調整する対案を提示したが、規制当局はさらに踏み込んだ変更を求める姿勢を崩していない。
Googleの強硬な反論
Engadgetの取材に対し、Google上級競争法律顧問のクレア・ケリー氏は次のようにコメントした。「何億人ものヨーロッパ人が、健康・家族・財務に関するセンシティブな検索をGoogleに信頼して委ねています。欧州委員会の提案は、このデータを危険なほど不十分なプライバシー保護のもとで第三者に引き渡すことを強制するものです。DMAの本来の使命をはるかに超え、個人のプライバシーとセキュリティを脅かすこの行き過ぎた規制に対し、引き続き力強く戦ってまいります」
今後のスケジュール
- 2026年5月1日まで:提案措置に対するパブリックコメント受付
- 2026年7月27日:最終的・拘束力のある決定の期限
現時点では提案内容は確定しておらず、今後数ヶ月で要件が変わる可能性もある。GoogleとECの間で相当な交渉・反論が続くことが予想される。
日本市場での注目点
この規制はEU域内の話ではあるが、その影響は日本を含む世界の検索・AI市場に波及しうる。Googleが検索データの外部共有を余儀なくされた場合、Bingやその他の検索エンジンが精度向上に活用できるデータ量が大幅に増える可能性がある。また、検索データはAIモデルの学習に直結する資産でもある。日本の検索市場でもGoogleのシェアは圧倒的であり、競合エンジンの台頭がどのような影響をもたらすかは注目に値する。
筆者の見解
Googleが検索データを「競争力の源泉」として囲い込んできたのは、ビジネス的には合理的な判断だ。しかし欧州委員会の指摘には一定の正当性がある。「データが次世代AIの燃料になる」という現実を踏まえると、検索データへのアクセス格差がAI競争力の格差に直結するという論点は無視できない。
一方でGoogleのプライバシー主張も単純に否定できない。検索クエリには極めてセンシティブな個人情報が含まれており、「第三者への開放」には相応の安全設計が不可欠だ。規制の目的が競争促進であるなら、プライバシー保護との両立をどう設計するかが本質的な論点になる。7月の最終決定までに、データ開放の範囲・匿名化要件・利用制限といった細部がどう決着するかが焦点だろう。
より広い視点では、これはデータ独占の問題だ。一社がインフラレベルのデータを握り続けることで市場全体のイノベーションが阻害されるリスクと、過度な強制共有がサービス品質やプライバシーを損なうリスクのバランス——その答えを欧州が出そうとしている。日本のプラットフォーム規制議論においても、参照すべき前例になりうる重要な動きだ。
出典: この記事は The European Commission wants Google to share search engine data with competitors の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。