ONLYOFFICEがNextcloudとの提携を停止——無断フォーク「Euro-Office」が引き金に

オープンソースのオフィススイート「ONLYOFFICE」を開発するAscensio System SIAは、クラウドストレージ・コラボレーションプラットフォーム「Nextcloud」との提携を正式に停止したと発表した。直接の原因は、NextcloudがONLYOFFICEのコードを許可なくフォークし、「Euro-Office」という新プロジェクトを立ち上げたことにある。

何が起きたのか

Nextcloudは欧州市場向けの独立したオフィス編集機能を強化する目的で、ONLYOFFICEのソースコードをベースにした派生プロジェクト「Euro-Office」を独自に開発・公開した。しかしONLYOFFICEは、このフォークについて事前の協議も許可もなかったと主張。ライセンス条件や知的財産権の扱いに問題があるとして、同社はNextcloudとの長年にわたるパートナー関係を即時停止する判断を下した。

両社の関係と背景

ONLYOFFICEとNextcloudは、長年にわたってオープンソースコミュニティにおいて密接な協力関係を築いてきた。NextcloudのファイルマネージャーからONLYOFFICEのドキュメント編集機能を直接利用できる統合機能は、企業や自治体を中心に世界中で広く使われており、Google Workspaceや Microsoft 365に依存しないセルフホスト型ソリューションとして高く評価されてきた。

日本でも、情報セキュリティやデータ主権を重視する官公庁・教育機関・中小企業がこの組み合わせを採用するケースが増えており、今回の提携停止はこれらのユーザーにとっても影響が懸念される。

Euro-Officeとは

Euro-Officeは、欧州の規制環境や独立性へのニーズに応えるべく、Nextcloudが独自に整備しようとしたオフィス編集エンジンとみられる。欧州ではデジタル主権(Digital Sovereignty)への関心が高まっており、米国系クラウドサービスへの依存を減らす動きが活発だ。NextcloudはこうしたトレンドをふまえてEuro-Officeを推進したと考えられるが、ONLYOFFICEはその方法論に強く異議を唱えた形だ。

今後の見通し

現時点でNextcloud側の公式コメントは限られており、交渉の余地があるかどうかは不明だ。ただし、両プロジェクトともAGPLv3などのオープンソースライセンスのもとで開発されているため、法的な争点はライセンスの解釈と商業的な契約条件にあると見られる。

既存のNextcloud + ONLYOFFICE環境を運用しているユーザーは、現時点では直ちに機能が失われるわけではないが、今後のアップデートや公式サポートの継続性については注視が必要だ。オープンソースプロジェクト間のフォーク問題が商業パートナーシップにまで波及した今回のケースは、コミュニティと企業の利害が複雑に絡み合うオープンソースエコシステムの難しさを改めて示している。


元記事: ONLYOFFICE suspends Nextcloud partnership for forking its project without permission