米調査機関Gallupが2026年4月に発表したレポートが、AIをめぐる世代論に一石を投じている。14〜29歳の約1,600人を対象にした調査で、デジタルネイティブ世代がAIに対してかつてない「矛盾した感情」を抱き始めていることが浮き彫りになった。

熱狂から冷却へ——数字が語る感情の変化

2025年から2026年にかけて、Z世代のAIへの感情は大きく様変わりした。

「AIに希望を感じる」と回答した割合は27%から18%に急落。「興奮している」は36%から22%へと、いずれも10ポイント前後の落ち込みを見せた。一方で「怒りを感じる」は22%から31%へ上昇し、「不安を感じる」は約40%で横ばいのまま推移している。

AIが学校や職場に浸透するほど、この世代はその「コスト」を肌で感じるようになってきた。職場でAIを使う際のリスクがメリットを上回ると感じるZ世代は、昨年から11ポイント増加し、約半数に達した。同時に「AIを使えば作業は速くなる」と認める人は56%に上り、「AIで速く仕事をこなすと、将来の学習が難しくなる」と答えた人は実に8割にのぼる。

「やめられない」という現実

ここで興味深いのは、感情の悪化と利用率の関係だ。怒りや不安が増す中でも、週1回以上AIを使うと答えた割合は47%から51%に微増している。Gallupはこれを「成長は止まりかけている(growth has slowed to a crawl)」と表現したが、減少には転じていない。

Gallupのシニアパートナー、ステファニー・マーケン氏はこう分析する。

「Z世代はAIを完全に拒絶しているわけではない。しかし、学習・信頼・キャリア形成への長期的影響に対する懸念が高まっており、AIの位置づけを見直しつつある」 この世代は就職難や大量レイオフが続く厳しい労働市場に直面しながら、AIへの適応を迫られている。教育機関もAIの急速な普及に追いついていない。AIへの一般的な不信感が社会全体で広がる中、Z世代はその最前線に立たされているとも言える。

実務への影響——日本のエンジニア・IT管理者にとっての意味

この調査は米国のものだが、日本のIT現場にも無縁ではない。いくつかの実務上の示唆を挙げておきたい。

1. 「使わせる」よりも「意味を伝える」が先

AIツールの導入を推進する立場では、ツールを配布するだけでなく「なぜ使うのか」「何に使わせるのか」のコンテキスト設計が不可欠になってきた。特に若手社員への説明責任は今後より重くなる。

2. 学習機会の設計を見直す

「AIを使えば速く終わるが、学習が阻害される」という懸念は的を射ている。設計がまずければAIは学習を代替するのではなく、学習を奪う道具になりかねない。研修や業務設計でこの視点を取り込む必要がある。

3. 感情データを無視しない

「使っているから問題ない」と判断するのは早計だ。不満を抱えながら使い続けている状態は、いつか爆発する。チームや組織でAI利用状況のフィードバックを定期的に収集する仕組みを作ることが重要になる。

筆者の見解

Z世代のこの反応は、ある意味で正直だと思う。「速くなるのはわかる。でも何かが違う」——その違和感の正体は、多くの人が「AIに何かをやらせる」体験しかしていないことに起因しているのではないか。

現在広く普及しているAIツールの多くは、「副操縦士」的なモデル、つまり人間が指示を出し、AIが返答し、また人間が判断するという往復作業の繰り返しだ。この設計では、AIは「手間が少し減る道具」に過ぎない。それが学習を奪うかもしれないという不安を生み、コストとメリットの天秤がいつかひっくり返る。

しかし、AIの本質的な価値はそこにはない。目的を伝えれば自律的に判断・実行・検証を繰り返し、人間の認知負荷そのものを削減する——そういう使い方をしたとき、体験はまったく変わる。「怒りを感じる」のではなく、「これがなければ仕事にならない」という依存に変わる。

Z世代の怒りは、AIが進化していないことへの怒りではなく、AIの使われ方がまだ進化していないことへの怒りだと筆者は読んでいる。この調査が示す不満を、ツール側・組織側への改善要求として受け取れるかどうか。それが今後数年で、AI活用の成熟度を左右するポイントになるだろう。

デジタルネイティブ世代が「嫌いだけど使う」という段階を超えて「これがないと始まらない」と感じるツール設計ができた組織が、次のフェーズで一歩先を行く。そう確信している。


出典: この記事は Gen Z’s love-hate relationship with AI の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。