2026年4月、Azureに実務直結の変更が集中した。なかでも注目はMicrosoft Customer Agreement(MCA)配下でのLicense Mobility解禁だ。Windows ServerとSQL Serverの既存ライセンスをAzureに持ち込める選択肢が広がり、オンプレミスからクラウドへの移行コストの見直しを迫られる企業も出てくるだろう。
MCAでのLicense Mobilityとは何か
License Mobilityとは、Software Assurance(SA)付きのボリュームライセンスをAzureなどのホスティング環境で利用できる仕組みだ。従来はエンタープライズ契約(EA)ベースのSAが前提だったが、2026年4月1日からはMCAで購入したWindows ServerおよびSQL ServerのSAでも適用可能になった。
これが意味することは明確だ。EAという大型契約を結んでいない中堅・中小企業でも、既存のライセンス資産をAzure移行に活用できるようになる。Azure Hybrid Benefit(AHB)と組み合わせれば、Azure VM上でWindows ServerやSQL Serverをかなり安価に動かせるシナリオが現実的になる。
今月のその他の注目アップデート
エフェメラルOSディスクキャッシュ(VM・VMSS)
VMおよびVM Scale Setsで、OSディスク全体をローカルストレージにキャッシュする機能が追加された。リモートストレージへの依存が減りブート遅延が改善される一方、ノード障害時のリスク特性も変わる。フォールトドメイン戦略との整合性を確認した上で採用を判断したい。
Windows 365 Businessの価格が約20%引き下げ
2026年5月1日から、Windows 365 Businessのリスト価格が約20%値下げされる。さらに「オンデマンド起動」モードでは、サインアウト後1時間はCloud PCの電源が維持される仕組みになった。コスト面のハードルが下がり、導入検討フェーズに入れる企業は確実に増えるはずだ。
PostgreSQL向けPgBouncer 1.25.1がGA
Azure Database for PostgreSQL Flexible ServerでPgBouncer 1.25.1が正式リリース。接続プーリングの安定性が向上し、急増するコネクション管理に悩む開発チームには直接的な恩恵がある。
App ServiceでPHP 8.5対応、Linuxデプロイも改善
Linux向けApp ServiceでPHP 8.5が利用可能になった。またLinuxアプリのコードデプロイフローも簡素化され、CI/CDパイプラインの設定工数が下がることが期待できる。
そのほかのアップデート
- AKSのオーバーレイCIDR拡張とHTTPプロキシ無効化オプション
- Azure MigrateでAzure Filesアセスメントが利用可能に
- Premium SSDv2の展開リージョン拡大
- Azure Red Hat OpenShiftのリージョン拡大とNVIDIA GPUコンテナ対応強化
実務への影響
ライセンス担当者は今すぐ棚卸しを: MCAでSAを保有していれば、License Mobility申請の準備を始められる。EAへの切り替えを検討していた企業は、このMCA対応を確認してから判断しても遅くない。
AHBとの組み合わせが鍵: License MobilityとAzure Hybrid Benefitを組み合わせると、Azure VM上でのWindowsおよびSQL Serverのコストを大幅に抑えられる。コスト試算はAzure Pricing Calculatorで今すぐ確認できる。
Windows 365の再評価を: 20%の値下げは無視できない変化だ。Remote Desktop環境やBYODポリシーの見直しを進めている企業なら、今こそ概念実証(PoC)を走らせる好機だ。
筆者の見解
License Mobilityのアップデートは、Azureプラットフォームとしての地道な実力向上の典型例だと感じる。派手な発表ではないが、現場の移行コストを確実に下げる施策は、中長期的な信頼につながる。
クラウド移行が「コスト高」と躊躇されがちな日本の中堅企業において、SAの資産をそのままAzureに持ち込めるという選択肢は、意思決定のハードルをひとつ取り除いてくれる。EAという大きな契約を結ばなくても移行できる道が広がったことの価値は、実際に移行プロジェクトに携わった経験のある人間なら実感できるはずだ。
一方でAKS、PostgreSQL、App Serviceと複数レイヤーのアップデートが毎月連続して出続けることは、追いかけること自体をゴールにしてはいけないサインでもある。変化の量に圧倒されるより、自分の組織に直接関係する変更だけを拾い上げ、実際に手を動かす時間を確保する姿勢の方が、長期的には価値が大きい。Azureはプラットフォームとして確かに成熟し続けている。それを活かすかどうかは、使う側次第だ。
出典: この記事は License Mobility for Windows Server and SQL under Microsoft Customer Agreement — April 2026 の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。