AIを使うけど、信じてはいない
アメリカでAIツールの利用者が着実に増えている。しかし、使う人が増えるほど「信頼できる」と思う人は減っている——そんな逆説的な実態が、クィニピアック大学(Quinnipiac University)が2026年3月末に公表した世論調査で明らかになった。
約1,400人のアメリカ人を対象にした調査によると、AIを「ほとんど信頼しない」または「たまにしか信頼しない」と答えた人は76%にのぼった。「ほぼ常に信頼する」または「大半の場合信頼する」と答えたのはわずか21%にとどまる。
一方で利用率は確実に上がっている。「AIツールを一度も使ったことがない」と答えた人は27%で、2025年4月時点の33%から減少した。リサーチ、文章作成、職場や学校での課題、データ分析といった場面でAIを活用する人が増えている。
同大学のコンピュータサイエンス教授チェタン・ジャイスワル氏はこう指摘する。「利用と信頼の矛盾は際立っている。51%がリサーチにAIを使うと答えているのに、AIが生成した情報を大半の時間信頼できるのはわずか21%だ。アメリカ人はAIを採用しているが、深い信頼からではなく、深い躊躇を抱えながらそうしている」
期待より不安が圧倒的に上回る
AIの将来に「非常に期待している」と答えたのはわずか6%。対して「あまり期待していない」または「まったく期待していない」は62%に達した。懸念についてはほぼ逆転し、80%が「非常に懸念」または「やや懸念」していると回答した。ミレニアル世代(1980年代〜1990年代生まれ)とベビーブーマー世代(1946〜1964年生まれ)が最も懸念を抱えており、Z世代(1997〜2008年生まれ)もそれに続く。
「AIは日常生活においてメリットよりも害をもたらす」と考える人は55%で、「メリットの方が大きい」と答えた約33%を大きく上回った。AIへの否定的な見方は昨年の調査より増えており、大手テクノロジー企業の大規模レイオフや、AIチャットボットへの依存が引き金とされる深刻な精神的健康被害のニュース、そして電力網に負荷をかけるデータセンターの問題が背景にあるとみられる。
雇用への影響、Z世代が最も悲観的
AIの進歩によって雇用機会が減少すると考える人は70%にのぼり、増加すると答えた7%を大幅に上回った。前年調査では「減少する」が56%、「増加する」が13%だったことを考えると、わずか1年で悲観論が急速に広がっていることがわかる。
特にZ世代は81%が雇用減少を予測しており、最も悲観的な世代となっている。実際、アメリカのエントリーレベルの求人数は2023年以降35%減少しており、AnthropicのCEOダリオ・アモデイ氏もAIによる雇用消失を警告している。
クィニピアック大学のビジネスアナリティクス教授タミラ・トリアントロ氏は「若い世代ほどAIツールへの習熟度が高いが、労働市場への楽観論は最も低い。AIの流暢さと楽観主義は逆方向に動いている」と述べている。
データセンター建設にも住民が反発
AIインフラをめぐる地域社会の反発も浮き彫りになった。65%のアメリカ人が「自分のコミュニティにAIデータセンターが建設されることに反対する」と回答。主な理由として電力コストの上昇と大量の水使用が挙げられた。
日本でも生成AIの普及が進む中、同様の「利用はするが信頼はしない」という意識のギャップや、雇用・エネルギーへの懸念は共通の課題になりつつある。今回の調査は、技術の普及速度と社会的信頼の醸成速度が必ずしも一致しないという現実を改めて示している。
元記事: As more Americans adopt AI tools, fewer say they can trust the results