Windows 11が登場して4年以上が経つ。しかしいまも「コントロールパネル」はそこにある。新しいプリンターを手動追加しようとすれば、Settingsアプリはあっさりと旧来のコントロールパネルへリダイレクトする。「なぜ消えないのか」——その疑問にMicrosoftが初めて公式に言葉を与えた。

Microsoftデザインリードが公式コメント

MicrosoftのPartner Director of Design、March Rogers氏がX(旧Twitter)上で公式に認めた。チームは「すべてのコントロールパネルのコントロールを、モダンなSettingsアプリに移行する作業を進めている」と述べ、その進捗が慎重であることについてこう説明した。

「さまざまなネットワーク機器やプリンターデバイス、ドライバーを壊さないよう確認しながら進めているため、時間がかかっている」 移行の完了時期については明言を避けており、ロードマップの公開もない。

「互換性」という40年分の重力

ことの本質は、Windowsが背負ってきた歴史の重さにある。

macOSはAirPrintへの移行によってベンダー固有のプリンタードライバーを実質的に廃止した。AirPrint非対応のプリンターは新しいmacOSでは単なる「鉄の箱」になる。macOS Catalinaで32ビットサポートが切られたとき、USB-Ethernet変換アダプターやWi-Fiドングルのドライバーが一夜にして動作しなくなった事例も多数あった。

この断行ができるのは、macOSのシェアが比較的低く、企業ユーザーの多様なデバイス依存度も限られているからだ。Windowsはその対極にある。20年前のプリンタードライバーが今日も現役で動いている環境が、日本中の企業に無数に存在する。

現在もDevice Managerはコントロールパネルの一部であり、Settingsアプリから検索はできても、実体はコントロールパネル側にある。ドライバーの手動インストール・更新・ロールバック・削除といった操作は、すべてDevice Manager経由でなければ実質的に行えない。Settingsの「Bluetooth & デバイス」ページは直感的ではあるが、Device Managerほどの網羅性はまだない。

実務への影響——日本のIT現場で何が変わるか

短期的には「何も変わらない」と思っていい。

Microsoftは完了時期を示していない。現場のエンジニアやIT管理者が今すぐ運用を変える必要はなく、コントロールパネルはしばらくの間、引き続き利用できる。ただし、いくつかの点は意識しておきたい。

  • スクリプト・バッチ処理の棚卸しを始める: コントロールパネルの特定ページへのショートカットや control.exe を直接呼び出しているスクリプトがある場合、将来的に動作しなくなる可能性がある。今のうちにSettingsアプリのURIスキーム(ms-settings: など)への移行計画を立てておくと安心だ
  • ドライバー管理の標準化: 独自ドライバーへの依存度が高い環境は、段階的にドライバーレスまたはクラウド管理型デバイスへの移行を検討するタイミングでもある
  • 新規調達端末では積極的にSettingsを使う: 既存環境はそのままでも、新規導入環境からはSettingsアプリベースの操作フローに慣れておくことが移行摩擦を減らす

## 筆者の見解

Windowsが「古いものを壊さない」方針を取り続けてきたことは、日本のエンタープライズにとって長年の救いだった。製造業の制御端末、医療機器との連携、官公庁の業務システム——どれもベンダーが「Windows動作確認済み」の太鼓判を押したバージョンで止まっていることが多く、OS側がレガシーを切り捨てられない構造的な理由がある。

その意味で、今回のMicrosoftの「丁寧に進める」という姿勢は正しい。壊すよりも遅い方がいい。

ただ、正直に言えば、もう少し早くても良かった。Windows 11の登場から4年、Settingsアプリの整備ペースはやや物足りない印象がある。技術的な制約があることは理解した上で、「ユーザーが新しいUIを自然と使うようになる状況を作る」というデザインの仕事は、互換性問題とは切り離して前進できるはずだ。

Microsoftにはその力がある。SettingsアプリのUIが成熟すれば、ユーザーはコントロールパネルを探すことなく操作できるようになる。それが実現した日には、「コントロールパネルってまだあったの?」という声が自然と増えていくだろう。その日を待ちながら、現場としては今の環境を着実に整理していくのが現実的な対応策だ。


出典: この記事は Microsoft explains why it still can’t fully kill Control Panel in Windows 11 の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。