LG AI Researchは2026年4月9日、次世代マルチモーダルAI「EXAONE 4.5」を公開した。テキストと画像を同時に処理・推論できるこのモデルは、STEM分野の5種ベンチマークで平均77.3を記録。韓国発のAIがグローバルな競争の最前線に踏み込んできた事実として、日本のエンジニアコミュニティにとっても注目に値するニュースだ。
EXAONE 4.5とは何か
EXAONEは、LG AI Researchが開発を続ける大規模言語モデル(LLM)シリーズだ。今回の4.5は、テキストのみを扱う従来型を超え、画像とテキストを統合して理解・推論するマルチモーダル能力を前面に打ち出している。
マルチモーダルというと「画像を見て説明する」程度に捉えがちだが、実際にはもっと深い。図表・グラフ・技術ダイアグラムを読み込み、そこから数学的・論理的な推論を展開できるかどうかが問われる。これがSTEM(科学・技術・工学・数学)系ベンチマークの高スコアに直結している部分だ。
ベンチマーク結果をどう読むか
今回公表されたSTEM系5種ベンチマークの平均スコアは77.3。これは複数の著名なフロンティアモデルを上回る数字として示されており、素直に評価してよい成果だろう。
ただし、ベンチマークと実務での使い勝手は常に別の話だ。STEMテストは特定の問題形式に最適化されやすく、汎用的な思考力や自然言語対話の品質を完全には反映しない。スコアは「ポテンシャルの目安」として参照するのが正しい使い方だ。
日本のIT現場への影響
エンジニアが押さえるべきポイント
EXAONE 4.5の登場で、モデル選択の選択肢が実質的に広がる。以下のような場面で恩恵をもたらす可能性がある。
- 技術文書・仕様書の自動解析: 図表を含むPDF仕様書や回路図を直接入力として処理できるマルチモーダルモデルは、ドキュメント解析ワークフローの自動化に力を発揮する
- STEMドメインの専門タスク: 数式・化学式・工学図面を扱う製造業・研究開発領域では、マルチモーダル性能が直接的な価値になる
- マルチモデル戦略の最適化: コストと性能を目的に応じて使い分けるアーキテクチャにおいて、新たな有力な選択肢が加わる
IT管理者が確認すべきこと
EXAONE 4.5のエンタープライズ向け展開形態は今後の発表次第だ。オンプレミス・プライベートクラウドへの導入を許容するライセンスかどうか、そして日本語処理能力がどの水準かを確認してから評価を進めるのが現実的な手順になる。韓国語・英語中心に最適化されたモデルが日本語タスクでどこまで通用するかは、実際に検証するまで慎重に見ておきたい。
筆者の見解
この発表で最も注目すべきは、スコアの数字そのものではなく「韓国の大手総合電機メーカーが、世界トップクラスのフロンティアAIモデルを継続的にリリースし続けている」という事実だと思う。
AIの競争はもはや米国の数社だけの話ではない。欧州・アジア各地から有力なモデルが次々と登場しており、その多様化は開発者にとって純粋に選択肢の増加を意味する。特定のベンダーに縛られず、タスクに応じて最適なモデルを選ぶ時代が確実に到来している。
一方で私がいつも意識しているのは、「ベンチマークスコアの高さより、自律的なループで動き続けられるか」という視点だ。AIエージェントとして実務に組み込んだとき、人間が細かく指示を出し続けなくても目標に向かって走り続けられるか——これがモデル評価の本質的な軸になりつつある。EXAONE 4.5がその面でどんな実力を見せるか、エージェント統合の実事例が出てくるのを楽しみにしている。
フロンティアモデルの競争が激しくなるほど、エンジニアの武器は増える。LGのこの挑戦は、AI市場全体の多様性を高める意味でも歓迎すべき動きだ。
出典: この記事は LG Reveals Next-Gen Multimodal AI ‘EXAONE 4.5’ の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。