Microsoft 365 の「長年の積み残し」が、いよいよ清算される。2026年4月2日を境に、SharePoint Online のレガシーコンプライアンス機能が一斉に廃止される。「まだ動いているから大丈夫」と先送りしてきた組織にとって、猶予は実質的に尽きた。
何が廃止されるのか
今回の廃止対象は、SharePoint の「旧世代の仕組み」が集中している領域だ。
コンプライアンス・レコード管理の旧機能(4月中)
- 情報管理ポリシー(Information Management Policies)
- インプレースレコード管理(In-Place Records Management)
- 削除専用ポリシー
これらは UI からもアクセス不可になり、API 経由での呼び出しも動作しなくなる。移行先は Microsoft Purview の「データライフサイクル管理」および「Purview レコード管理」だ。
SharePoint 2013 ワークフロー(4月2日)
かつてはほぼすべての承認フローで使われていたこの仕組みが、延長なしで完全終了する。移行先は Power Automate。複雑なフローを抱えている場合は、設計の見直しも含めた対応が求められる。
SharePoint アドイン(4月2日)
既存テナントでも動作停止となる。Microsoft 365 Assessment ツールでアドインの使用状況をスキャンし、SharePoint Framework (SPFx) への移行、またはベンダーへの対応依頼が必要だ。
Azure ACS(Access Control Service)の M365 サポート終了(4月2日)
カスタムアプリや外部アプリが Azure ACS を使って SharePoint Online に接続している場合、4月2日以降は動作しなくなる。移行先は Microsoft Entra ID。特にサードパーティ製品が絡む場合は、ベンダー側の対応も確認が必要だ。
SPFx のドメイン分離 Web パーツ(4月2日)
特定のセキュリティ要件を持つ組織が使っていたこの機能も廃止。既存の Web パーツはエラーを返すようになるため、通常の Web パーツへの変換と再デプロイが必要だ。
実務への影響——日本のエンジニア・IT管理者が今すぐやること
ステップ 1: 使用状況の棚卸し
Microsoft 365 Assessment ツールを実行して、Azure ACS やアドインの利用状況を確認する。このツールは無料で使えるため、まず現状を把握することが優先だ。
SharePoint 管理センターの「サイトコレクション」一覧から、情報管理ポリシーやインプレースレコード管理を使用しているサイトを特定する。SharePoint 2013 ワークフローについては、Assessment ツールのワークフロースキャン機能で洗い出しが可能だ。
ステップ 2: 移行先の選定と計画策定
廃止される機能ごとに移行先が異なる。以下の対応表を参考に計画を立てたい。
| 廃止される機能 | 移行先 |
|---|---|
| 情報管理ポリシー | Microsoft Purview データライフサイクル管理 |
| インプレースレコード管理 | Purview レコード管理 |
| 削除専用ポリシー | Purview 保持ポリシー(削除アクション) |
| SharePoint 2013 ワークフロー | Power Automate |
| SharePoint アドイン | SharePoint Framework (SPFx) |
| Azure ACS 認証 | Microsoft Entra ID(アプリ登録) |
| ドメイン分離 Web パーツ | 通常の SPFx Web パーツ |
特に Power Automate への移行は、単純な承認フローであれば比較的スムーズだが、複雑な分岐や条件付きロジックを含む 2013 ワークフローは設計の見直しが必要になる。1対1の移行ではなく、業務プロセス自体を再設計する好機と捉えたい。
ステップ 3: サードパーティ製品・カスタムアプリの確認
Azure ACS の廃止は、自社開発のカスタムアプリだけでなくサードパーティ製品にも影響する。導入済みの SharePoint 連携ソリューション(バックアップツール、文書管理システム、ワークフローエンジンなど)が Azure ACS に依存していないか、ベンダーに確認を取る必要がある。
ベンダー側が Entra ID 対応版を既にリリースしている場合はアップデートで済むが、対応が遅れているベンダーの場合は代替製品の検討も視野に入れるべきだ。
ステップ 4: テスト環境での検証と段階的移行
本番環境をいきなり切り替えるのはリスクが高い。テスト用のサイトコレクションで移行手順を検証し、問題がないことを確認してから本番へ適用する。特に Purview の保持ポリシーは、設定を誤ると意図しないデータ削除につながる可能性があるため、慎重なテストが不可欠だ。
「まだ動いている」は最も危険な判断基準
今回の廃止で最も怖いのは、4月2日を過ぎて初めて問題に気づくパターンだ。SharePoint 2013 ワークフローが突然動かなくなり承認プロセスが止まる。Azure ACS 経由で接続していたバックアップツールがエラーを吐き始める。情報管理ポリシーで自動削除されるはずだったファイルが溜まり続ける——こうした障害が月曜朝に一斉に発覚する光景は、想像に難くない。
Microsoft はこれらの廃止を何年も前から告知してきた。猶予期間は十分にあったはずだが、「まだ動いている」という事実が移行の優先度を下げ続けてきた組織は少なくないだろう。
Message Center の通知番号 MC1211579 を確認し、自テナントへの影響範囲を把握した上で、今すぐ動き出すことを強く推奨する。
出典: この記事は SharePoint Online Legacy Compliance Features Retirement – April 2026 の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。