2022年以来最大規模の価格改定が始まる
Microsoftは2026年7月1日より、法人向けMicrosoft 365(M365)の主要SKUの価格を一斉に引き上げる。2022年の価格改定以来、最大規模となる今回の変更は、エンタープライズ・ビジネス・フロントラインの全カテゴリが対象で、値上げ幅は5〜43%と幅広い。既存顧客は更新タイミングまで旧価格が維持されるが、2026年7月以降の更新には新価格が適用される。
SKU別の主な価格変更(USD)
エンタープライズスイート(Teams込み)
SKU 旧価格 新価格 変化率
Microsoft 365 E3 $36.00 $39.00 +8%
Microsoft 365 E5 $57.00 $60.00 +5%
Office 365 E3 $23.00 $26.00 +13%
Office 365 E5 $38.00 $41.00 +8%
ビジネススイート(Teams込み)
SKU 旧価格 新価格 変化率
Business Basic $6.00 $7.00 +16%
Business Standard $12.50 $14.00 +12%
フロントラインスイート(最大の値上げ幅)
SKU 旧価格 新価格 変化率
M365 F1 $2.25 $3.00 +33%
M365 F3 $8.00 $10.00 +25%
スタンドアロンコンポーネントも軒並み値上がりしており、Entra Plan 1は+16%($6→$7)、EMS E3は+13%($10.60→$12.00)、Microsoft 365 Appsは+17%($12→$14)となる。
価格転嫁の名目——何が追加されるのか
Microsoftは今回の価格改定と合わせ、2026年夏から以下の機能をパッケージに追加すると発表している。
- Microsoft Defender for Office 365 Plan 1(E3/Office 365 E3に追加)
- Intune Remote Help / Advanced Analytics / Plan 2 / Privilege Management
- Microsoft Cloud PKI
- Copilot Chatの機能強化・アナリティクス
- URL時点クリック保護(Office 365 E1に追加)
パッケージ変更の展開は2026年6月から開始され、8月1日までに完了予定。テナントには30日前にMessage Centerで通知が届く。
実務への影響——日本のIT管理者・調達担当者が今すぐやること
1. 更新日を即確認する
「既存顧客は更新まで旧価格」という条件は重要だ。2026年7月1日以降に更新を迎える契約は即座に新価格が適用される。ライセンス管理ツールやMicrosoft 365管理センターで次回更新日を今すぐ確認すること。
2. 更新前の交渉が有効
年間更新型の契約であれば、7月以前の早期更新や複数年契約への切り替えによって旧価格を一定期間維持できる可能性がある。パートナー(CSP)や担当営業との交渉を早めに始めるべきだ。
3. ライセンスの棚卸しが急務
F1/F3(フロントライン)は値上げ幅が最大33%と大きい。製造・小売・医療・物流など多くのフロントラインワーカーを抱える企業は、コスト影響が無視できないレベルになる。実際に使われていないライセンスの削減や、ユーザーごとの適切なSKUへの見直しをこのタイミングで実施したい。
4. 追加機能を「使う前提」で計画する
Defender for Office 365 Plan 1やIntune系の機能は、単体で購入すれば相応のコストがかかる。今回の価格改定はその費用が含まれる形になっており、「追加機能を使い倒せるか」が費用対効果の判断軸になる。エンドポイント管理や情報保護の強化を検討している企業には追い風だ。
筆者の見解
正直に言えば、この価格改定には複雑な気持ちがある。
Microsoftが追加する機能——Defender for Office 365 Plan 1、Intuneの各機能——は、エンタープライズのセキュリティ基盤として本来なら積極評価したいものだ。ゼロトラスト移行を進める現場では、エンドポイント管理とID保護の統合強化は確かに意味がある。パッケージへの組み込みで「あれも買わなければ」という分散コストを防ぐ発想自体は悪くない。
ただし気になるのは、Copilot Chat関連の強化が価格転嫁の理由として前面に出ている点だ。現時点でCopilotの恩恵を実感できているユーザーがどれだけいるか、現場感覚と乖離があるように思える。「機能追加があるから値上げ」という説明が説得力を持つためには、その機能が実際に使われ、価値を生んでいることが前提となる。
Microsoftには、統合プラットフォームとしての価値を圧倒的に示す力があるはずだ。ライセンスの複雑さを整理し、ユーザーが「使いこなせている」と感じる状態を作ること——それが今、最も重要な課題だと思う。価格改定はむしろ、利用状況を見直す絶好の機会でもある。コスト増を嘆くだけでなく、「このライセンスで本当に使いきれているか」を問い直すきっかけにしてほしい。
出典: この記事は Microsoft 365 Price Increases Will Take Effect July 2026 の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。