MicrosoftのVP(技術スタッフ上席)であるScott Hanselmanが、macOS Sonomaから着想を得た小さなツール「PeekDesktop」をGitHubで公開した。デスクトップの壁紙部分をクリックするだけで開いているウィンドウをすべて一瞬で最小化し、もう一度クリックすれば元の配置・状態に復元される——それだけの機能だが、その「だけ」がじつに心地よい。
PeekDesktopとは何か
PeekDesktopはスタンドアロンの実行ファイル(6.15MB)として配布されており、ZIPを展開してexeを起動するだけで動作する。システムトレイに常駐するが、アイドル時のメモリ使用量は2MB以下という超軽量設計だ。Snapdragonを搭載したWindows on ARM機にもネイティブ対応している点は、さすが開発元がMicrosoftのエンジニアだと感じさせる。
macOS Sonoma の「壁紙をクリックして他のウィンドウを隠す」機能とほぼ同等の体験を提供する。Windowsにも「デスクトップを表示(Win + D)」はあるが、ウィンドウの配置と状態を完全に保持したまま復元できるかどうかが決定的に違う。Win + Mは「最小化のみ」で戻す機能がなく、Win + Dは「タスクバー以外の場所で押すと戻せない」ことがある。PeekDesktopはその曖昧さをなくした点で、既存の機能より使い勝手が上だ。
現時点での制限事項
完成度は高いが、現時点でいくつかの課題もある。
- ごみ箱の右クリックが難しい: 右クリックするとすべてのウィンドウが復元されてしまい、コンテキストメニューが出るまでに2度右クリックが必要になる
- タスクマネージャーが対象外: Task Managerは最小化の対象にならず、壁紙クリックに反応しない
- 新規フォルダ作成が誤動作: ウィンドウ最小化中にデスクトップで「新しいフォルダーを作成」しようとすると、最小化が解除されてしまう
いずれも設計上の割り切りや初期バージョンの制約と考えられるが、日常業務での利用を想定するなら今後の改善に期待したいところだ。
実務への影響
エンジニア・クリエイター向けのヒント
- ファイルの整理やデスクトップにドラッグ&ドロップしたいとき、従来は「Win + D → 作業 → もう一度Win + D」と二手かかっていたが、PeekDesktopで一貫した操作に統一できる
- ARM端末(Surface Pro X、Copilot+ PCなど)でも動作するため、最新ハードウェアで試すのに向いている
- インストーラーではなくポータブルexeなので、会社の管理端末など「インストール制限のある環境」でも展開しやすい(組織のポリシー次第だが)
IT管理者向けの留意点
未署名のサードパーティexeが組織端末に持ち込まれるリスクについては、AppLockerやWindows Defender Application Controlのポリシーで管理するのが現実的だ。開発者がMicrosoftのVPであることはあくまで「信頼性の参考」にすぎず、組織的な管理は別途行うべきである。
筆者の見解
このツールで最も興味深いのは、「機能そのもの」よりも「Microsoftの現職VPがWindowsに足りない機能を個人開発で補った」という事実だ。
macOS Sonomaの壁紙クリック機能は2023年に登場し、以来3年が経過した。その間、Windowsがこれを正式に採用しなかったのは意外でもある。壁紙をクリックしたときに「アイコン以外の空白領域か」を判定する処理はシェルレベルで実現できるはずで、技術的な障壁は高くないはずだ。
もちろんWindowsはデスクトップ利用の多様性が高く、タッチ操作・タブレットモード・ゲームモードとの整合性など、考慮すべき変数はmacOSより格段に多い。その意味でHanselmanのツールが「自分のユースケース向けに割り切って作った」と割り切っているのは合理的だ。
ただ、このような良質な体験が「公式機能」としてWindowsに統合されることを期待したい。Windowsは世界中のビジネスパーソンが毎日使うOSだ。「個人ツールで補完する」文化の積み重ねより、細部の完成度をOSレベルで高めることに力を注いでほしい——それだけの実力はあるのだから。
PeekDesktopはGitHubから無償で入手できる。興味ある方はまず個人PCで試してみるといいだろう。
出典: この記事は Microsoft’s VP brings macOS-style click to reveal desktop feature to Windows with new tool の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。