OpenAI、動画生成AI「Sora」を突然廃止——その舞台裏
OpenAIが2026年3月25日(火)、動画生成AIアプリ「Sora」の廃止を電撃発表した。同日にはChatGPTへの動画生成機能統合計画の撤回、ディズニーとの10億ドル規模の契約解消、幹部の役職変更、そして100億ドルの追加資金調達(累計1,200億ドル超)と、怒濤の発表が続いた。
「サイドクエストに気を取られている場合ではない」
OpenAIは今、利益を出すこと——あるいは少なくとも赤字を減らすこと——に全力を注いでいる。その文脈でSoraは、莫大な計算リソースを消費しながら見合った収益を生み出せなかった問題児として映った。
「このタイミングを逃すわけにはいきません。サイドクエストに気を取られている余裕はない」——アプリケーションCEOからAGIデプロイメントCEOへと役職変更されたFidji Simo氏が、社内でこう語ったと報じられている。「生産性、特にビジネス面での生産性を確実に伸ばすことに集中しなければならない」
競合に追い抜かれたSora
業界関係者によると、Soraはリリース後まもなく競合の動画生成モデルに遅れをとっていたという。クリエイター向けAI動画プラットフォーム「Render Network Foundation」の理事を務めるTrevor Harries-Jones氏は、動画生成AI業界の競争激化がOpenAIの決断を後押ししたと見る。
「イノベーションのスピードと選択肢の多さにより、各サービス間の切り替えは非常に簡単になっています。何か一つでも頭一つ抜けていなければ、大規模なユーザー獲得は難しい」とHarries-Jones氏は語る。実際、SoraはGoogleやKlingといった強力なプレイヤーに押されてしまったと同氏は指摘する。
「発表時のマーケティング動画は革命的に見えたが、実際のリリースとの間には大きなギャップがあった。コスト、生成できる動画の長さなど、詳細を見ると現実は厳しかった」
ダウンロード数が物語る凋落
市場調査会社Sensor Towerのデータは、Soraの軌跡を如実に示している。2024年10月のリリース直後は月間約480万ダウンロードを記録し、11月には610万ダウンロードとピークを迎えた。しかしその後は急落が続き、12月に320万、2025年1月に210万、2月に140万、そして3月には110万(月途中)にまで落ち込んだ。
「注目すべきは、新市場への展開を進めながらもダウンロード数が落ちたこと。本来なら成長を牽引するはずの施策が機能しなかった」とSensor TowerのVP・Seema Shah氏は分析する。
「フェイク動画」という負の遺産
Soraはその短い生涯で、もう一つの課題も残した。高品質なリアル調の動画を生成できる技術は、「本物か偽物かを見極める目」を人々に求める新たな時代を象徴した。動画コンテンツの真偽を巡る信頼の侵食という問題は、Sora廃止後も業界全体の課題として残り続ける。
AnthropicやGoogleとの競争が激化する中、OpenAIは「選択と集中」へと舵を切った。AGI開発という本丸に経営資源を集める戦略転換の象徴として、Soraの廃止は記憶されることになるだろう。