ペンタゴン対Anthropic——「ツイートが先、法廷が後」の戦略が裏目に

米国防総省(ペンタゴン)がAIスタートアップのAnthropicに対してとった強硬措置が、連邦裁判所によって一時的に差し止められた。カリフォルニア州のリタ・リン連邦裁判官は3月27日、国防総省によるAnthropicの「サプライチェーンリスク」指定と、政府機関へのAI利用停止命令を暫定的にブロックする決定を下した。

1カ月にわたる対立の経緯

事の発端は、米政府がAnthropicと直接の契約交渉を始めたことだった。それまで2025年を通じて、防衛関連の職員はPalantir(パランティア)経由でAnthropicのAIアシスタント「Claude(クロード)」を問題なく利用していた。Anthropic共同創業者のジャレッド・カプランによれば、その利用規約は「アメリカ市民の大規模監視や自律型致死兵器を禁止する」内容を含んでいたという。

直接契約の話し合いが始まると摩擦が生まれ、2月27日にはトランプ大統領がSNS「Truth Social」に「Anthropicの左翼のナットジョブ(leftwingnuts)」と名指しする投稿を行い、全連邦機関に対してAnthropicのAI利用停止を指示。これを受けてピート・ヘグセス国防長官も、Anthropicをサプライチェーンリスクと指定する方針をSNSに投稿した。

裁判官が問題視した「手順の無視」と「SNS投稿の矛盾」

43ページにわたる判決文の中で、リン裁判官が指摘したのは手続き上の重大な欠陥だ。サプライチェーンリスクの指定には国防長官が踏むべき具体的なステップが定められているが、ヘグセス長官はそれを完了していなかった。議会委員会への書簡では「より穏当な措置を検討したが不可能と判断した」とだけ記されており、詳細は何も示されていなかった。

さらに、政府は「Anthropicがシステムに『キルスイッチ』を実装できる」ことをリスク指定の理由の一つに挙げていたが、政府側弁護士が法廷で「その証拠はない」と認める場面もあった。ヘグセス長官のSNS投稿には「Anthropicと取引する請負業者・サプライヤー・パートナーは米軍との取引が禁止される」という記述もあったが、政府側弁護士自身が「長官にそのような権限はなく、法的効力は全くない」と法廷で認めた。

表現の自由侵害も認定

こうした一連のSNS投稿は、裁判官にAnthropicの主張——政府が同社の「イデオロギー」や「傲慢さ」を公開の場で罰しようとした、という憲法修正第1条(言論の自由)違反の訴え——を支持させる結果にもなった。「SNS投稿が先、法廷対応が後」というパターンが、政府の法廷での主張と矛盾を生み出す構図となった。

今後の行方

政府には7日間の上訴期限が与えられており、Anthropicが起こしている別の訴訟も決着していないため、この問題は完全には解決していない。Anthropicは現時点でも政府との取引が事実上制限された状態にある。

AIを国家安全保障にどこまで活用できるか、そして民間AI企業はどこまで政府の要求に応じなければならないのか——本件は、AIの軍事利用と企業の倫理指針のせめぎ合いという、今後ますます重要になる問題を浮き彫りにした。


元記事: The Pentagon’s culture war tactic against Anthropic has backfired