Azure Application Gateway V1の廃止期限まで、残り2週間を切った。2026年4月28日をもって正式にサポートが終了し、以降はサービス継続の保証がなくなる。まだV1を稼働させている環境がある場合、今すぐ移行作業を最優先で着手する必要がある。

Application Gateway V1とは何だったのか

Azure Application Gateway は、Azureのレイヤー7ロードバランサーだ。HTTPSターミネーション、URLベースのルーティング、WAF(Web Application Firewall)統合などを提供し、Webアプリケーションのフロントエンドとして長く使われてきた。

V1はその初代実装であり、長年にわたって多くのワークロードを支えてきた。しかし、クラウドネイティブの要件が高度化するにつれ、V1のアーキテクチャ的な制約が明らかになってきた。固定のキャパシティユニット、ゾーン冗長非対応、IPアドレスの不安定さなど、エンタープライズ要件を満たすには無理が生じていた。

V2で何が変わるのか

Application Gateway V2は、単なるバージョンアップではなくアーキテクチャの刷新だ。主な強化点を整理する。

自動スケーリング

V1では事前にインスタンス数を手動設定する必要があった。V2では負荷に応じて自動的にスケールアウト・スケールインする。トラフィックの急増に備えた「余分なキャパシティを常時確保」という運用から解放される。

ゾーン冗長性

V2はAzure Availability Zones をまたいだ冗長配置に対応している。単一のAvailability Zoneで障害が発生しても、トラフィックは自動的に健全なゾーンに切り替わる。V1ではこの構成ができなかった。

静的VIP(仮想IPアドレス)

V1では再起動やスケーリング操作のたびにパブリックIPアドレスが変わる可能性があった。V2では静的VIPが提供されており、DNSエントリやファイアウォールルールが意図せず無効化されるリスクがなくなる。

ヘッダー書き換えとカスタムエラーページ

V2ではHTTPリクエスト・レスポンスのヘッダーを書き換えるルール機能が追加された。バックエンドが返す内部URLを書き換えてクライアントに返す、セキュリティヘッダーを動的に付与するといったユースケースがV1では実現できなかった。

移行作業のポイント

移行前の確認事項

現行V1のSKU(Standard / WAF)とサブネット設計をまず確認する。V2への移行では新しいサブネットが必要なことが多い。V1とV2は同一サブネットに共存できないため、移行中は並行稼働のための追加サブネットを用意する必要がある。

Microsoftが提供する移行ツール

Microsoftは「Application Gateway Migration Script」をGitHubで公開している。PowerShellスクリプトであり、既存V1の設定を読み取ってV2相当のリソースを構成する。ただしすべての構成を自動変換できるわけではないため、スクリプト実行後の設定レビューは必須だ。

コストへの影響

V2は従量課金の構造がV1と異なる。「Capacity Unit」という単位で課金されるため、トラフィックパターンによっては月額コストが増減する。移行前にAzure料金計算ツールで試算することを推奨する。

切り替えのタイミング

DNSのTTLを事前に短く設定しておき、V2への切り替え後に問題があればV1に素早く戻せる体制を整えてから実施するのが安全だ。カットオーバー当日の深夜メンテナンス枠での実施が現実的だろう。

実務への影響

日本のAzure利用企業で、まだV1を稼働させているケースは少なくないはずだ。特に2019〜2021年頃にAzure移行を完了し、その後インフラをあまり触っていない環境では要注意だ。

Azure Portalで「Application Gateways」→ 各リソースの「Overview」→ SKUバージョンを確認してほしい。「Standard」「WAF」と表示されていればV1、「Standard_v2」「WAF_v2」であればV2だ。

廃止後にV1リソースが「動いているように見える」うちはよいが、Microsoftのサポート対象外となることで障害時の復旧保証がなくなる。本番環境でそのリスクを取るのは合理的ではない。

筆者の見解

インフラのEOL(サポート終了)対応は、地味だが組織の技術的健全性を測る指標でもある。「動いているから放置」は短期的には正しいが、廃止期限が確定した時点で優先度が一段上がる。

Azureに限らず、クラウドサービスはオンプレミスと違って「廃止日が来たら本当に止まる」可能性がある。V2への移行自体は複雑な作業ではないし、移行後の運用はむしろ楽になる。ゾーン冗長と自動スケーリングが標準になれば、深夜のオンコール対応が減るはずだ。

今回のV1廃止は、Microsoftが継続的にサービスを進化させている証でもある。プラットフォームとしての進歩を享受するためにも、古いコンポーネントの入れ替えは定期的に行う習慣を持ちたい。インフラの棚卸しを年1回以上実施し、EOLトラッカーをCI/CDパイプラインや運用ドキュメントに組み込んでおくことを強くすすめる。

4月28日まで2週間を切った今、まず「自分たちのAzure環境にV1が残っていないか」を確認するところから始めてほしい。


出典: この記事は Application Gateway V1 will be retired on 28 April 2026 – Transition to Application Gateway V2 の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。